ベースアップ評価料はスタッフにどう説明する?院長が整理しておきたいポイント
更新日:2026年10月5日
本記事は、厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定・ベースアップ評価料関連資料をもとに、無床クリニックを中心に整理しています。制度内容や運用は、今後の疑義解釈や事務連絡等により変更される可能性があります。実際の届出や賃金改善を行う際は、厚生労働省・地方厚生局の最新資料をご確認ください。
本記事では、ベースアップ評価料についてスタッフへ説明する立場にある院長を主な対象として、制度上決まっていることと、自院で整理しておきたいことを分けて解説します。
ベースアップ評価料について、スタッフから「全員の給料が上がるのですか」「医療事務も対象ですか」「給料にいつ反映されますか」と聞かれることがあります。
ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善を支援するための制度です。
ただし、「評価料を算定したから、全員の給与を同じ金額だけ上げればよい」「入ってきた評価料を、そのままスタッフへ分ければよい」という制度ではありません。
スタッフへ説明するときは、制度上決まっていることと、自院の給与体系や人員構成を踏まえて整理することを分けて考える必要があります。
さらに、就業規則や賃金規程、個別の雇用条件に関わる部分については、社会保険労務士などの専門家へ確認した方がよいこともあります。
この記事のポイント
- ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善を支援する制度です。
- 令和8年度改定では、事務職員なども対象職員に含まれるよう対象が拡大されています。
- 評価料収入を、そのまま職員へ同額ずつ配る制度ではありません。
- 賃金改善は、原則として算定開始月から実施する必要があります。
- 制度上の要件と、自院で決める配分・説明方法は分けて考える必要があります。
- 就業規則や賃金規程、個別の労務判断が関わる場合は、必要に応じて社会保険労務士等への確認が必要です。
目次
スタッフから聞かれやすい質問
Q. スタッフ全員の給与が上がる制度なのですか?
A. 「全員に一律で同じ金額を支給する」という制度ではありません。
ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善を行うための制度です。
一方で、対象職員全員について同じ金額を支給することまで制度上決められているわけではありません。
実際の賃金改善方法を考える際は、制度上の要件に加えて、職種、勤務形態、現在の給与体系などを確認する必要があります。
Q. 医療事務も対象になりますか?
A. 令和8年度改定では、事務職員も対象に含まれます。
令和8年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料の対象職員が拡大され、事務職員なども対象に含まれるようになりました。
一方で、40歳以上の医師・歯科医師、業務委託により勤務する人などは対象から除かれ、経営者や法人役員も対象には含まれません。
自院のスタッフが対象になるか判断に迷う場合は、職種名だけで判断せず、最新の施設基準や通知をご確認ください。
Q. 人によって賃金改善額が違ってもよいのですか?
A. 全員に同じ金額を支給しなければならない制度ではありません。
ただし、「違ってもよいから自由に決めればよい」という意味でもありません。
制度上の要件を確認したうえで、現在の給与体系や勤務形態などとの関係を整理する必要があります。
賃金改善額に違いが出る場合は、スタッフへどのように説明するのかも含めて考えておくことが重要です。
Q. 給与にはいつ反映する必要がありますか?
A. 原則として、ベースアップ評価料の算定開始月から賃金改善を実施します。
厚生労働省の疑義解釈では、原則として算定開始月から賃金改善を実施し、算定する月は継続する必要があるとされています。
一定の条件のもと、賃金改善を行う期間について別の取扱いや遡及対応が認められる場合もあります。
そのため、「いつから給与明細に反映するか」だけで判断せず、届出時期や賃金改善期間を含めて確認することが必要です。
Q. 評価料として入った金額を、そのままスタッフへ配るのですか?
A. 単純に、入ってきた評価料をそのまま人数で割って支給する制度ではありません。
ベースアップ評価料による収入は、対象職員の賃金改善に用いる必要があります。
令和8年度の制度では、対象職員の基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げと、それに伴う賞与、時間外手当、法定福利費などの増加分に充てることとされています。
そのため、「評価料収入=各スタッフへそのまま渡す金額」と考えるのではなく、制度上認められる使途を確認したうえで、自院の給与体系の中でどのように賃金改善を行うかを整理します。
