泌尿器科クリニック経営シリーズ 第3回 慢性期診療は“安定した経営の柱”
                はじめに
泌尿器科クリニックの経営において、急性期対応は新規患者との接点を得る上で重要な機会です。しかし、経営を安定させる上で欠かせないのは、そこから続く慢性期診療の設計です。
前立腺疾患や過活動膀胱、慢性腎臓病(CKD)、がん術後の経過観察など、長期的な診療が必要となる領域は多岐にわたります。これらの患者さんに適切なフォローを提供し続けることが、経営のベースラインを形成する柱になります。
慢性期診療が持つ経営的意義
- 再診率の高さ: 慢性疾患は性質上、継続通院が前提となるため、自然に再診率が高まります。
 - 収益の安定化: 再診料・処方料・定期検査料の積み重ねが毎月の売上を支える安定収益源となり、急性期の波を吸収します。
 - 検査・処方の継続性: 尿検査、残尿測定、エコーなどは診療の質を高めると同時に、単価の安定化に寄与します。
 - 関係性の深化: 定期通院の中で、家族の健康相談などにも広がり、クリニック全体の信頼醸成につながります。
 
主な領域と収益モデル
前立腺肥大症(BPH)
薬物療法をベースにした長期処方。定期的にIPSS(症状スコア)を提示し、改善度を共有することで再診率を維持。
過活動膀胱(OAB)・尿失禁
高齢女性に多い領域。羞恥心が受診継続の壁になりやすいため、プライバシー配慮を前提に、薬物療法+生活指導で継続率を高める。
慢性腎臓病(CKD)
糖尿病・高血圧など生活習慣病と密接。内科からの紹介が期待でき、定期血液検査を組み込むことで診療単価を安定化。
がん術後フォロー
大病院からの逆紹介患者を地域で身近にフォロー。診察・投薬・検査の組み合わせが安定収益に結びつく。
継続診療を経営資産に変える工夫
- 予約システム: リコール機能でキャンセル・脱落を防止し、再診率を維持。
 - “見える化”: IPSSや検査結果をグラフ化して提示し、患者の納得感を高めて通院継続につなげる。
 - スタッフ説明力: 看護師・事務がスコアや検査意義を説明できる体制で、医師の負担を軽減し診療効率化。
 - 地域連携: 悪化時は病院へ、安定時はクリニックで管理――紹介・逆紹介の循環を明確化。
 
経営指標(KPI)
- 再診率: 慢性期移行後の1年継続率をモニタリング。
 - 検査実施率: エコー・尿検査・残尿測定などの実施割合。
 - 処方継続率: 特にBPH・OAB薬の6か月以上の継続率。
 - 患者単価の安定性: 急性期のみの患者との比較でベースラインを可視化。
 
これらを定点観測し、診療フローを改善することで、経営の持続性が高まります。
まとめ
慢性期診療は、泌尿器科クリニックにおける「安定した経営の柱」です。急性期で新規患者と接点を持ち、慢性期へ移行して継続診療を設計できれば、再診率と収益が安定し、地域に根差した持続可能な体制が整います。
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