ベースアップ評価料はスタッフにどう説明する?院長が整理しておきたいポイント【院長の経営相談Q&A】
本記事は2026年6月施行予定の制度をもとに整理しています。今後、厚生労働省から疑義解釈や事務連絡等が公表された場合は、内容を順次更新してまいります。
2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では、医療従事者の処遇改善を目的としたベースアップ評価料の見直しが進められました。クリニックの院長にとっては、制度を算定するかどうかだけでなく、スタッフにどう説明するのかで悩む場面もあるのではないでしょうか。
特に現場では、「結局、給料は上がるのか」「どの職種が関係するのか」「うちのクリニックではどう考えるのか」といった問いが出やすくなります。ただ、ベースアップ評価料は制度の趣旨があっても、実際の運用は医療機関ごとに異なります。
そのため、院長としては正解を一つ決めて伝えるというより、自院としてどう考え、どう説明するのかを整理しておくことが大切です。この記事では、ベースアップ評価料をスタッフに説明する前に、院長が整理しておきたいポイントをまとめます。
目次
ベースアップ評価料とはどのような制度か
ベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを後押しするために設けられた診療報酬上の評価です。医療分野では、人材確保や定着が大きな課題になっており、今回の改定でも処遇改善が重要なテーマの一つとして位置づけられています。
クリニックにとっては、診療報酬を通じて賃金改善の原資を確保しやすくする制度と考えると分かりやすいでしょう。ただし、これは「算定すれば一律に同じように昇給できる制度」という意味ではありません。制度の趣旨は共通でも、実際の運用は患者数、スタッフ数、職種構成、経営状況によって変わります。
また、診療報酬は原則として2年ごとに改定される仕組みです。そのため、ベースアップ評価料についても、将来にわたって今と同じ形で続くとは限りません。今後の医療政策や改定の方向によって見直される可能性があることも、院長として頭の片隅に置いておきたいところです。
ベースアップ評価料でスタッフに影響すること
ベースアップ評価料の見直しによって、スタッフにとっては「医療分野でも賃上げを進める方向がより明確になった」という影響があります。現場で働く人にとっては、制度の細かな点数や届出の仕組みよりも、まず「自分たちの働き方や待遇にどう関係するのか」が気になるはずです。
今回の見直しでは、従来よりも幅広い職種で賃上げを進める方向が示されており、医療事務を含めたスタッフにも関心が広がりやすいテーマです。そのため、院長としては「うちには関係ない」「一部の職種だけの話」と受け取られないように、制度の目的を落ち着いて説明する必要があります。
一方で、スタッフ側からすると、制度がある以上「実際にどのような形で還元されるのか」が気になるのは自然なことです。ここを曖昧にしたままにすると、制度そのものへの理解よりも、「結局どうなるのか分からない」という不信感につながることがあります。
ここで整理しておきたいこと
ベースアップ評価料は、スタッフにとって「制度の存在」よりも「自院でどう扱うのか」が大事なテーマです。制度説明だけで終わらせず、院長としての考え方まで整理しておくことが重要です。
スタッフの給与はどのくらい上がるのか
スタッフへの説明で最も聞かれやすいのが、「給与はどのくらい上がるのか」という点です。ただ、この問いに対して、全国一律の金額を示すことは難しいと考えた方が現実的です。
なぜなら、ベースアップ評価料によって確保できる原資は、医療機関ごとに大きく異なるからです。患者数や算定状況、スタッフの人数、職種の構成が違えば、同じ制度でも使える原資の大きさは変わります。さらに、クリニック全体の経営状況や、他の人件費とのバランスも考える必要があります。
そのため、スタッフに説明する際は、「制度として賃上げを目的とした評価であること」と、「具体的な改善の形は医療機関ごとに異なること」を分けて伝える方が誤解が少なくなります。無理に具体額を示すよりも、なぜ一律に示せないのかを丁寧に整理した方が、結果として納得につながりやすいでしょう。
※ 具体的な昇給額は、患者数・スタッフ数・職種構成・経営状況などによって変わるため、一律には示しにくい制度です。
スタッフへの説明で迷いやすいポイント
