まえやまだ純商店

クリニック開業・経営コラム

勤務医と開業医の違いとは?働き方・収入・経営判断と開業前に考えたいこと

更新日:2026年8月5日

勤務医とは、病院やクリニックなどの医療機関に所属し、組織の中で診療を担う医師です。

開業医とは、自ら診療所やクリニックを開設し、診療に加えて、経営や組織づくりにも関わる医師です。

両者の違いは、収入や働き方だけではありません。勤務医は勤務先の方針や体制の中で役割を担います。一方、開業医は、診療方針、資金、採用、設備、院内運用、患者対応、地域との関係など、クリニック全体の判断を引き受ける立場になります。

クリニック経営とは、単に利益を増やすことではありません。

ご自身が届けたい医療を継続するために、患者さん、スタッフ、資金、設備、時間、院内運用を整え、自院として必要な判断を積み重ねていくことです。

そのため、開業を考えるときは、「勤務医と開業医のどちらが得か」だけでなく、自分がどのような医療を行いたいのか、診療以外の判断も継続して担いたいのかまで整理する必要があります。

この記事では、勤務医と開業医の違いを比較し、開業前に確認したい「医療・組織・収益」の判断軸と、勤務医のうちにできる準備を整理します。

※本記事は、2011年から医療機関の開業・経営支援に携わってきた立場からまとめています。私自身は医療従事者ではなく、開業する・しないの正解を示す立場でもありません。

1.勤務医とは?開業医とは?

1-1.勤務医とは

勤務医とは、病院やクリニックなどの医療機関に勤務し、診療を行う医師のことです。

勤務先の方針や診療体制の中で、外来、病棟、手術、検査、当直、救急対応など、所属する診療科や役割に応じた業務を担います。

診療や専門性に力を注ぎ、多職種と連携しながら患者さんを支える働き方です。

1-2.開業医とは

開業医とは、自ら診療所やクリニックを開設し、診療と経営の両方に関わる医師のことです。

立地、資金計画、スタッフ採用、院内動線、医療機器、ITツール、予約、問診、患者さんへの認知、地域連携など、クリニック全体の設計と運営に関わります。

自分が大切にしたい医療を形にしやすい一方で、診療以外にも継続的な判断が求められます。

2.勤務医と開業医の違いを比較する

項目 勤務医 開業医
立場 医療機関に勤務する 院長・経営者として診療所を運営する
診療方針 勤務先の方針や体制の影響を受ける 対象患者や診療内容を自院として設計する
収入 給与として比較的安定しやすい 収益や経費によって変動する
組織 組織の一員として役割を担う 必要な人員を採用し、役割や体制を整える
経営 直接関わる範囲は限定的なことが多い 資金、採用、労務、設備投資などを判断する
責任 診療や担当業務の責任を担う 診療に加えて、経営・運営上の結果も引き受ける
主な課題 専門性、勤務環境、組織内の役割、キャリア 患者数、採用、収支、院内運用、制度、地域連携

開業医になると、自分で決められることが増えます。一方で、自分で決めなければならないことも増えます。

自由度が高まることと、判断や責任の範囲が広がることは、切り離して考えられません。

2-1.勤務医時代は、組織が担っていたことも多い

勤務医として働いているときも、診療以外の業務は数多く存在します。ただし、その多くは院内の別部門や管理者が担っています。

  • 採用条件や給与、勤務体制を人事・事務部門が整える
  • 診療報酬の請求や入金を医事部門が管理する
  • 医療機器の購入や保守契約を組織として判断する
  • 欠員、患者対応、院内ルールの問題を複数部門で対応する
  • 医療安全や個人情報管理の仕組みを組織として整える

開業後に院長がこれらをすべて自分で実行するわけではありません。しかし、誰に任せるのか、どのような体制にするのか、外部へどこまで依頼するのかを決める役割は院長にあります。

3.開業医になると増える判断

勤務医にも、患者さんや診療に対する責任があります。開業医になると、診療上の判断に加えて、クリニック全体に関わる判断も院長が担います。

  • どのような患者さんを支えるのか
  • どの診療を中心にするのか
  • スタッフを何人採用し、何を任せるのか
  • 医療機器やITツールを導入するのか
  • 患者数を増やすのか、先に院内運用を整えるのか
  • 制度改定へどこまで対応するのか
  • どの投資を行い、何を見送るのか

