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クリニック開業・経営コラム

ベースアップ評価料はいつまで?届出期限の考え方と院長が最初に整理しておきたいこと【院長の経営相談Q&A】

最終更新日:2026年4月22日(2026年4月21日発出の疑義解釈その4までを反映)

ベースアップ評価料について、「いつまでに届け出ればよいのか」は多くの院長が最初に確認するポイントの一つです。ただ、この制度は期限だけを確認して判断できるものではありません。算定するかどうか、院内でどう受け止めるか、スタッフへどう説明するかまで含めて整理しないと、制度対応そのものが負担になることがあります。本記事では、まず届出期限の考え方を確認したうえで、院長がどの論点から整理を始めると考えやすいかを入口としてまとめます。

※本記事は、2026年6月施行予定の制度内容および2026年4月21日公表の疑義解釈(その4)時点の情報をもとに整理しています。
今後、厚生労働省から追加の疑義解釈や事務連絡等が公表された場合には、内容を順次更新していきます。

【この記事で整理できること】

  • ベースアップ評価料の届出期限の考え方
  • 「6月1日必着」と「5月18日まで推奨」の違い
  • 電子申請の受付開始時期を踏まえた実務対応
  • 期限確認だけで判断しない方がよい理由
  • 算定判断を考えるときの最初の整理ポイント
  • 次に読むと整理しやすい関連記事

1.ベースアップ評価料の届出期限はどう考えるか

ベースアップ評価料を算定するためには、地方厚生局への届出が必要です。一般的には、算定を開始する時期に応じて所定の期限までに届出を行う必要がありますが、改定直後は疑義解釈や追加通知によって取扱いが補足されることもあります。

そのため、「何月何日まで」と一点だけで覚えるよりも、算定を始めたい時期から逆算して早めに確認するという考え方で整理しておく方が実務的です。

とくに改定直後は、制度の細かな運用があとから示されることもあります。期限だけを見て急いで決めるのではなく、制度の概要と自院の方針を並行して確認することが大切です。

なお、令和8年度の制度移行では、継続算定している医療機関でも再届出が必要になります。令和8年6月1日から算定を行う場合は、令和8年5月7日から6月1日まで(必着)に届出が必要とされています。

ここでいう「6月1日まで」は消印ではなく、厚生局への到着(必着)を意味します。期限ぎりぎりではなく、余裕をもった提出スケジュールを立てておくことが重要です。

また、直近の厚生労働省の案内(疑義解釈その3)では、窓口混雑を避けるため、可能な限り5月18日までに届出を行うことが推奨されています。

さらに、電子申請による受付は5月25日から開始とされたため、「紙で早めに提出するか」「電子申請を待って提出するか」という実務的なスケジューリングも整理しておく必要があります。

提出対応の全体像や年間スケジュールについては、以下の記事で整理しています。

ベースアップ評価料|令和8年度の提出対応の全体像を自院の区分別に整理【院長の経営相談Q&A】

参考資料
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」
参考資料を見る(厚生労働省PDF)

2.期限の確認だけで判断しない方がよい理由

賃上げ率(3.2%・5.7%)は達成しないと算定できないのか

2026年度診療報酬改定では、賃上げの目標として3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)が示されています。

ただし、この数値は各医療機関に義務として課されている達成条件ではありません。この水準に到達していない場合でもベースアップ評価料の算定は可能です。

一方で、算定によって得られた評価料は対象職員の賃金改善に充てることが前提となっている制度です。

つまり、届出期限だけでなく、算定後の運用をどのように整理できるかという視点もあわせて確認しておくことが重要になります。

なお、賃上げ率(3.2%・5.7%)は政策目標として示されているものであり、この数値そのものが算定要件になっているわけではありません。

特に今回の改定では、評価料の段階的な引き上げに伴い、これまでのように評価料の扱いを年度をまたいで柔軟に調整するというより、年度単位で計画的に賃金改善へ充当する運用管理がより求められる形になっています。

