開業や経営の“もやもや”を整理し、納得して進むために。 ――医師の考えに伴走する、対話型の経営支援。

クリニック開業・経営コラム

神経内科経営シリーズ 第3回|地域連携の考え方──“紹介される”から“つながる”神経内科へ


神経内科の診療は、医師ひとりで完結するものではありません。
患者さんの生活や回復を支えるには、病院・クリニック・介護・リハビリ・家族など、さまざまな人との関わりが欠かせません。
だからこそ、開業を考える段階から「どのように地域とつながるか」を見据えることが、持続可能な経営の第一歩になります。
これは患者さんのためだけでなく、神経内科クリニックの経営を安定させるうえでも重要な視点です。




「専門性」と「わかりやすさ」を両立する神経内科クリニックへ


神経内科は、脳や神経の病気を扱う専門性の高い診療科です。
しかし一般の方にとっては「何を診てもらえる科なのか」が見えづらく、他の診療科よりも受診のハードルが高く感じられることがあります。


だからこそ、地域での連携づくりの第一歩は、“神経内科とは何をする科か”を誰にでも伝わる言葉で説明することです。
それは単なる情報発信ではなく、地域の人たちが「安心して相談できる」土壌をつくる取り組みでもあります。


たとえば、近隣の内科・整形外科・介護施設・薬局などが「神経内科なら○○先生のところへ」と自然に声をかけてくれるようになると、
患者さんは迷わずに動けます。こうした“地域の理解”こそが、診療の質と受診の適正化を両立させる基盤です。




「紹介・逆紹介」から「想いと情報の共有」へ


地域連携という言葉には、「紹介・逆紹介」のイメージが根強くあります。
しかし本来の連携とは、患者さんを通じて、医療者同士が想いと情報を共有することです。



  • どの段階まで治療し、どの時点で紹介元へ戻すかを明確に共有する

  • 退院後や通院中の経過を、簡潔な報告書で伝える

  • 介護・リハ職種にも理解できる言葉で共有する


そしてもう一つ重要なのは、地域住民への情報共有です。
医師だけでなく、看護師やケアマネジャー、薬剤師が同じ言葉で説明できるようになると、神経内科の受診ハードルは確実に下がります。


地域連携の本質は、“紹介件数”を増やすことではなく、患者さんを中心にした「信頼の循環」を育てることにあります。




神経内科が地域で担う3つの役割


神経内科が地域の中で果たせる役割は、大きく3つに整理できます。



  1. “つなぐ”役割:脳外科や整形外科で急性期治療を終えた患者さんを、地域で支える受け皿になる。

  2. “支える”役割:認知症・パーキンソン病・頭痛など、長く関わる患者さんと家族を見守る存在になる。

  3. “整理する”役割:原因を見極め、適切な専門医や施設へ導く“最初の相談窓口”として機能する。


とくに神経内科は、「どんな人が対象か」が曖昧に受け取られやすい診療科です。
だからこそ、他職種と協力しながら「こんなときに相談していい」「早めに受診すると生活が守られる」という理解を地域に広げていくことが、結果的に患者さんの早期受診と生活の質向上につながります。




信頼を育てる“小さな習慣”


地域連携は、大きな会議や制度設計からではなく、日々の小さな行動の積み重ねから始まります。



  • 報告書を“患者さんにも伝わる言葉”で書く

  • 紹介元へ「その後の経過」をひとこと添える

  • ケアマネジャーや訪問看護師と顔を合わせて話す機会を持つ


このような小さな往復が重なると、「紹介のやりとり」から「信頼のやりとり」へと変化していきます。
信頼の循環が生まれると、患者さんの流れも安定し、地域に欠かせないクリニックへと育っていきます。




地域連携は“経営の土台”


地域との関係づくりは、社会貢献のためだけではありません。
患者さんの生活が地域の多職種に支えられている以上、連携の質そのものが経営の安定を左右します。



  • 他院との連携が増えると、診療の幅と深みが広がる

  • 介護・リハとの接点が増えると、継続診療が生まれる

  • 地域発信を続けることで、口コミと信頼が育つ


神経内科における「地域連携」は、経営の副次的活動ではなく、診療と経営をつなぐ“軸”です。
この信頼の循環を意識して連携を育てていくほど、地域住民の理解が深まり、先生方の医療の価値も広がっていきます。




まとめ|“支える医療”を地域に広げる


神経内科は、“治す医療”と“支える医療”の両方を担う診療科です。
その価値を地域に伝えていくのは、医師ひとりの努力ではなく、地域全体の理解と協力によって実現します。


神経内科が「難しそうな専門科」から「地域にとって身近な相談先」へ──。
その変化をつくる第一歩が、“紹介される”ではなく“つながる”地域連携です。


次回は、“支える医療”をさらに深め、慢性期診療を支える仕組み(認知症・パーキンソン病・頭痛外来など)の設計について考えます。








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