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クリニック開業・経営コラム

ベースアップ評価料とは?対象者・賃上げ率・クリニックで判断したいポイントをわかりやすく解説

更新日:2026年6月2日

本記事は、厚生労働省が公表している令和8年度ベースアップ評価料関連資料をもとに整理しています。制度内容や運用は、今後の疑義解釈や事務連絡等により変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省等の公表資料をご確認ください。

ベースアップ評価料とは、医療機関で働く職員の賃金改善を目的として設けられた診療報酬です。

2026年度診療報酬改定では、医療人材の確保や処遇改善を進めるため、ベースアップ評価料について制度の整理が行われました。

ただし、ベースアップ評価料は「点数が付くから算定する」という単純な話ではありません。

評価料として得られた原資を、対象職員の賃金改善にどのように充てるのか。スタッフへどう説明するのか。今後も継続できる運用にできるのか。

制度の内容を理解したうえで、自院としてどう判断するかが大切になります。

この記事では、ベースアップ評価料の目的、対象者、賃上げ率、原資の考え方をわかりやすく整理し、クリニックで考えておきたい判断ポイントを確認します。

ベースアップ評価料とは

ベースアップ評価料は、医療機関で働く職員の賃上げを目的として設けられた診療報酬です。

制度の特徴は、医療機関の利益を増やすための制度ではなく、スタッフの処遇改善を目的としていることです。

そのため、評価料として得られた収入は、対象職員の賃金改善に充てることが前提になります。

  • 診療報酬上の収入は増える
  • ただし、自由な利益として残すための制度ではない
  • 対象職員の賃金改善に使うことが前提になる

つまり、ベースアップ評価料は「算定できるかどうか」だけでなく、「得られた原資をどのように賃金改善へつなげるか」まで考える必要がある制度です。

整理の視点:
ベースアップ評価料は、単なる増収策ではなく、スタッフの処遇改善と人材確保に関わる制度として捉えることが大切です。

対象職員は誰か

ベースアップ評価料は、医療機関に勤務する職員の賃金改善を目的としています。

対象となる職員には、主に次のような職種が含まれます。

  • 看護師
  • 医療事務職員
  • 看護補助者
  • リハビリ職種
  • その他、医療機関で勤務する職員

2026年度改定では対象範囲の整理も進み、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師も対象に明記されました。

一方で、経営者や法人役員などは対象外です。

また、40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師や、業務委託により勤務しているスタッフは対象外とされています。

派遣職員については、派遣元と相談・協力のうえで同等以上の賃金改善を行う場合には、対象職員に含めて計算する考え方が疑義解釈で示されています。

整理の視点:
対象職員を確認するときは、職種名だけでなく、雇用形態、年齢、役員該当性、派遣・委託の違いも確認する必要があります。

賃上げ率3.2%・5.7%は達成しないと算定できないのか

2026年度診療報酬改定では、賃上げの目標として3.2%、看護補助者・事務職員については5.7%が示されています。

ただし、この数値は各医療機関に義務として課されている達成条件ではありません。

厚生労働省としての政策目標として設定されているものであり、この水準に到達していない場合でも、ベースアップ評価料の算定は可能です。

一方で重要なのは、算定によって得られた評価料は、対象職員の賃金改善に充てることが前提となっている点です。

そのため、「何%賃上げしなければならないのか」だけを見るのではなく、評価料として得られる原資をどの職員へ、どのような形で配分するのかを整理する必要があります。

整理の視点:
賃上げ率は制度理解の入口です。実際には、自院の給与体系、対象職員、今後の人件費負担を踏まえて判断する必要があります。

原資は何に使えるのか

ベースアップ評価料として得られた原資は、対象職員の賃金改善に充てることが前提です。

具体的には、次のような賃金改善が想定されています。

  • 基本給の引き上げ
  • 毎月決まって支払われる手当の引き上げ
  • 恒常的に夜間を含む交替制勤務をとっている職場における夜勤手当の増額
  • 上記のベースアップに伴って増加する賞与
  • 上記のベースアップに伴って増加する時間外手当
  • 上記のベースアップに伴って増加する法定福利費の事業者負担分

