クリニック採用で「自院に合う人」をどう考える?|採用基準の整理方法
更新日:2026年8月10日
「どのような人に来てほしいのか、うまく言葉にできない」
「面接しても、何を基準に採用するか迷ってしまう」
クリニックの採用では、経験年数や資格だけでなく、自院の仕事の進め方や患者さんへの向き合い方との相性も考える必要があります。
そこで、理想の人物像をゼロから作るのではなく、過去の採用・現在長く働いているスタッフ・実際の業務から採用基準を整理してみます。
この記事では、「自院に合う人」を感覚だけで決めず、院長自身が採用理由を持てる状態にするための考え方を整理します。
採用基準が曖昧だと何が起きるのか
求人票で「明るい方」「やる気のある方」「協調性のある方」と書くことがあります。
これらの表現が間違っているわけではありません。しかし、院長自身がその言葉を具体的に説明できなければ、面接でも判断基準が曖昧になります。
例えば「協調性がある人」といっても、自院で必要なのは、
- 忙しいときに周囲へ声をかけられること
- 判断に迷ったら早めに相談できること
- 必要な情報をほかのスタッフへ共有できること
かもしれません。
採用基準は「どんな性格の人が好きか」ではなく、自院でどのような働き方や行動を大切にするかを整理するものです。
「自院に合わない人」から考えることも一つの方法ですが、応募者を排除することが目的ではありません。
自院ではどのような場面で行き違いが起こりやすいのかを確認し、採用する側の説明や院内運用も含めて見直すために使います。
過去の採用・退職から振り返る
以前の採用で働きづらさや早期退職が生じた場合、その経験には次の採用基準を考える手掛かりがあります。
ただし、「本人の能力が足りなかった」で終わらせず、双方の認識にどのような違いがあったのかを見ます。
- どの業務で負担や行き違いが生まれたか
- 自院が期待した役割を採用時に説明していたか
- 本人が想定していた仕事内容と違いはなかったか
- 相談先や判断範囲を伝えていたか
- 教育や役割分担にも改善できる点はなかったか
例えば「積極性がなかった」という印象も、そのまま採用基準には使いにくい言葉です。
実際には、
- 忙しいときに周囲へ確認してほしかった
- 分からない状態で抱え込まず相談してほしかった
- 患者さんを待たせそうなときに声をかけてほしかった
という行動を期待していたのかもしれません。
このように、過去の出来事を具体的な行動へ置き換えることで、次の採用に使える基準になります。
長く働くスタッフの行動を見る
退職した人だけでなく、現在長く働いているスタッフにも、自院に合う働き方を考えるヒントがあります。
例えば、
- 患者さんの変化に気づいたとき、必要な人へ伝えている
- 診療が立て込んだとき、周囲の状況を確認している
- 判断に迷ったとき、早めに相談している
- 業務変更の理由を確認しながら対応している
- 必要な情報をスタッフ間で共有している
といった行動です。
資格や経験年数だけでは測りにくい部分ですが、少人数で運営するクリニックでは、日々の業務を安定させるうえで重要になることがあります。
「長く働ける理由」を自院側からも見る
長く働いている理由を本人の性格や努力だけに求めないことも大切です。
- 勤務時間が生活と合っている
- 役割が明確になっている
- 相談できる相手がいる
- 無理な業務集中が起きにくい
など、自院側の環境が合っていることも考えられます。
採用基準は応募者だけを評価するためではなく、自院が求める働き方を支えられる環境になっているかを確認する基準でもあります。
人物像ではなく、行動として採用基準にする
過去と現在を振り返ったら、「明るい人」「気が利く人」といった人物像ではなく、実際の業務で必要になる行動へ変換します。
例えば、受付や電話対応を担ってもらう場合であれば、
- 患者さんの話を聞き、要点を確認できる
- 自分で判断できない内容を適切な人へつなげられる
- 伝えた内容を院内で共有できる
というように整理できます。
診療が立て込むクリニックであれば、
- 業務が重なったときに優先順位を確認できる
- 一人で抱え込まず応援を求められる
- 急いでいても必要な確認を省略しない
といった行動が基準になるかもしれません。
一方で、必要以上に多くの役割を一人へ求めていないかも確認します。
- 何を任せるのか
- どこまで本人が判断するのか
- 困ったとき誰へ相談するのか
- 何を入職後に教えるのか
採用基準を厳しくすることが目的ではなく、自院が求める役割と、受け入れ側が提供できる環境を合わせることが重要です。
求人票・面接・入職後へつなげる
採用基準を整理したら、求人票・面接・入職後の説明で一貫して使います。
求人票
「協調性のある方」とだけ書くのではなく、実際の働き方として伝えます。
- 診療が立て込んだときは職種を超えて声をかけ合う
- 判断に迷ったときは早めに相談する
- 患者さんへの説明内容をスタッフ間で共有する
求人票を書く前の採用目的・役割の整理については、クリニックの求人票を書く前に整理したいことで詳しく扱っています。
面接
面接では「協調性がありますか」と聞くだけでなく、過去の具体的な行動を確認します。
採用側が応募者を一方的に評価するのではなく、自院の働き方や期待する役割も伝え、双方で認識の違いがないかを確認します。
面接の進め方については、お互いを確認する面接へ|面接で何を確認し、何を伝えるかも参考にしてください。
入職後
採用基準は、採用した時点で役割を終えるわけではありません。
なぜ採用したのか、どのような役割を期待しているのか、困ったときに誰へ相談するのかを入職後にも共有します。
採用後に振り返り、次の採用へつなげる
採用活動は、入職が決まった時点で終わりではありません。
実際に働き始めた後に、採用時の想定と現実を振り返ることで、次の採用基準を見直せます。
- 期待した役割を実際に担えているか
- 本人が想定した働き方との違いはなかったか
- 面接で確認できなかったことは何か
- 求人票や入職時の説明で不足した情報はなかったか
- 教育方法や相談体制に改善できる点はないか
長く働いている場合も、「良い人を採用できた」で終わらせず、なぜ自院で無理なく働けているのかを確認します。
診療内容、患者数、スタッフ構成や役割分担が変われば、必要な採用基準も変わります。
採用基準は一度完成させるものではなく、採用・教育・定着を振り返りながら、自院の現在に合わせて見直すものと考えます。
まとめ|「自院に合う人」を、実際の働き方から考える
「自院に合う人」を考えるとき、理想の人物像から始める必要はありません。
- 過去に働きづらさが生じた場面を振り返る
- 長く働いているスタッフの行動を見る
- 自院で大切にしたい働き方を具体化する
- 求人票・面接・入職後の説明へ反映する
- 採用後の結果から基準を見直す
この順番で整理すると、「なんとなく良さそうだから採用する」ではなく、院長自身が採用する理由を持ちやすくなります。
採用基準を作る目的は応募者を選別することではなく、自院と応募者の双方が、無理なく一緒に働けそうかを確認できる状態をつくることです。
採用や院内運用について、一人で整理しきれないときに
採用では、任せたい役割、求める働き方、既存スタッフとの役割分担、教育体制など、複数の論点が重なることがあります。
まえやまだ純商店では、現在の状況や背景、論点、判断基準、考えられる選択肢を整理し、院長ご自身が自院として次の一手を判断しやすい状態づくりを支援しています。
経営相談の内容・進め方を見る※状況確認面談は初回のみ無料、原則オンラインで30〜60分程度です。
※その場で答えや具体的な解決策を提示する面談ではありません。
