ベースアップ評価料で患者負担はいくら増える?患者への説明ポイント
本記事は、厚生労働省が公表している令和8年度診療報酬改定資料、ベースアップ評価料関連資料、地方厚生局の案内等をもとに、無床クリニックを中心に整理しています。制度内容や運用は、今後の疑義解釈や事務連絡等により変更される可能性があります。実際の届出や算定にあたっては、最新の厚生労働省・地方厚生局の公表資料をご確認ください。
「ベースアップ評価料を算定すると、患者さんの負担はいくら増えるのでしょうか。」
令和8年度診療報酬改定を受けて、院長や受付スタッフが確認しておきたいことの一つが、患者さんの窓口負担への影響です。
あわせて、患者さんから質問を受けたときの説明方法や、受付・会計で説明をそろえておく必要があるかも論点になります。
結論
- 保険診療でベースアップ評価料を算定すると、患者さんの自己負担割合に応じて、窓口負担にも反映されます。
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)17点の場合、3割負担では単純計算で約50円相当です。
- ベースアップ評価料は、医療現場で働く職員の賃金改善を図る体制を評価する診療報酬です。
- 患者さんから質問を受けたときに備え、受付・会計を含めて説明の軸をそろえておくことが大切です。
この記事では、患者負担額の目安、自費診療の扱い、患者さんへの説明例、院内で確認しておきたいことを整理します。
ベースアップ評価料とは
ベースアップ評価料は、医療機関で働く職員の賃金改善を図る体制を評価する診療報酬です。
医療機関が所定の施設基準を満たして届出を行い、対象となる診療を行った場合に算定します。
算定する医療機関には、制度に沿った賃金改善の実施や、計画・実績の管理、必要な報告などが求められます。
そのため、患者さんへ説明するときは、単に「診療費が値上がりした」と伝えるのではなく、医療現場で働く職員の処遇改善を支えるために設けられた診療報酬上の評価であることを説明の基本にすると分かりやすくなります。
制度の全体像や背景を確認したい場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ベースアップ評価料とは?制度の意味とクリニックで考えておきたいこと
患者負担はいくら増えるのか
ベースアップ評価料を算定すると、診療報酬の点数が医療費に加算されるため、患者さんの自己負担割合に応じて窓口負担にも反映されます。
令和8年6月以降の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、施設基準の区分により点数が異なります。
| 施設の区分 | 算定場面 | 点数 | 3割負担の単純計算 |
|---|---|---|---|
| 新たに賃上げに取り組む施設 | 初診時など | 17点 | 約51円相当 |
| 新たに賃上げに取り組む施設 | 再診時など | 4点 | 約12円相当 |
| 継続的な賃上げに係る所定の施設基準を満たす施設 | 初診時など | 23点 | 約69円相当 |
| 継続的な賃上げに係る所定の施設基準を満たす施設 | 再診時など | 6点 | 約18円相当 |
※1点は医療費全体で10円に相当します。上記は評価料単独で単純計算した目安です。実際の窓口支払額は、ほかの診療報酬点数との合計や端数処理などにより異なる場合があります。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)も算定するクリニックでは、届け出た区分に応じた点数が追加されるため、患者負担の増加額も異なります。
まずは、自院が届け出ている評価料の種類と区分、実際に算定する点数を確認することが必要です。
患者さんへ伝えるときの考え方
「必ず50円上がります」と断定するのではなく、「算定する評価料や患者さんの負担割合によって異なりますが、窓口負担に少額反映されます」と説明する方が、実際の会計との差が生じにくくなります。
自費診療の患者さんには算定するのか
ベースアップ評価料は、保険診療における診療報酬上の評価です。
自由診療のみを行った患者さんについて、保険診療のベースアップ評価料を別途算定するものではありません。
保険診療と自由診療の両方を扱うクリニックでは、どの診療に対してベースアップ評価料が算定されているのかを、院内で区別して理解しておく必要があります。