実際の現場では、院長が迷いやすいポイントがいくつかあります。たとえば、「評価料を算定するなら、必ず給与を上げなければならないのか」「どの職種が対象になるのか」「いつから、どのような形で反映するのか」といった点です。
これらの問いに共通しているのは、制度の説明だけでは答えきれず、自院としてどう運用するかという判断が必要になることです。つまり、制度の話と経営の話、そして組織運営の話が重なってきます。
また、スタッフから見れば、「制度があるなら、すぐに分かりやすい形で変わるのではないか」と感じることもあるでしょう。一方で、院長から見れば、「制度の趣旨は理解しているが、現実の経営とのバランスもある」というのが本音かもしれません。このズレを埋めるためには、制度の説明だけでなく、院長としてどう考えているのかも含めて伝えることが大切です。
説明で迷いやすい問い
- ベースアップ評価料を算定すると、必ず給与は上がるのか
- 医療事務を含め、どの職種が関係するのか
- いつから、どのような形で反映するのか
- クリニックの経営状況とどう両立させるのか
院長とスタッフの距離感によって説明の形は変わる
ベースアップ評価料の説明で見落としにくいのが、院長とスタッフとの日常業務の距離感です。制度の説明は同じでも、ふだんから経営方針や考え方を共有しているクリニックと、そうでないクリニックでは、伝わり方が大きく変わります。
たとえば、小規模で院長が直接スタッフと話す場面が多いクリニックでは、院長の言葉で意図や背景を説明した方が納得を得やすいことがあります。一方、人数が多い組織では、事務長や管理者を通して段階的に共有した方がスムーズな場合もあります。
つまり、スタッフへの説明には「これが正しいやり方」という一つの型があるわけではありません。むしろ、それぞれの医療機関で築いてきた関係性や組織のあり方に合わせて、無理のない形を考えることが大切です。
ベースアップ評価料は、賃上げの制度であると同時に、院長がスタッフとどのような距離感で組織を運営しているのかが問われるテーマでもあります。
院長が整理しておきたい3つのポイント
スタッフに説明する前に、院長として整理しておきたいことは大きく3つあります。
1つ目は、制度の目的です。
ベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを後押しするための制度です。ここを曖昧にすると、「結局何のための評価なのか」が見えにくくなります。
2つ目は、賃上げと経営のバランスです。
制度の趣旨は大切ですが、クリニックの経営状況や人員体制を無視して運用することはできません。スタッフへの還元を考えつつ、無理のない形でどう進めるかを整理しておく必要があります。
3つ目は、制度の継続性に不確実性があることです。
診療報酬は改定で見直されるため、今後も同じ形で続くとは限りません。だからこそ、「今ある制度をどう使うか」と同時に、「制度に依存しすぎない体制をどう考えるか」という視点も持っておきたいところです。
院長が整理しておきたい3つの視点
- 制度の目的をどう理解するか
- 賃上げと経営のバランスをどう考えるか
- 制度が今後も同じ形で続くとは限らないことをどう見るか
正解ではなく医療機関ごとの納得感を整理する
ベースアップ評価料をスタッフにどう説明するかについて、画一的な正解を探そうとすると、かえって苦しくなることがあります。制度の趣旨は共通していても、実際の経営状況や人員体制、院長とスタッフとの関係性は医療機関ごとに異なるからです。
そのため大切なのは、「他院がどうしているか」をそのまま真似することではなく、自院としてどのように考え、どのような説明なら無理なく伝えられるのかを整理することです。
ベースアップ評価料は、単なる診療報酬の加算ではありません。院長が組織をどう引き受けるのか、スタッフとどのような距離感で働くのか、そして経営と処遇改善をどう両立させるのかが問われる制度でもあります。だからこそ、正解ではなく、それぞれの医療機関にとっての納得感に寄せて考えていくことが大切ではないでしょうか。
制度の理解だけでは整理しきれないときは、ご相談ください
ベースアップ評価料のように、制度の趣旨・スタッフへの説明・経営とのバランスが重なるテーマでは、「何が正しいか」よりも「自院としてどう整理するか」が大切になります。
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