スタッフが辞めそうなとき、院長はどう声をかける?|決めつける前に確認したいこと
スタッフの会話や報告が減り、仕事への関わり方が以前と違うように見えると、院長は「辞めるつもりなのではないか」と不安になることがあります。
少人数で運営するクリニックでは、一人の退職が診療やシフトに影響するため、早く確認したいと考えるのは自然なことです。
ただし、様子の変化だけで退職と決めつけると、本人を問い詰めるような関わりになり、かえって話しにくい状況をつくることがあります。この記事では、本人へ声をかける前に確認したいことと、話しやすい聞き方を整理します。
院長からの経営相談
最近、あるスタッフの会話や報告が減り、仕事への関わり方も以前と違うように感じます。
退職を考えているのではないかと心配ですが、本人に直接「辞めるつもりなのか」と聞いてもよいのでしょうか。
※この記事は、これまでの医療機関の開業・経営支援で伺った相談や経験をもとに、個人や医療機関が特定されないよう内容を一般化し、一部を再構成しています。
「辞めるつもりか」を確認する前に、院長が気づいた変化、最近の業務や役割の変化、院長自身が不安に感じていることを分けて確認しましょう。
スタッフの変化には、退職意向だけでなく、体調、家庭事情、疲労、業務負担、人間関係など、さまざまな背景が考えられます。
本人へ声をかけるときも、退職の結論を求めるのではなく、仕事の中で負担になっていることや、話しにくいことがないかを確認するところから始めます。
スタッフの変化だけで、退職とは判断できません
スタッフの様子が以前と違うと感じても、その背景が退職意向とは限りません。
たとえば、次のような事情が影響している可能性があります。
- 本人や家族の体調に不安がある
- 家庭や生活環境に変化があった
- 忙しい時期が続き、疲労がたまっている
- 業務量や役割に負担を感じている
- スタッフ間の関係に悩んでいる
- 院長や周囲に話しにくいことがある
- 転職や退職を検討している
会話が減った、表情が硬い、シフト変更への協力が減ったという様子だけで、本人の考えを判断することはできません。
大切なのは、退職のサインを当てることではなく、普段との違いに気づいたときに、決めつけずに状況を確認することです。
確認できている事実と、院長の推測を分ける
院長の不安が強いほど、本人の言動を退職と結びつけて見てしまうことがあります。「実際に起きている変化」と「退職するかもしれないという予測」を分けて考えます。
本人へ声をかける前に確認したい3つのこと
1.いつから、どのような変化があったのか
「最近、様子がおかしい」と感じても、その内容が曖昧なままでは、本人への聞き方も曖昧になります。
まず、院長が気づいた変化を具体的に確認します。
- 以前より会話や報告が減った
- 特定の業務を避けるようになった
- 遅刻や欠勤が増えた
- 仕事中の表情や反応が変わった
- 勤務時間やシフトに関する相談が増えた
一度だけ起きたことなのか、同じような変化が続いているのかも確認します。
2.最近、業務や院内の状況に変化がなかったか
本人の様子だけでなく、クリニック側で起きている変化も振り返ります。
- 患者数や電話対応が増えていないか
- 欠勤者や退職者の業務を引き受けていないか
- 新しい制度やシステムへの対応が増えていないか
- 新人教育を特定のスタッフが抱えていないか
- 業務や役割が一部のスタッフに偏っていないか
- 院長の方針や優先順位が現場へ伝わっているか
たとえば、受付スタッフの報告が減ったように見えても、電話対応の増加、新人教育、システム変更が同時に重なっている場合があります。
本人の意欲や性格の問題として扱う前に、最近増えた業務と役割の偏りを確認する必要があります。
3.院長自身の不安と事実が混ざっていないか
少人数のクリニックでは、一人が退職すると診療体制やシフトに影響します。そのため、「辞められたら困る」という不安から、早く結論を知りたくなるのは当然です。
ただ、その不安のまま本人へ確認すると、次のような聞き方になりやすくなります。
- 辞めるつもりなのか
- 何か不満があるのか
- 誰かと揉めているのか
- 条件を変えれば残るのか
これらは、本人に回答を迫っているように感じられる場合があります。
本人へ声をかける前に書き出したいこと
- 確認できている変化は何か
- 院長の推測が混ざっていないか
- 最近、業務や役割に変化がなかったか
- 本人に何を確認したいのか
- まず何を話せる場にしたいのか
退職を前提にせず、本人が話しやすい形で声をかける
スタッフへ声をかけるときは、「退職するかどうか」を確認することから始める必要はありません。
