2026年改定(答申反映)で生活習慣病管理料はどう変わる?|内科クリニックが押さえる4論点
更新日:2026年2月22日(答申内容を反映)
2026年診療報酬改定は、中医協の答申により、短冊段階よりも具体的に「点数・名称・評価体系」が見える状態になりました。
一方で、算定要件の細部(通知・事務連絡)はこれから示される部分もあります。
そこで本記事では、生活習慣病に関わる内科クリニックの経営判断に直結しやすい論点に絞って整理します。
取り上げるのは、以下の4点です。
- ① 物価高騰への対応(物価対応料)
- ② 人件費(ベースアップ評価料)
- ③ 生活習慣病管理料(運用整理+連携の評価)
- ④ 外来データ提出の再編(=充実管理加算)
生活習慣病管理料の変更点(2026年改定・答申)
答申で示された変更点は、まず次の4つに整理できます。
- 療養計画書:患者署名が不要に
- 管理料(Ⅰ):必要な血液検査等を原則6か月に1回以上
- 眼科・歯科との連携:年1回の連携評価(各60点)が新設
- 外来データ提出:「充実管理加算(30/20/10点)」として再編
これらは「厳格化」というより、生活習慣病外来の運用整理と地域連携を後押しする改定と捉えると、現場の判断が整理しやすくなります。
① 物価高騰への対応|「恒久対応」と「臨時対応」を分けて考える
今回の改定は、物価上昇への対応を「ベースの底上げ(恒久)」と「調整弁(臨時)」の二層で設計している点が重要です。 この二つを混ぜて捉えると、固定費(とくに賃上げ)を積み上げる判断がブレやすくなります。
(1)初診料・再診料の引き上げ:ベース部分の底上げ(恒久的対応)
初診料・再診料は引き上げ方向で整理されており、基本点数(ベース部分)を底上げする設計です。
これは、物価や人件費の上昇を前提にした「土台」の調整、と捉えると位置づけが明確になります。
(2)物価対応料:状況に応じた調整弁(臨時的対応)
それに加えて「物価対応料」が設けられています。
ここは段階設計(令和8年度→令和9年度で増額)が示されており、制度側が物価上昇を強く織り込んでいることが読み取れます。
重要なのは、物価対応料は性格として臨時的な調整弁に近い、という点です。
ある前提で固定費(とくに恒久的な賃上げ)を組み上げる原資として扱うより、変動要素として管理し、意思決定を分けるほうが安全です。
② 人件費(ベースアップ評価料)|「まず賃上げ」→「制度が後から支える」へ
人件費(ベースアップ評価料)については、改定を経て制度のメッセージがより明確になっています。
現場感としては、「まず賃上げを実行し、制度が後追いで支える」という思想に寄ってきた、と整理できます。
制度のメッセージ:未届出(評価料Ⅰ)にも対応を促す
ベースアップ評価料Ⅰの届出が進んでいない医療機関が一定数あることを前提に、未届出医療機関にも対応を促す狙いが見えます。
今回は、「まずⅠを算定して賃上げを行い、それでも足りない場合はⅡを算定して賃上げを支える」という考え方が、制度の前提としてより明確になっています。
対象職員の考え方も「現場実務」に寄った
また、対象職員の考え方も整理されています。
医療に直接従事する職員だけでなく、事務スタッフ等も含めた当該医療機関に勤務する職員を対象として捉えやすい設計になっており、 「誰を上げて、誰を上げないか」という現場の悩みを減らす方向に寄っています。
③ 生活習慣病管理料|運用整理+「連携」を点数で後押しする段階へ
答申を踏まえると、生活習慣病管理料は「強い引き締め」というより、運用を整理しつつ、地域連携を進める方向が中心です。 とくに、現場の実務に影響が出やすいのは次の4点です。
(1)療養計画書:患者署名が不要に
療養計画書は、患者署名が不要となり、紙運用の実務負担を軽くする整理が示されています。
「署名のために待ち時間が延びる」「取りこぼしが起きる」といった現場の摩擦が減り、運用が整理されやすくなります。
(2)管理料(Ⅰ):血液検査等は「原則6か月に1回以上」
管理料(Ⅰ)では、必要な血液検査等を少なくとも6か月に1回行う(原則)という要件が明示されました。
ここは「全員一律に縛る」よりも、説明可能な運用(記録と根拠)が問われるイメージです。
逆に言えば、外来の設計(検査・説明・記録)を整えておくほど、現場のストレスが減ります。
(3)眼科・歯科連携:年1回の連携評価(各60点)
糖尿病の重症化予防等の観点から、眼科・歯科を標榜する医療機関との連携を行う場合の評価として、
眼科医療機関連携強化加算/歯科医療機関連携強化加算(各:年1回に限り60点)が新設されました。
生活習慣病管理を「院内完結」ではなく、地域の連携の中で捉える方向性がより明確になっています。
(4)管理料(Ⅱ):包括から外れる管理料等が出てくる(併算定可)
管理料(Ⅱ)では、生活習慣病と関係のない管理料等を包括範囲から除外し、併算定可能とする整理が示されています。
ここは「制度の知識」より、現場の運用(算定・説明・記録)に直結する論点です。
何が包括で、何が別請求になるかは、通知・疑義解釈で確定していく部分もあるため、最新情報を確認しつつ運用を整えるのが安全です。
④ 外来データ提出|「充実管理加算」へ再編(30/20/10点)
ここが、短冊段階から見え方が大きく変わるポイントです。
答申では、外来データ提出加算は、提出を求めるデータの簡素化等を踏まえつつ、名称と評価体系が見直しとなりました。
ポイントは「提出そのもの」よりも、質の高い生活習慣病管理の実績をどう評価するか、の段階に進むことです。
充実管理加算:加算1〜3(30/20/10点)
充実管理加算は、脂質異常症(高血圧症・糖尿病も同様)について、
加算1:30点/加算2:20点/加算3:10点という体系が示されています。
(※細かな要件は、今後の通知で実務レベルに落ちていきます)
ここは「取れる/取れない」だけでなく、
生活習慣病外来の設計(記録・継続・チーム運用)をどう整えるかとセットで捉えるほうが、無理が出にくい論点です。
たとえば、院長がすべて抱える形だと、記録・継続・説明の負荷が積み上がりやすい。
役割分担(医師・看護師・事務)と、外来の流れ(いつ・誰が・何を記録するか)を言語化しておくと、制度への反応が「場当たり」になりにくくなります。
まとめ|点数の前に「外来の設計」を整える改定
今回の答申から見えてくる方向性は、次の通りです。
- 物価:恒久(ベース引上げ)と臨時(物価対応料)を分けて捉える
- 賃上げ:賃上げを前提に、制度が後追いで支える設計へ
- 生活習慣病管理:運用整理(署名不要・検査要件)+地域連携の評価
- 外来データ提出:提出の“義務化”というより、評価体系の次段階(=充実管理加算)へ
「今すぐ全部対応しなければならない」改定ではありません。
ただ、何を後回しにしてよいか/何は構え始めるべきかを整理していないと、判断を一気に迫られやすい構造になっています。
本記事が、院長先生ご自身の判断軸と外来設計を整える材料になれば幸いです。
参考資料(出典)
厚生労働省:令和8年度診療報酬改定(答申 関連資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655177.pdf
(補助資料)令和8年度診療報酬改定(答申概要/関係資料)
https://www.kyoto.med.or.jp/cms/wp-content/uploads/2026/02/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%98%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A%E3%82%92%E7%AD%94%E7%94%B3.pdf
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