つまり、算定するかどうかは届出期限だけで判断するのではなく、算定後にどのような賃金改善計画を組めるかという視点も含めて整理しておくことが重要になります。

また、今回の改定では、病院や有床診療所には「継続的な賃上げを行わない場合に入院料等が減算される」という仕組みが設けられています。

一方で、無床クリニックにはこの減算ペナルティはありません。

そのためベースアップ評価料は、「制度上の義務として対応するもの」というよりも、自院の採用・定着戦略としてどう位置づけるかという経営判断として整理することができます。

ベースアップ評価料は、届出期限までに出すかどうかだけで決める制度ではありません。実際には、次のような論点が関係します。

  • 対象職種・対象外職種への説明をどう考えるか
  • 院内でどのように受け止めてもらうか
  • 今年だけでなく今後も見据えて継続性をどう考えるか
  • 制度対応に必要な事務体制をどう整えるか

つまり、期限確認は入口にすぎません。本当に必要なのは、自院としてこの制度をどう位置づけるかという整理です。

制度の理解だけでは判断は決まりません。自院としてどう考えるかの整理が必要になります。

算定判断を考えるときの整理イメージ

整理の軸 A:早めに算定を進める場合 B:慎重に検討する場合
見ていること 採用・定着、院内への説明、早期対応の必要性 継続可能性、運用負担、制度変更時の影響
生じやすい論点 対象職種への説明、院内バランス、事務負担 見送る理由の整理、スタッフへの伝え方、今後の再判断
院長が整理したいこと なぜ今算定するのか、その目的を言葉にできるか なぜ今は見送るのか、その理由を院内で共有できるか

3.算定判断を考え始めるときの整理の入口

算定するかどうかを考えるときには、まず次のような観点から整理を始めると考えやすくなります。

  • 今回の制度対応をどのような目的で受け止めるか
  • スタッフへの説明をどのように行うか
  • 今年だけでなく今後も見据えるか
  • 院長自身の関与範囲をどこまでにするか

制度の資料に書かれている内容を読むことは大切ですが、それだけで自院の判断が決まるわけではありません。制度をどう理解したかではなく、自院としてどう考えるかを言葉にしていくことが、実際の判断につながります。

とくに今回のように、「6月1日必着」という制度上の期限に加え、「可能な限り5月18日まで」「電子申請は5月25日から」といった実務運用上の要素が加わると、単純に制度を知っているだけでは対応しきれません。

だからこそ、届出の可否だけでなく、自院としてどのタイミングで、どの方法で、どの意図をもって対応するのかまで含めて整理することが大切になります。

4.どこで迷っているかによって整理の進め方は変わる

ベースアップ評価料についての迷いは、院長ごとに少しずつ異なります。

  • 算定すべきかどうか迷っている
  • スタッフ説明をどうするか迷っている
  • 制度の位置づけをどう考えるか迷っている
  • 継続性をどう見るか迷っている
  • 紙で出すか電子申請を待つか迷っている

迷いの内容によって整理の順番も変わるため、次の記事もあわせて参考にしてください。

5.関連記事|判断整理を進めたい方へ

For Clinic Decision Making

期限を確認したあと、自院としてどう考えるかが重くなり始めたときに

ベースアップ評価料は、届出期限を確認すれば終わる制度ではありません。算定するかどうか、スタッフにどう説明するか、どこまでを今年整理しておくか。そうした判断が少し重くなり始めた段階で、ご相談いただくことが多くあります。

こちらでは、正解を提示するのではなく、何を論点として見ればよいか、どこから整理すると考えやすいかを一緒に確認します。制度の理解と、自院としての判断のあいだにある前提を整理するための支援です。

相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。むしろ、何から考えるべきかを整理するところから始まることが多くあります。

臨床と同じように、経営判断も「症状が出てから」ではなく、違和感の段階で整理することに意味があります。

売り込みではなく、今の段階で整理支援が合いそうかを確認していただくための入口ページです。

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