Q. 賞与だけで対応してもよいのですか?
A. ベースアップ評価料は、基本給等の引上げを前提とした制度として確認する必要があります。
評価料収入は、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げと、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費などの増加分に用いることとされています。
そのため、「賞与だけで処理する」「一時金だけ支給する」といった方法を独自に決めるのではなく、最新の制度上の取扱いを確認してください。
また、実際の給与・手当の変更が就業規則や賃金規程に関係する場合は、社会保険労務士等への確認も必要です。
スタッフへ説明する前に分けて整理したい3つのこと
スタッフへ説明するときに混乱しやすいのは、「制度で決まっていること」と「院内で決めること」が混ざってしまうことです。
さらに、賃金や就業規則に関わる部分には、院内だけで判断せず専門家へ確認した方がよいこともあります。
説明文を作る前に、次の3つに分けて整理しておくと考えやすくなります。
1.制度上の事実として確認すること
制度上確認しておきたいこと
- ベースアップ評価料の対象となる職員は誰か
- 対象外となる職員は誰か
- 賃金改善をいつから行う必要があるか
- 評価料による収入を何に使用できるか
- 届出や報告で何が求められているか
ここは院長の考え方によって変わる部分ではありません。
まず厚生労働省や地方厚生局の最新資料を確認し、スタッフへ「制度上こうなっている」と説明できるようにしておきます。
2.自院として整理すること
自院で整理しておきたいこと
- 現在の給与体系はどうなっているか
- 対象職員へどのような形で賃金改善を行うか
- 既存の手当との関係をどうするか
- スタッフ間で金額に違いが出る場合、どう説明するか
- 全員に共通して説明する内容は何か
- 個別に説明する必要がある内容は何か
- 質問が出た場合、誰が対応するか
ここは制度資料だけを読んでも答えが決まらない部分です。
クリニックごとに給与体系、職種構成、雇用形態、これまでの賃金改善、既存手当などが違うため、自院の状況を確認したうえで整理する必要があります。
配分方法については、こちらの記事でも整理しています。
ベースアップ評価料はどう配分するか|院長が整理しておきたい3つの視点
3.必要に応じて専門家へ確認すること
専門家への確認を検討したいこと
- 就業規則や賃金規程を変更する必要があるか
- 既存の手当との関係をどう整理するか
- 個別の雇用契約に影響するか
- 具体的な給与計算や労務上の取扱いに問題がないか
- 院内で考えている賃金改善方法が制度・労務上適切か
制度について理解できたとしても、個別の給与・手当・就業規則まで院内だけで判断できるとは限りません。
必要な部分は社会保険労務士などへ確認します。
一方で、専門家へ相談する前に「自院としてどうしたいのか」「何をスタッフへ伝えたいのか」「どの部分が未整理なのか」を確認しておくと、相談する内容も明確になります。
スタッフへ説明するときの順番
ベースアップ評価料については、何を説明するかだけでなく、どの順番で説明するかも考えておきたいところです。
最初から「あなたはいくら上がります」と個別金額だけを伝えると、「なぜ自分はこの金額なのか」「他の人はいくらなのか」といった話に集中しやすくなります。
まず制度として共通する内容を説明し、そのうえで自院としての方針を共有し、必要な内容だけ個別に説明する方法があります。
説明の進め方の一例
- ベースアップ評価料が賃金改善を支援する制度であることを説明する
- 対象になる職員・対象外になる職員について説明する
- 評価料収入をそのまま一律に配る制度ではないことを伝える
- 自院ではどのような考え方で賃金改善を行うかを説明する
- 全体に共通する内容を共有する
- 個別の給与額や雇用条件に関する内容は、必要に応じて個別に説明する
これはあくまで一例です。
スタッフ数、職種構成、雇用形態、これまでの給与説明の方法などによって、適した進め方は異なります。
全スタッフに共通して説明しやすいこと
例えば、制度の趣旨、対象職員の基本的な考え方、評価料収入の使途、自院としての基本方針などは、共通事項として説明しやすい内容です。
個別に説明した方がよいこと
一方で、個人ごとの具体的な給与額、既存手当との関係、勤務条件による違いなどは、全員の前で説明するより個別に扱った方がよい場合があります。
