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クリニック開業・経営コラム

2026年改定で生活習慣病管理料はどう変わる?|内科クリニックが押さえる4論点(物価・賃上げ・データ提出)

2026年診療報酬改定に向けて公表された「短冊」には、さまざまな項目が並んでいます。
すべてを一度に理解しようとすると、かえって判断が曖昧になりやすい。
そこで本記事では、生活習慣病に関わる内科クリニックの経営判断に関係しやすい論点に絞って整理します。

取り上げるのは、以下の4点です。

  • ① 物価高騰への対応
  • ② 人件費(ベースアップ評価料)
  • ③ 生活習慣病管理料
  • ⑤ 外来データ提出(データ管理加算)

① 物価高騰への対応|「恒久対応」と「臨時対応」を分けて考える

今回の短冊を読むうえで、まず押さえたい前提は、制度側が「令和8年度よりも令和9年度の方が物価上昇が進む」という見立てで設計を組んでいる点です。

その前提のもと、物価対応は二層構造で整理すると分かりやすくなります。

(1)初診料・再診料の引き上げ:ベース部分の底上げ(恒久的対応)

初診料・再診料は引き上げ方向で整理されており、基本点数(ベース部分)を底上げする設計です。
これは、物価や人件費の上昇を前提にした「土台」の調整、と捉えると位置づけが明確になります。

(2)物価対応料:状況に応じた調整弁(臨時的対応)

それに加えて、新たに「物価対応料」が設けられています。
特徴として、令和9年度は令和8年度の100分の200(=2倍)という設計が示されており、制度側が物価上昇を強く織り込んでいることが読み取れます。

重要なのは、物価対応料は性格として臨時的な調整弁に近い、という点です。
ある前提で固定費(とくに恒久的な賃上げ)を組み上げるための原資として扱うより、変動要素として管理し、意思決定を分けるほうが安全です。


② 人件費(ベースアップ評価料)|「まず賃上げ」→「制度が後から支える」へ

人件費(ベースアップ評価料)については、今回の改定で、制度のメッセージがより明確になっています。

制度のメッセージ:未届出(評価料Ⅰ)にも対応を促す

現時点で、ベースアップ評価料Ⅰを届出している医療機関は全体の約4割とされています。
そのため今回の改定では、未届出医療機関にも対応を促す狙いが明確です。

今回の改定では、ベースアップ評価料Ⅰ・Ⅱについて、
「まずⅠを算定して賃上げを行い、それでも足りない場合はⅡを算定してスタッフの賃上げを支える」
という考え方が、制度の前提として明確になっています。

前回改定が「Ⅰで何とか引き上げてほしい。Ⅱは取れるなら取ってみてほしい」という設計だったのに対し、今回は
「賃上げを前提とし、制度側が後から支える」
という思想に変わっています。

対象職員の考え方も「現場実務」に寄った

また、対象職員の考え方も整理されています。
医療に直接従事する職員だけでなく、事務スタッフ等も含めた当該医療機関に勤務する職員を対象として捉えやすい設計になっており、 「誰を上げて、誰を上げないか」という現場の悩みを減らす方向に寄っています。


③ 生活習慣病管理料|厳格化というより「運用整理」と「地域連携の後押し」

生活習慣病管理料は、強い引き締めというより、運用整理と連携の促進が中心に見えます。

(1)管理料Ⅰ:検査要件は「原則」を明示

原則として、6か月に1回以上の検査、という整理が示されています。
一方で「原則として」という表現が用いられており、状態が安定している患者の運用まで一律に縛る設計ではなく、一定の運用余地を残した整理と捉えるのが現実的です。

(2)療養計画書:事務負担の軽減へ

療養計画書については、患者署名が不要となる整理が示され、紙運用の実務負担を軽くする方向性が見えます。

(3)眼科・歯科との連携:点数で後押しする段階へ

さらに、眼科・歯科との連携を評価する加算が新設される整理が示されています。
生活習慣病管理を「院内完結」ではなく、地域の連携の中で捉える方向性がより明確になっています。


⑤ 外来データ提出(データ管理加算)|DXを急がせる改定ではなく「評価の次段階」

今回のデータ提出に関する見直しは、DX対応を一気に迫るものというより、
「出しているデータを、どう評価するか」を次の段階に進めた改定、と整理できます。

今すぐ義務ではないが、前提条件として近づいている

現時点で「今すぐ対応しなければならない義務」として書かれているものではありません。
ただし、国としてはデータ管理加算を活用する方向に舵を切っており、将来的に避けられない前提条件として静かに近づいてきています。

だからこそ、ここは「算定の是非」だけでなく、
生活習慣病外来の設計(記録・継続・チーム運用)とセットで捉えておくと、無理のない形で整えやすくなります。


まとめ|「今すぐ全部」ではないが、判断の先送りが難しくなる

今回の短冊から見えてくる方向性は、次の通りです。

  • 物価・賃上げ:一定程度支える(ただし「恒久」と「臨時」を分けて捉える)
  • 人件費:賃上げを前提に、制度が後追いで支える設計へ
  • 生活習慣病管理:運用整理と、地域連携の後押し
  • データ提出:義務化ではなく、評価を次段階へ進める

「今すぐ全部対応しなければならない」改定ではありません。
ただ、何を後回しにしてよいか/何は構え始めるべきかを整理していないと、数年後に判断を一気に迫られやすい構造になっています。

本記事が、院長先生ご自身の判断軸を整える材料になれば幸いです。


参考資料(出典)

厚生労働省:令和8年度診療報酬改定(短冊)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf

本記事で扱った該当箇所

  • 物価:2ページ〜12ページ
  • 人件費:17ページ〜34ページ
  • 生活習慣病:274ページ〜278ページ
  • データ提出:488ページ〜491ページ

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