開業や経営の“もやもや”を整理し、納得して進むために。 ――医師の考えに伴走する、対話型の経営支援。

クリニック開業・経営コラム

これからのクリニックは「治す医療 × 治し支える医療」を地域の中でどう設計するかが問われる時代へ


この記事は、クリニックの開業準備中、または開業して5年以内の30〜40代の医師の先生に向けて、
「これからのクリニックに何が求められ、自分はその中で何を担うのか」を整理するために書いています。


この記事では、次の3つのポイントを中心にお伝えします。



  • 医師偏在是正と医療DXの流れの中で、クリニックに求められる役割は「治す医療」だけではなくなること

  • 診療科ごとに「どんな地域課題を治し支えるのか」を言語化することが、これからの開業の土台になること

  • その軸を一緒に整理し、地域と自分の両方に無理のない形を考える伴走型支援が必要になっていること


2025年11月27日、医師偏在の是正や医療DX推進を目的とした医療法改正案が衆議院で可決しました。
外来医療が過剰な地域では、都道府県が「不足している医療機能」の提供を要請でき、従わなければ勧告や公表も検討されます。


これは、クリニック開業の前提が変わる転換点です。従来の「好きな医療を、好きな場所で」という考え方から、
「地域でどんな医療機能を担うのか」を軸にする時代 に入りつつあります。


■ 1. 外来だけでは地域医療を支えられない時代へ


これまでクリニックは、“治す医療”(診断・処置・外来)を中心に設計されてきました。
しかし今、地域で求められているのは、生活・家族・地域を支える「治し支える医療」です。


たとえば、次のような役割です。



  • 高齢者の在宅医療やフレイル予防

  • 医療的ケア児・療育・家族支援

  • 精神科・心療内科における多職種連携・家族支援

  • 高齢者施設の皮膚管理や排尿ケア

  • 転倒予防や地域リハビリ


これらは外来だけでは完結しません。クリニックが“地域の課題に応える拠点”として、
治す医療と治し支える医療の両方をどう担うかが問われています。


医師偏在対策が可決された背景には、まさにこの「治し支える医療」の不足があります。


■ 2. なぜ“治し支える医療”が避けられないのか


理由は、日本の医療が保険制度によって支えられているからです。自己負担3割・公費7割という構造のもと、医療は公的な財源によって成り立っています。


公費で支えられる以上、医療提供の方向性は国の方針と切り離せません。現在、国は明確に次の方向へ舵を切っています。



  • 医師偏在の是正

  • 地域包括ケアの強化

  • 高齢者・子ども・障害児支援への重点化

  • 医療DXによる地域連携の再構築


これらはすべて、「治す医療」だけでなく「治し支える医療」を整える流れといえます。
そのため、“治す医療”だけを前提にしたクリニックは、時代のニーズと少しずつずれていきます。


■ 3. 「診療科 × 地域課題 × 治し支える」でクリニックを設計する


多くの先生とお話しする中で、開業の考え方が次のように変わってきていると感じます。


「どの診療科で何をするか」だけでなく、
「その診療科で、地域のどんな課題を治し支えるか」まで含めて考える。


たとえば、次のような組み合わせです。



  • 小児科:医療的ケア児・療育・家族支援

  • 産婦人科:周産期退院後の母子支援

  • 内科:在宅医療 × 生活習慣病 × フレイル予防

  • 皮膚科:施設支援・在宅での皮膚管理

  • 泌尿器科:排尿ケア・在宅カテーテル管理

  • 整形外科:転倒予防・地域リハビリ

  • 精神科・心療内科:家族支援・地域包括との連携


いずれも、“治す医療”の延長線上にありながら、実際には生活・家族・地域を支える
「治し支える医療」の要素が強くなっています。


重要なのは、「自分が担える“治し支える医療”の範囲を明確にすること」です。


■ 4. 開業は“自分の軸”を見つめ直す行為へ


開業を前にした先生方から、次のようなお話を伺うことがあります。



  • QOLだけで決めていいのか迷っている

  • 医療モールの誘いにどこか違和感がある

  • 自分の医療観をうまく言葉にできていない

  • 在宅や地域との接点がイメージできない


これらは「迷っている」のではなく、“軸がまだ言語化されていない状態”だと捉えています。


開業準備中の先生や、開業して5年以内の先生からは、
「このままの方向性で続けていいのか」「地域から求められている役割と、自分のやりたい医療のバランスをどう取るか」
といったご相談をよくいただきます。こうした問いこそが、“軸が育っているサイン”だと感じています。


開業は、自分の医療観 × 地域ニーズ × 継続性が重なる部分を明確にしていくプロセスです。
軸を持たないまま立地やモールから決めてしまうと、開業後に「働き方」「役割」「数字」のどこかでひずみが生じます。


これからの時代、開業とは単に箱をつくることではなく、
治す医療と治し支える医療のバランスを、自院なりに設計していくことだと感じています。


■ 5. これからの開業支援は「御用聞き」ではなく「伴走」へ


従来の開業支援は、立地・モール・内装・集患など、“外側の要素”から始まることが多くありました。
しかし、これから必要とされるのは、


「軸の整理 → 地域課題との照合 → 役割設計」
という順番で一緒に考えていく伴走型の支援だと考えています。


私自身はこれまで、



  • 医療観の棚卸し

  • 働き方・価値観の整理

  • 診療科ごとの役割設計

  • 公費・政策との整合性の確認

  • 10年後を見据えた継続性の検討


といった“内側の整理”を中心に、先生方と対話を重ねてきました。
軸が言語化されれば、立地や規模、働き方、情報発信の方針も自然と決まっていきます。


■ 6. 「治す × 治し支える」の両輪を、自院の軸としてどう組み立てるか


医師偏在対策の可決は、クリニックの役割が変わるタイミングです。
これから大切になるのは、


治す医療と治し支える医療の両輪を、自院の軸としてどう組み立てるか。


迷いや違和感がある先生ほど、その奥には必ず大切にしたい医療観が隠れています。
その“軸”を一緒に言葉にし、地域にも先生ご自身にも無理のないかたちで、開業や経営の方向性を整えていくこと。
それが、これからの時代における開業支援の役割だと考えています。


参考資料


本記事の背景には、厚生労働省が公表している医師偏在対策や地域医療構想、在宅医療・地域包括ケアに関する資料、および2025年11月の医療法改正(医師偏在是正)に関する報道があります。
特に以下の資料・ニュースを参考にしています。



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