「全部を一度に全員へ説明する」と決めるのではなく、共通事項と個別事項を分けて考えると整理しやすくなります。
説明するときに誤解されやすいポイント
「評価料を算定した金額=自分がもらえる金額」ではない
スタッフ側から見ると、「患者さんからベースアップ評価料を受け取っているなら、その金額がそのまま給与として増えるのでは」と感じることがあります。
しかし、評価料として医療機関が受け取る額と、個々のスタッフの賃金改善額は同じ意味ではありません。
評価料収入は対象職員の賃金改善に使用する必要がありますが、その中には基本給等の引上げに伴う賞与、時間外手当、事業者負担分の法定福利費等の増加も含まれます。
この点は、スタッフへ説明するときに誤解が生じやすいところです。
「全員同じ金額になる」とは限らない
制度上、対象職員全員に同じ金額を配ることまで決められているわけではありません。
一方で、金額に違いをつけるのであれば、「なぜその形にしたのか」を説明できるようにしておく必要があります。
院長の感覚だけで決めるのではなく、現在の給与体系や勤務形態などを確認したうえで整理した方がよいでしょう。
将来も同じ金額が続くとは限らない
ベースアップ評価料による収入は、患者数や算定状況などによって変動します。
また、診療報酬制度そのものも今後改定される可能性があります。
そのため、スタッフへ説明する際には、現時点の制度と自院の方針を伝えつつ、将来にわたり同じ制度や収入額が続くことを保証するような説明は避けた方がよいでしょう。
届出や賃金改善を進める前に確認したいこと
「制度上何が必要か」だけでなく、「スタッフへ何を伝えるか」「今後も続けられる運用か」まで確認しておくことで、後から説明をやり直す可能性を減らしやすくなります。
スタッフ説明は、人件費と院内運用を確認する機会にもなる
ベースアップ評価料への対応は、制度だけを切り離して考えにくい場合があります。
現在の基本給や手当、職種ごとの役割、スタッフ数、人件費全体などと関係するためです。
だからといって、ベースアップ評価料をきっかけに新しい制度や仕組みを増やす必要があるとは限りません。
まずは現在の給与体系や院内の運用を確認し、今ある仕組みの中で対応できるのか、変更が必要なのかを整理することが先になります。
制度は理解できても、「自院ではどうするか」で止まることがあります
誰を対象にするのか、どのように賃金改善を行うのか、スタッフへどこまで説明するのか。
制度資料を読めば分かることと、自院の状況を確認しなければ決められないことは異なります。
この2つを分けて考えることで、「何が分からないのか」「誰に何を確認すればよいのか」も見えやすくなります。
ベースアップ評価料に限らず、採用、院内運用、システム導入など、クリニック経営では一般的な情報を確認しただけでは、自院としてどうするか決めきれないことがあります。
そのような相談内容については、こちらでも紹介しています。
クリニック経営で相談できる内容を見る
まとめ
ベースアップ評価料についてスタッフへ説明するときは、制度の説明だけで終わらせないことが大切です。
まず、対象職員、賃金改善の開始時期、評価料収入の使途など、制度上決まっていることを確認します。
そのうえで、自院の給与体系や職種構成、雇用形態を確認し、どのように賃金改善を行うか、何を全体へ説明し、何を個別に説明するかを整理します。
就業規則、賃金規程、個別の雇用条件、具体的な給与処理などに関わる場合は、必要に応じて社会保険労務士等へ確認します。
「制度上の事実」「自院で決めること」「専門家へ確認すること」を分けると、スタッフへ何を説明する必要があるかも整理しやすくなります。
「この説明文が正解」と一律に決めるのではなく、自院の状況を確認したうえで、スタッフへどのように伝えるかを考えることが重要です。
自院での説明や進め方を整理したい場合は、ご相談ください
ベースアップ評価料は、制度上の要件を確認しただけでは、自院としての対応が決まらないことがあります。
現在の給与体系やスタッフ構成、これまでの経緯によって、整理する内容も異なります。
無料相談では、現在の状況や背景、院長のお考え、すでに確認・対応していることなどを伺います。
そのうえで、制度上確認すること、自院で整理すること、社会保険労務士等へ確認することを分けて整理します。
当方で対応できる支援がある場合は、必要な範囲を整理し、支援内容と費用をお見積もりします。
※無料相談は原則1回です。
※面談はオンラインを基本とし、30〜60分程度です。
※就業規則・賃金規程・具体的な給与処理など、専門的な判断が必要な場合は、社会保険労務士等への確認が必要です。