院長が気づいた様子を穏やかに伝え、仕事で負担になっていることがないかを確認します。
声のかけ方の例
「最近、少し忙しそうに見えます。仕事の中で負担になっていることはありませんか」
「私の見方が違っていたら申し訳ないのですが、最近少し負担が大きそうに見えています。話しておきたいことはありませんか」
「今の業務量や役割について、やりにくくなっているところはありませんか」
診療中や他のスタッフがいる場所で突然聞くのではなく、落ち着いて話せる時間と場所を確保することも大切です。
本人の話を聞くときに意識したいこと
- 途中で結論を出さず、まず最後まで聞く
- すぐに待遇変更や解決策を提示しない
- 本人の感じ方を否定しない
- 誰が悪いかを確認する場にしない
- その場ですべて決めようとしない
一方で、本人の希望をすべて受け入れなければならないわけでもありません。
まず本人が感じていることを聞き、その後に、医院として対応できること、対応が難しいこと、ほかのスタッフや診療体制への影響を分けて考えます。
スタッフが辞めそうなときに避けたい対応
- 他のスタッフへ先に確認する:噂が広がり、本人との信頼関係を損なう可能性があります。
- 「辞めるつもりなのか」と問い詰める:本来話したかった負担や悩みを話しにくくします。
- すぐ待遇変更を提示する:背景が分からないまま条件を変えても、問題が解決するとは限りません。
- 意欲や性格の問題と決めつける:役割の曖昧さや業務負担の偏りが背景にある場合があります。
- その場で引き止めようとする:本人の事情や医院への影響を確認する前に結論を急ぐことになります。
院長が守るべきものは、退職を何としても防ぐことだけではありません。
本人が話しやすい関係、残るスタッフの安心、診療を続けられる体制を守ることも、同じように大切です。
退職の意向が示された後は、別の判断が必要です
本人と話した結果、実際に退職を考えていることが分かる場合もあります。
その段階では、声のかけ方だけでなく、次の内容を分けて考える必要があります。
- 本人への対応と退職時期
- 現在の人数で診療を続けられるか
- 残るスタッフへ何を、いつ伝えるか
- すぐ採用するのか、業務や役割を見直すのか
これは、退職前の違和感へ対応する段階とは別の経営判断です。
退職理由や、次の採用・定着に向けて見直したいことは、関連記事で詳しく解説しています。
※退職時期、雇用契約、就業規則、ハラスメントなど、労務上の判断が必要な場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家へご確認ください。
まとめ|退職を見抜くより、確認する順番が大切です
スタッフの会話や報告が減り、様子が以前と違うように感じても、それだけで退職を考えているとは判断できません。
大切なのは、次の順序で向き合うことです。
- 確認できている事実と院長の推測を分ける
- 最近の業務や役割の変化を振り返る
- 退職を前提にせず、本人が話しやすい形で声をかける
- 本人の話を聞いてから、医院として対応できることを考える
- 退職意向が示された後の体制や採用は、別の論点として考える
退職を防げたかどうかだけで、院長の対応の良し悪しが決まるわけではありません。
本人に誠実に向き合い、残るスタッフと診療体制を守るために、何を確認し、どの順番で考えるか。
その判断の土台を整えることが、院長にできる大切な対応です。
スタッフへの対応と、その後の診療体制を整理したいときに
スタッフの変化には、本人の事情、業務量、役割分担、人間関係、診療体制への影響など、複数の問題が重なっていることがあります。
本人へどう声をかけるかだけでなく、何を確認するのか、医院として対応できることは何か、残るスタッフへどのように説明するのかを分けて考える必要が生じる場合もあります。
まえやまだ純商店では、確認できている事実、本人や関係者へ確認すること、自院として判断する論点、今決めることと後で決めることを整理します。
そのうえで、院長ご自身が判断理由を持ち、自院として次の一手を決めやすい状態を整えます。
まずは状況確認面談(無料)から
現在気になっていることや、これまでの経緯を伺い、何を整理する必要がありそうか、まえやまだ純商店の支援がお役に立てそうかを双方で確認します。
状況確認面談は、無料で答えや解決策を提示する場ではありません。
具体的な論点整理や対応方針の検討は、有料の経営相談で行います。その場で契約を決めていただく必要はありません。
※状況確認面談は初回のみ無料で、原則オンライン・30〜60分程度です。
※退職交渉、労務上の専門判断、採用代行、窓口代行を行うサービスではありません。