診療、採用、設備、制度対応について、専門家や関係者から情報や助言を得ることはできます。

ただし、それらを踏まえて自院としてどう判断するかは、院長が引き受ける役割です。

開業医になるとは、診療所を持つことだけではありません。

診療と経営の両方を見ながら、自院として判断し、その判断を積み重ねていく立場になることでもあります。

4.勤務医と開業医、それぞれの働き方

4-1.勤務医として専門性や診療に力を注ぐ

  • 専門領域の臨床経験を深める
  • 多職種や他科と連携する
  • 難しい症例や高度医療に関わる
  • 教育、研究、救急、専門外来に携わる

専門性を深め、組織の中で地域医療を支えることを重視するのであれば、勤務医を続けることにも明確な意味があります。

4-2.開業医として医療と運営を設計する

  • 支えたい患者さんや診療内容を決める
  • 予約、問診、会計などの院内運用を整える
  • スタッフを採用し、役割や教育方法を考える
  • 地域の医療機関や介護事業者と連携する
  • 収支を確認し、事業として続けられる状態を整える

自分の考えを診療や運営に反映しやすい一方で、診療だけに集中できるとは限りません。

4-3.開業したいのか、今の環境を変えたいのか

開業を考える理由には、理想の医療、収入、勤務時間、家族との時間、組織の方針や人間関係などがあります。

ただし、「現在の職場を離れたい」という思いと、「院長としてクリニック全体を運営したい」という思いは同じではありません。

転職、勤務形態の変更、非常勤勤務との組み合わせなど、開業以外の選択肢もあります。

5.開業前に整理したい3つの判断軸

5-1.医療:誰に、どのような医療を届けたいか

  • どのような患者さんを支えたいか
  • どのような困りごとに応えたいか
  • 何を診療の中心にするか
  • 地域でどのような役割を担うか
  • 開業しなければ実現できないことか

5-2.組織:どのようなチームと運営をつくるか

  • どの職種を何人採用するか
  • 院長が担う業務と、スタッフへ任せる業務をどう分けるか
  • 教育や振り返りの時間をどう確保するか
  • 院長が不在でも回る仕組みをどうつくるか

5-3.収益:医療を続ける土台をどうつくるか

  • どの診療を収益の柱にするか
  • 患者数の季節変動をどう考えるか
  • 家賃、人件費、医療機器などの固定費をどこまで持つか
  • 借入返済と生活費をどう見込むか

医療・組織・収益は、別々の問題ではありません。

診療方針が変われば、必要なスタッフや設備も変わります。体制が変われば、固定費や必要な患者数も変わります。患者数が増えれば、待ち時間やスタッフ負担、院長の診療負担も変わります。

一つの条件だけで決めず、複数の影響を自院として確認することが必要です。

6.開業前に考えたい「なぜ開業するのか」

先生は、なぜ開業したいのでしょうか。

収入を増やしたい。理想とする医療を実現したい。生活や働き方を見直したい。地域に必要とされるクリニックをつくりたい。

理由は人によって異なり、特定の理由だけが正しいわけではありません。

ただし、今の勤務先がつらい、職場から離れたいという思いだけで開業を決める場合は、慎重に考える必要があります。

開業後には、患者数、資金、スタッフ、院内運用、制度対応など、別の課題に向き合います。

また、人口構成、患者ニーズ、人件費、制度、IT技術など、クリニックを取り巻く環境も変化します。

そのため、開業医になるとは、最初に一度だけ大きな決断をすることではありません。

変化する環境の中で、自院としての判断を引き受け続ける役割になることです。

「なぜ開業するのか」が言葉になっていれば、開業後に迷ったときにも、何を優先するのかを考える判断基準になります。

7.勤務医のうちにできる開業準備

勤務医のうちに、経営の知識をすべて身につける必要はありません。ただし、現在の勤務先がどのような仕組みで診療を支えているかを観察することは、開業後の判断材料になります。