自費診療の割合が高いクリニックでは、保険診療から得られる評価料収入だけを前提にすると、想定した賃金改善の原資との差が生じる可能性があります。
自院で確認したいこと
- 保険診療と自由診療の患者数の割合
- ベースアップ評価料を算定する対象
- 自院で見込まれる評価料収入
- 予定している賃金改善額との関係
患者さんにはどのように説明するか
ベースアップ評価料を算定すると、患者さんから次のような質問を受けることがあります。
想定される質問
- 「今日は医療費が少し高い気がするのですが」
- 「診療費が上がったのでしょうか」
- 「ベースアップ評価料とは何ですか」
- 「なぜ患者が負担するのですか」
受付や会計で、制度の仕組みを細部まで説明する必要はありません。
まずは、国が定める診療報酬制度に基づくものであることと、医療現場で働く職員の処遇改善を支えるための評価であることを簡潔に伝えます。
患者さんへの説明例
「国の診療報酬制度に基づき、医療現場で働く職員の処遇改善を支えるために設けられた評価です。算定に伴い、患者さんの自己負担割合に応じて窓口負担にも少額反映されます。」
患者さんの質問内容に応じて、次の点を補足します。
- 医療機関が独自に設定した料金ではないこと
- 国が定めた診療報酬上の評価であること
- 医療現場で働く職員の賃金改善を目的とした制度であること
- 負担額は算定する点数や自己負担割合によって異なること
避けた方がよい説明
次のような表現は、制度の趣旨を正確に伝えにくいため注意が必要です。
- 「スタッフの給料を上げるため、患者さんに負担してもらっています」
- 「当院が値上げしたものです」
- 「すべて国に決められているので、当院では分かりません」
- 「医療機関の利益には一切なりません」
ベースアップ評価料は賃金改善を図る体制を評価する診療報酬ですが、患者さんに会計処理や報告制度まで説明する必要はありません。
制度の目的と窓口負担への影響を、誤解が生じにくい言葉で簡潔に説明することが大切です。
院内掲示や受付対応をどう整えるか
患者さんへの案内方法として、院内掲示やホームページ上の案内文を用意することも考えられます。
ただし、掲示を置くだけで、患者さんからの質問がなくなるとは限りません。
受付・会計で質問を受けたときに説明がばらつかないよう、掲示内容とスタッフの説明をそろえておく必要があります。
院内でそろえておきたい説明の軸
- どのような制度なのか
- 患者負担にどの程度影響するのか
- 受付・会計でどこまで説明するのか
- 詳しい質問があった場合に誰へつなぐのか
- 院内掲示やホームページに何を記載するのか
院内掲示を作成する場合も、制度の説明を長く書きすぎると読まれにくくなります。
制度の目的、患者負担へ反映されること、国の診療報酬制度に基づくことを簡潔に示し、必要に応じて受付へ確認できる形にすると運用しやすくなります。
制度で決まることと自院で決めること
ベースアップ評価料の点数、施設基準、届出、報告などは、制度上のルールに沿って対応します。
一方、患者さんへの伝え方や、受付・会計での対応方法は、制度資料だけを読んでも一つの答えには決まりません。
| 制度で決まること | 自院で決めること |
|---|---|
| 算定する評価料の種類と点数 | 誰が患者さんへ説明するか |
| 患者さんの自己負担割合に応じて負担が生じること | 受付・会計で使う説明文 |
| 算定に必要な施設基準と届出 | どの場面で説明するか |
| 賃金改善計画や実績報告などの手続 | 院内掲示やホームページでの案内方法 |
| 制度上の対象や算定方法 | 詳しい質問や苦情があった場合の対応者 |
制度を理解することと、自院での運用を決めることは別の段階です。
たとえば、受付スタッフが少ないクリニックと、受付・会計の担当が分かれているクリニックでは、無理なく続けられる説明方法が異なります。
患者層、スタッフ構成、会計の流れ、院内掲示の有無などを踏まえて、自院に合う方法を決める必要があります。
患者さんへの説明だけでなく、スタッフへの共有方法を確認したい方は、こちらの記事もご覧ください。
ベースアップ評価料はスタッフにどう説明する?院長が整理しておきたいポイント
よくある質問
Q.ベースアップ評価料を算定すると、患者負担は必ず増えますか?
