ベースアップ評価料で患者負担は増える?患者説明で押さえたいポイント
本記事は、厚生労働省が公表している令和8年度ベースアップ評価料関連資料をもとに、無床クリニックを中心に整理しています。制度内容や運用は、今後の疑義解釈や事務連絡等により変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省および各地方厚生局の公表資料をご確認ください。
「ベースアップ評価料を算定すると、患者さんの負担は増えるのでしょうか。」
2026年度診療報酬改定を受けて、院長からこのような質問を受けることがあります。
あわせて、患者さんへの説明や、院内掲示・受付での案内をどうするかも論点になります。
結論
- ベースアップ評価料を算定すると、対象となる患者さんの窓口負担は少額増える可能性があります。
- ただし、医療機関の利益を増やすための制度ではなく、医療現場で働く職員の賃上げを支えるための制度です。
- 患者さんから質問を受けたときに備えて、受付・会計を含めた説明の軸をそろえておくことが大切です。
この記事では、ベースアップ評価料による患者負担への影響と、患者さんへ説明するときのポイントを整理します。
ベースアップ評価料とは
ベースアップ評価料は、医療機関で働く職員の賃上げを支えるために設けられた診療報酬です。
医療現場では、看護職、医療事務、看護補助者など、医療提供体制を支える職種の確保が課題になっています。
そのため、処遇改善を進めるための制度として、ベースアップ評価料が位置づけられています。
制度の背景や設計の考え方を確認したい場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ベースアップ評価料とは?制度の意味とクリニックで考えておきたいこと
患者負担はどのくらい増えるのか
ベースアップ評価料を算定すると、診療報酬の点数が加算されるため、患者さんの自己負担額にも影響します。
患者さんの自己負担割合に応じて窓口負担へ反映されるため、これまでより少し高くなったと感じる場面は出てきます。
患者負担の見え方の例
- 初診時に外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が17点つく場合、3割負担ではおおむね50円程度増える計算になります。
- 継続的に賃上げを行っている施設では初診23点となるため、3割負担ではおおむね70円程度の増加イメージになります。
- 再診時も、施設区分によって4点または6点がつくため、少額ですが負担増として認識される可能性があります。
ただし、この負担増は医療機関の利益を増やすためではなく、医療現場の賃上げを支えるための制度に基づくものです。
※上記は外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)を中心にした例です。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を算定するクリニックでは、その区分に応じて自己負担額がさらに上乗せされることがあります。
クリニック収入にはどう影響するのか
ベースアップ評価料を算定すると、診療報酬の点数が加算されるため、クリニックの収入にも反映されます。
ただし、点数は一律ではなく、新たに賃上げを行う施設か、継続的に賃上げを行っている施設かなどによって異なります。
再診患者が1日60人程度のクリニックの一例
新たに賃上げを行う施設として、再診時の外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)が4点(40円)とすると、
- 1日:60人 × 40円 = 約2,400円
- 1か月(20日診療):約48,000円程度
の収入増となる計算です。
継続的に賃上げを行っている施設では再診6点となるため、同じ患者数でも金額はもう少し大きくなります。
算定するかどうかの判断については、こちらの記事でも整理しています。
ベースアップ評価料を算定しないとどうなる?算定しない選択と判断ポイント【院長の経営相談Q&A】
なお、自由診療(自費診療)の患者さんについては、料金の定め方にかかわらずベースアップ評価料を算入しないことが示されています。自費診療の割合が一定程度あるクリニックでは、想定より原資が集まらない可能性もあります。
売上に反映されても利益になるわけではない
ベースアップ評価料について誤解されやすいのは、売上に反映されても、そのまま利益になるわけではないという点です。
この制度は、医療機関で働く職員の賃上げを支えるための制度です。
そのため、算定によって得られた収入は、基本的にはスタッフの賃上げ原資として位置づけて考える必要があります。
ここは重要です。
ベースアップ評価料は、「クリニックの利益を増やすための点数」ではなく、「医療現場の賃上げを支えるための制度」として理解しておく必要があります。
患者さんから質問を受けたときの説明ポイント
ベースアップ評価料を算定すると、患者さんから次のような質問を受けることは十分考えられます。
想定される質問
- 「今日は医療費が少し高い気がするのですが。」
- 「診療費が上がったのでしょうか。」
- 「この加算は何ですか。」
こうした質問に対しては、窓口で過度に詳しい制度説明をする必要はありません。
実務上は、まず「国の定めた健康保険のルールに基づいて反映されているものです」という説明軸を基本にすると、受付や会計の現場で運用しやすくなります。
そのうえで、必要に応じて、医療現場で働く職員の処遇改善を支える制度であることを補足します。
説明するときのポイント
- 国が定めた健康保険のルールに基づくものであること
- 医療現場で働く職員の処遇改善を支える制度であること
- 医療機関の利益を増やすための制度ではないこと
- 受付・会計で説明がぶれないよう、院内で説明軸をそろえること
患者さんへの説明だけでなく、受付や会計で最初に質問を受けるスタッフへの共有も重要です。
スタッフへの説明を整理したい方は、こちらの記事もご覧ください。
ベースアップ評価料はスタッフにどう説明する?院長が整理しておきたいポイント
制度の説明は分かっても、院内でどう伝えるかで止まることがあります
患者さんへの説明、受付での案内、スタッフへの共有など、制度の理解だけでは整理しきれない場面もあります。
近い相談事例は、こちらでまとめています。
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まとめ
ベースアップ評価料を算定すると、患者さんの自己負担額には少額ながら影響します。
また、クリニックの収入にも反映されますが、それは利益を増やすためではなく、医療現場で働く職員の賃上げを支えるための原資として考える必要があります。
そのため、ベースアップ評価料については、
- 患者負担にどう影響するのか
- クリニック収入にどう反映されるのか
- 制度の目的は何か
- 患者さんやスタッフへどう説明するか
を整理したうえで、院内で説明の軸をそろえておくことが大切です。
制度の説明だけでなく、院内でどう扱うかまで整理したいときに
患者さんへの説明、受付での案内、スタッフへの共有など、制度の理解だけでは整理しきれない場面があります。
近い相談事例を確認したい方は、こちらをご覧ください。
※判断整理(初回)は、正解の提示や実務代行ではなく、判断の前提を整理するための初回支援です。