勤務医のままで良い?開業すべき?|迷ったときに決める“3つの判断軸”
勤務医を続けるか、開業医になるか──。
どちらの道も患者さんに貢献する尊い選択であり、「こちらが正解」というものはありません。
それでも、働き方や家族のこと、経営への不安などを前に「自分はどうするべきか」と迷われる先生は多くいらっしゃいます。 このページでは、勤務医と開業医のちがいを整理しながら、 ご自身に合った選択を考えるための3つの判断軸をご紹介します。
※本記事は、クリニック開業・経営支援の立場から、先生方とご一緒してきた経験をもとに 「働き方や準備を整理する視点」をまとめたものです。医療行為や診断についての専門的な判断は、 所属先や関係団体の指針をご確認ください。
この記事でわかること
- 勤務医と開業医のちがいを「責任の広さ」から整理する視点
- 開業を検討するときに役立つ「医療・組織・収益」の3つの判断軸
- 勤務医のままでも良い、という選択を肯定的に捉える考え方
- 開業準備で見落とされがちなポイントと、行動につなげるヒント
1.勤務医と開業医のちがいは「責任の広さ」
「勤務医」と「開業医」のちがいは、年収や自由度といった表面的な条件だけではなく、 どこまでの範囲を自分の責任として引き受けるかという点にあります。
1-1.勤務医に向いている人・働き方の特徴
これまでクリニック開業・経営支援の立場で先生方とご一緒してきた中で、 勤務医のままの働き方がフィットしていると感じる傾向として、次のような点が挙げられます。
- 専門領域の診療に集中し、医療技術や臨床経験を深めていきたい方
- 組織の中でチーム医療に取り組みたい、他職種と協働したい方
- 経営判断よりも、診療そのものに時間とエネルギーを使いたい方
勤務医は、病院や医療機関という「器」の中で、主に診療に責任を持つ働き方です。 人員配置や設備投資、資金繰りなどは、基本的に法人や経営陣が担います。
1-2.開業医に向いている人・働き方の特徴
一方で、「自分なりのクリニック像をつくりたい」とお考えの先生方には、 次のような傾向が見られることが多いです。
- 自分の医療観を反映したクリニックの“型”をつくりたい方
- 地域とのつながりを育てながら、長く続く関係性を築いていきたい方
- 診療だけでなく、スタッフ採用や仕組みづくり、数字にも向き合える方
開業医は、診療だけでなく組織づくりと経営にも責任を持つ立場です。 医療と経営の両方を、自院の価値観に沿って設計したい先生には、大きなやりがいがあります。
1-3.どちらが正解ではなく「価値観の違い」
どちらが優れている/劣っているという話ではなく、求められる役割の広さと時間の使い方が違うだけです。 まずは「自分はどこに時間とエネルギーを使いたいのか」を整理してみることが、最初の一歩になります。
2.開業に迷ったときに決める“3つの判断軸”
開業を考えはじめると、立地・内装・医療機器・資金…と、検討すべきことが一気に増えていきます。 しかし、順番を間違えると、あとから軌道修正が難しくなることも少なくありません。
そこで本記事では、「医療の軸」「組織の軸」「収益の軸」という3つの観点から、 ご自身に合った開業かどうかを考える判断軸を整理してみます。
2-1.医療の軸:誰に・どんな価値を届けたいか
- どのような患者層に、何を強みとして提供したいか
- 外来のスタイル(予約中心か、当日枠を厚く取るか)
- 慢性疾患フォロー、健診、専門外来など、どこに時間を使うか
「誰のどんな困りごとを、どのように支えたいのか」を言葉にしていくことで、 勤務医としての方が実現しやすいのか、開業医として器ごと設計した方が良いのかが見えやすくなります。
2-2.組織の軸:どんなチームをつくりたいか
- 医師・看護師・事務など、役割分担をどう設計したいか
- 教育や振り返りの時間を、どの程度確保したいか
- 院長とスタッフのコミュニケーションスタイル
「このようなチームで診療したい」というイメージを一度言語化しておくと、 開業という選択が自分にとって必要なのかどうかも整理しやすくなります。
2-3.収益の軸:経営を支える仕組みをどう設計するか
- 慢性疾患診療・検査・健診・自費など、収益の柱をどう組み立てるか
- 季節要因による患者数の変動を、どのように平準化するか
- ご自身のライフプランと、クリニックの資金計画のバランス
「経営の数字」に全てを振り回されるのではなく、医療と経営を両輪で考えられるかどうかをイメージしておくと、 開業後のギャップが小さくなります。
3.勤務医のままでも問題ない、という選択
「開業をしない=チャレンジしない」というイメージを持たれることもありますが、 実際には勤務医のままだからこそ提供できる価値も多くあります。
3-1.専門性を深めるというキャリア
病院や医療機関で、特定領域の診療に集中し続けることは、 患者さんにとっても、地域の医療提供体制にとっても大きな意味があります。 「自分は専門性を高める道を選んでいる」と捉え直すことで、日々の仕事の見え方も変わってきます。
3-2.ライフステージに応じた柔軟な選択
ご家族の状況やライフイベントによって、今は勤務医を続け、 将来タイミングが整ったときに開業を検討する、という選び方もあります。 重要なのは、「なんとなく続ける」のではなく、「選んで続けている」状態をつくることです。
3-3.開業しないからこそ守れるバランス
経営や組織運営に日々の時間を割かずに済むからこそ、 家庭や趣味、学びに時間を使えるという面もあります。 どのバランスを「自分にとっての納得解」とするかを考えてみることで、 勤務医という選択にも意味づけが生まれてきます。
4.開業準備で見落とされがちな3つのポイント
開業を前向きに検討している場合も、準備の順番を間違えると、開業後の負担が大きくなります。 ここでは、支援の現場でよく耳にする見落としを3つに整理します。
4-1.「内装や機器」から着手してしまう
- 導線設計やスタッフの動きよりも先に、設備の検討が進んでしまう
- 結果として、人と仕組みが後回しになり、現場での負担が増える
4-2.採用基準が曖昧なまま進めてしまう
- 「誰でも良いから早く来てほしい」という採用になりやすい
- チームづくりが属人的になり、離職やミスマッチが増える
4-3.収益構造が単線で、季節変動に弱い
- 感染症や急性期の患者数だけに依存した構造になってしまう
- 慢性疾患フォローや健診、自費診療などの柱づくりが後手に回る
診療・人・数字をセットで設計することを意識しておくと、 開業後の「想定外」を減らしやすくなります。
5.迷いが行動に変わる瞬間とは
「勤務医のままで良いのか」「開業すべきか」と考えるとき、 いきなり結論を出そうとすると、どうしても不安が先に立ちます。
大切なのは、理想を現実に落とす“小さな設計”から始めることです。
たとえば、こんな一歩からでも十分です。
- 「どんな患者さんと、どのように関わり続けたいか」を紙に書き出してみる
- 1週間の働き方を振り返り、「増やしたい時間」と「減らしたい時間」を整理する
- 家族や信頼できる同僚に、今の迷いを言葉にして共有してみる
このような小さな整理の積み重ねが、数ヶ月後・数年後に振り返ったときの 「あのとき、こう考えて決めて良かった」という納得感につながっていきます。
このままでいいのか、一度整理したほうがいいと感じたときに
開業準備や日々の診療を続けるなかで、「何となく引っかかっていること」をそのままにしていませんか。
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