保険診療でベースアップ評価料を算定した場合は、患者さんの自己負担割合に応じて窓口負担に反映されます。実際の増加額は、評価料の種類・区分、自己負担割合、ほかの診療報酬点数との合計などによって異なります。
Q.3割負担の患者さんは、初診時に50円増えるのですか?
17点は医療費全体で170円に相当するため、3割負担では単純計算で51円相当です。ただし、実際の窓口支払額は、診療全体の点数との合計や端数処理などによって異なる場合があります。
Q.自費診療の患者さんにも算定しますか?
ベースアップ評価料は保険診療における診療報酬上の評価です。自由診療のみを行った患者さんに、保険診療のベースアップ評価料を別途算定するものではありません。
Q.患者さんには「スタッフの給料を上げるため」と説明すればよいですか?
制度の目的は伝わりますが、患者さんに直接負担を求めているように受け取られる可能性があります。「国の診療報酬制度に基づき、医療現場で働く職員の処遇改善を支えるために設けられた評価です」と説明する方が適切です。
Q.院内掲示を用意すれば、受付で説明しなくてもよいですか?
掲示を設置しても、会計時に質問を受けることはあります。掲示内容だけでなく、受付・会計で使う説明文や、詳しい質問があった場合の対応方法も共有しておくと安心です。
Q.算定するかどうかは、患者負担だけで判断すればよいですか?
患者負担だけでなく、施設基準、届出、賃金改善の対象者、見込まれる評価料収入、賃金改善額、計画・実績報告などを含めて判断する必要があります。算定判断については、別の記事で整理しています。
院内で確認しておきたいこと
患者さんへの説明を始める前の確認リスト
- 自院が届け出ている評価料の種類と区分を確認する
- 初診・再診などで算定する点数を確認する
- 1割・2割・3割負担の場合のおおよその影響を確認する
- 受付・会計で使う説明文を決める
- 院内掲示やホームページで案内するかを決める
- 詳しい質問があった場合の対応者を決める
- スタッフ全体で説明の軸を共有する
すべてのスタッフが制度の細部まで説明できるようにする必要はありません。
まずは、患者さんからよく聞かれそうな質問と回答を共有し、受付・会計で説明が大きくぶれない状態をつくることが現実的です。
まとめ
ベースアップ評価料を算定すると、患者さんの自己負担割合に応じて、窓口負担にも少額反映されます。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)17点の場合、3割負担では単純計算で約50円相当です。ただし、実際の支払額は、算定する評価料の区分や診療全体の点数、端数処理などによって異なる場合があります。
患者さんへ説明するときは、次の点を軸にすると整理しやすくなります。
- 国が定める診療報酬制度に基づくこと
- 医療現場で働く職員の処遇改善を支えるための評価であること
- 算定により窓口負担にも少額反映されること
- 負担額は評価料の区分や自己負担割合によって異なること
制度上の点数や届出は共通のルールで決まりますが、誰が、どの場面で、どのように説明するかは、自院で決める必要があります。
受付体制、スタッフ構成、患者層、会計の流れを踏まえ、無理なく続けられる説明方法を整えておくことが大切です。
次に確認したい記事
患者さんへの説明内容を決めた後は、受付・会計を含めて、スタッフ間で説明の軸をそろえておく必要があります。
制度対応に限らず、院内での進め方や優先順位に迷う場面については、クリニック経営の相談事例でも整理しています。
主な参考資料
最終確認日:2026年8月1日