ここで注意したいのは、ベースアップ評価料は一時的な支給だけで終わる制度ではなく、継続的な賃金改善を意識した制度であることです。

そのため、原資の使い方を決める際には、今年だけでなく、来年度以降も続けられるかという視点が必要になります。

整理の視点:
原資の配分を考えるときは、「今年どう配るか」だけでなく、「来年以降も説明できるか」「人件費として継続できるか」まで確認することが大切です。

なぜベースアップ評価料が設けられたのか

ベースアップ評価料が設けられた背景には、医療機関を取り巻く環境の変化があります。

  • 物価の上昇
  • 人件費の上昇
  • 医療人材の不足
  • 他業種との採用競争

こうした問題は、クリニックの現場でも強く意識されるようになっています。

医療事務、看護師、看護補助者、リハビリ職種など、人材の確保や定着は、診療体制そのものに関わるテーマです。

そのため、ベースアップ評価料は、単に「点数が付いた」という話ではありません。

医療機関で働く人を確保し、地域の医療提供体制を維持するための政策的制度として見る必要があります。

制度の背景を理解すると、算定するかどうかの判断も、単なる収入増の話ではなくなります。

自院の採用、定着、スタッフ説明、患者負担、今後の運用を含めて考える必要が出てきます。

クリニック経営で考えておきたいこと

ベースアップ評価料は、制度の内容を理解しただけでは判断が終わりません。

クリニックとしては、次のような点を整理しておく必要があります。

  • 自院では対象職員が誰になるのか
  • 評価料として見込める原資はどの程度か
  • その原資をどのように賃金改善へ反映するのか
  • スタッフへどのように説明するのか
  • 患者負担への説明をどう考えるのか
  • 毎年の報告や管理を無理なく続けられるのか
  • 制度が変わった場合にも、処遇改善の方針をどう維持するのか

今回の改定では、届出時の賃金改善計画書の作成は不要となり、入口のハードルは下がりました。

その一方で、毎年8月の実績報告書に加えて、同じく8月に賃金改善中間報告書の提出が求められる運用となっています。

また、毎年の賃金改善実績は、前年の給与総額との単純比較で判定されるわけではありません。

賃金改善前の給与体系を、当該年度に勤務している職員へ当てはめた場合の基本給等総額と、実際の基本給等総額との差分で判断されます。

そのため、スタッフの増減がある中でも説明できる給与設計や、昇給ルールの整理が求められます。

制度対応は「算定するかどうか」だけでなく、今後の人員体制や賃金改善の考え方、そして継続的に運用管理できるかどうかとも関わる判断になります。

整理の視点:
制度の理解だけでは、自院の判断は決まりません。算定するか、見送るか、どのように説明するかを、自院の前提に照らして整理することが重要です。

判断の前提が整理されると、業者資料や制度資料を読み比べる時間を減らしやすくなります。

また、院長が一人で迷い続ける時間も減り、スタッフへの説明や診療体制の見直しに時間を使いやすくなります。

ベースアップ評価料は、制度対応であると同時に、今後のクリニック運営をどう続けていくかを考える機会でもあります。

参考資料

制度の詳細については、厚生労働省が公表している説明資料・疑義解釈も参考になります。

まとめ

ベースアップ評価料は、医療機関で働く職員の賃金改善を目的とした診療報酬です。

制度としては、医療人材の確保や処遇改善を通じて、医療提供体制を維持するという意味があります。

一方で、クリニックにとっては、制度の内容を理解するだけでは判断は終わりません。

対象職員、賃上げ率、原資の使い方、スタッフへの説明、患者負担、毎年の報告、今後の人件費負担まで含めて考える必要があります。

大切なのは、「算定できるかどうか」だけでなく、「自院として継続できる運用にできるか」を整理することです。

判断の前提が整理されると、比較に使う時間が減り、迷う時間も減っていきます。

その分、院長は診療、スタッフとの対話、院内運用の見直しなど、本来向き合いたいことに時間を使いやすくなります。

まずは、制度の内容を確認したうえで、自院では何を判断する必要があるのかを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

制度の理解から、自院としての判断整理へ進みたい院長へ

算定するか、見送るか。スタッフへどう説明するかを整理する時間です

ベースアップ評価料は、制度の内容を理解しても、自院としてどう判断するかで迷いやすいテーマです。

算定するか、見送るか。対象職員をどう確認するか。賃金改善の原資をどう配分するか。スタッフへどのように説明するか。

一つひとつの判断に一般論としての正解があるように見えても、実際には、自院の給与体系、スタッフ構成、今後の採用方針、院長の考え方によって選ぶべき方向は変わります。

状況確認面談では、院長の代わりに答えを決めるのではなく、現在の状況や相談内容を確認し、どのような論点がありそうかを一緒に整理します。

そのうえで必要に応じて、判断整理(14日間・初回のみ)では、現状、論点、選択肢、優先順位、次の一歩を見える形にしていきます。

「今、何を決めるべきか」「何を後から確認すればよいか」が整理されることで、比較に使う時間や迷う時間を減らし、診療やスタッフに向き合う余白をつくりやすくなります。

答えを押し付けるのではなく、自院として納得して判断できる状態を整えるための時間です。

※この時点で何かを決める必要はありません。
現在の状況を確認し、整理が必要かどうかを一緒に確認します。

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