7-1.診療以外の業務を誰が担っているかを見る

受付、会計、レセプト、予約管理、採用、労務、医療安全、物品管理など、日々の診療は多くの業務に支えられています。

業務の存在だけでなく、誰が判断し、誰が実行し、問題が起きたときに誰が対応しているかまで確認すると、開業後に必要な体制を考えやすくなります。

7-2.スタッフの役割と院内運用を観察する

スタッフの人数だけでは、運営の良し悪しは判断できません。業務の分担、情報共有、患者動線、忙しい時間帯、欠員時の対応などを見ることが大切です。

7-3.設備やシステムの導入目的を確認する

医療機器やITツールを見るときは、機能や価格だけでなく、誰が使うのか、どの業務が変わるのか、継続費用はいくらか、実際に運用し続けられるかを確認します。

7-4.続けたいことと変えたいことを分ける

勤務医として経験してきた診療や働き方の中には、開業後も続けたいものと、変えたいものがあります。

「今の職場が嫌だから」だけではなく、何を残し、何を変え、何を新しくつくりたいのかを分けておくと、開業理由や診療方針が整理しやすくなります。

8.開業準備で見落とされやすいこと

8-1.物件や設備から先に決める

診療方針、対象患者、スタッフの動きが曖昧なまま決めると、開業後の運用に合わないことがあります。

8-2.自由な働き方だけを想像する

自分で決められる自由と、自分で決めなければならない責任の両方を確認する必要があります。

8-3.採用すれば自然に組織が回ると考える

役割や業務フローが曖昧であれば、スタッフを採用しても院長が仕事を抱え続けることがあります。

8-4.患者数が増えれば安定すると考える

患者数が増えるほど、待ち時間やスタッフ負担、院長の診療負担が増える場合もあります。患者数だけでなく、受け入れ体制や診療の質も合わせて確認する必要があります。

8-5.相談すれば誰かが決めてくれると考える

専門家から必要な情報や意見を得ることはできます。ただし、提案が正しくても、自院に合うとは限りません。

複数の意見を踏まえて、何を優先し、どの選択肢を採用するかは、院長が判断します。

9.勤務医を続けるか、開業するかを整理する問い

  • なぜ開業したいと考え始めたのか
  • 今の働き方で続けたいこと、変えたいことは何か
  • 開業でなければ実現できないことは何か
  • 診療以外の経営や組織づくりにも関わりたいか
  • 資金、採用、設備、患者対応の判断をどう感じるか
  • 計画どおりに進まないときも判断を続けたいと思えるか
  • 家族、時間、収入、借入との関係をどう考えるか
  • 開業しない場合、今の環境で変えられることは何か

整理する目的は、開業を勧めることでも、止めることでもありません。

開業後に引き受ける役割まで理解したうえで、自分として納得できる次の一歩を定めることです。

開業するかどうか、開業後に何を担うのかを整理しきれないときに

開業したいのか、今の環境を変えたいのか。自分の医療を形にしたいのか、経営や組織づくりまで担いたいのか。

医療、働き方、家族、資金、将来への不安が重なると、何が事実で、何を今判断するべきかを一人では分けにくくなることがあります。

まず具体的な疑問を確認したい方は、開業検討中・準備中Q&Aをご覧ください。

まえやまだ純商店では、現在の状況やこれまでの経緯を伺い、背景、判断する論点、判断基準、選択肢、懸念点、今決めること、次に確認することを整理します。

開業準備から開業後の経営まで、自院として判断理由を持ち、次の行動へ移りやすい状態を整える支援です。

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※状況確認面談は初回のみ無料です。面談では詳細な調査、比較、解決策の提示までは行いません。

相談できる具体的な場面は、クリニック経営で相談できる内容でご確認いただけます。

まえやまだ純商店 前山田純

この記事を書いた人

前山田 純 まえやまだ純商店

2011年から医療機関の開業・経営支援に従事。院長が一人では整理しきれない経営課題について、現状や論点、選択肢を整理し、自院として判断しやすい状態づくりを支援しています。正解をお伝えするのではなく、自院として納得して判断できる状態づくりを大切にしています。

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