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クリニック開業・経営コラム

クリニック採用に新しい視点を|生成AIスキルをどう見極めるか

これまで採用面接では「パソコン操作ができるか」を確認することが一般的でした。 しかし、これからは 「生成AIをどのように扱えるか」 も、少人数でクリニックを運営していくうえで重要な視点になりつつあります。
本記事は、正解を示すマニュアルではなく、『持続可能なクリニック経営』のための一つの考え方として、 面接時に生成AIスキルをどのように確認するかを整理したものです。
元になったnote記事も併せてご覧ください → note記事はこちら

なぜ「生成AIスキル」を確認するのか

採用の目的は、「いまの仕事をこなせる人」を探すことだけではありません。 環境やツールの変化に合わせて、学びながら業務をアップデートできる人材と出会うことが重要です。 生成AIの活用力は、業務効率化だけでなく、そうした適応力や学習姿勢を測る指標にもなります。

  • 人手不足への対応:少人数でも業務の下書き・要約・資料整備を効率化できる。
  • 属人化の防止:AIを起点に雛形を整備し、担当者が変わっても品質を一定に保ちやすい。
  • 学習姿勢の評価:新しいツールを自ら試し、活用方法を考えられるかを確認できる。

面接で確認すべき3つの視点

「使ったことがありますか?」という質問だけでは、生成AIスキルの本質は見えてきません。 以下の3つの視点から質問や簡単な演習を組み込むことで、 候補者の経験値だけでなく、考え方やリスク認識まで含めて立体的に把握できます。

1. 経験の有無と活用範囲

質問例:
「生成AIを使ったことはありますか? どのような場面で使い、どんな効果がありましたか?」

ここで確認したいのは、“触れたことがあるかどうか”よりも、 具体的な活用場面と効果を説明できるかです。
たとえば、 「文案の下書き」「患者向け案内文のたたき台」「チェックリスト作成」「マニュアルの整理」など、 実務につながる使い方が語れるかどうかが判断材料になります。

2. 簡易演習での実技

単なる自己申告だけでなく、短い演習を組み込むと、 「AIとどう付き合う人なのか」がより具体的に見えてきます。

課題例:
「インフルエンザ予防接種のお知らせ文をAIが作成したと仮定します。 この文書を読んで、患者さんへの伝わり方や誤解の可能性を踏まえ、修正したい点を教えてください。」

この演習で見るポイントは以下の通りです。

  • AIの文章をそのまま信じずに検証できているか
  • 対象読者(患者さん・家族)への配慮や分かりやすさを意識しているか
  • 医学的な表現や注意事項について、「わからないところは確認する」という姿勢を持てるか

3. リスク認識(理由を添えて説明できるか)

生成AIの活用にはメリットと同時にリスクも存在します。 そのリスクを感覚的ではなく、理由を添えて説明できるかは重要な評価ポイントです。

  • 出力をそのまま使わない理由:医学的誤りや過剰表現、誤解を招く文章が混在する可能性があるため。必ず人が確認する必要がある。
  • 個人情報を入力しない理由:多くの生成AIは外部サーバーで処理されており、入力内容の扱いによっては情報漏洩やガイドライン違反のリスクがあるため。
  • 著作権・表現リスクの認識:既存文章に酷似した表現や、不適切な表現が含まれていないか確認する必要があるため。

評価の目安

実際の採否は総合判断になりますが、生成AIに関する回答や演習の様子から、 おおよその目安として以下のように整理できます。

  1. 高評価:具体的な活用経験があり、検証手順や安全面への配慮も説明できる。AIを使いこなすというより、「上手に付き合う」姿勢がある。
  2. 中評価:利用経験はあるが、活用範囲が限定的、または受け身的。ただし、こちらからの説明を理解しようとする姿勢があれば、入職後の育成余地は大きい。
  3. 低評価:出力をそのまま使おうとする発言が目立つ、リスクへの認識が薄い。「楽ができるツール」としか捉えていない場合は慎重な判断が必要。

運用のポイント

採用面接で生成AIスキルを確認するだけでなく、採用後の運用ルールも合わせて整えておくと安心です。

  • 院内で利用を許可するAIツールを限定し、アカウント管理やログ管理の方針を明確にする。
  • 表記ルール・禁則語・トーン&マナーなどをまとめたガイドラインを用意し、AI出力の最終確認は必ず人が行う。
  • 研修や面接演習では、個人情報や医療情報を含まないダミー素材のみを使用する。

まとめ

生成AIスキルの確認は、従来のPCスキルチェックを置き換えるものではありません。 ただし、人手不足のなかで少人数体制を維持しつつ、業務の質と安全性を確保していくためには、 「生成AIとどう付き合える人か」を見る新たな視点を採用プロセスに加える価値があります。
ツールの知識量そのものよりも、リスクを理解し、確認を怠らず、患者さんや仲間への配慮を忘れない姿勢を重視していきましょう。

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