はじめに
クリニック経営において、医療機器の導入は診療の質や患者さんの満足度に直結する重要な投資です。多額の資金を要するため、慎重な判断が欠かせません。 かつては価格提示に幅があり見積もり交渉が常態化していましたが、近年は医師コミュニティやインターネットの普及で相場感が共有され、メーカー・卸も安易な提示がしづらい状況です。 こうした変化の中で、医師はどのような視点を持つべきでしょうか。
医療機器の「定価」と実勢価格
医療機器には定価がありますが、あくまで参考値にすぎません。
価格が変動する主な要因は次のとおりです。
- 複数社による競争の有無
- 導入台数や将来の追加導入見込み
- 地域シェア拡大を狙うメーカー側の戦略
つまり交渉の進め方と条件設定次第で、導入コストは大きく抑えられます。
1. 価格以外の価値を重視する
本体価格だけでなく、次のようなトータルコストを必ず確認しましょう。
- 保守・メンテナンス体制
- ソフトウェア更新・サポート期間
- 消耗品やランニングコスト
安さだけを追うと、保守不十分や消耗品でのコスト回収により、かえって経営リスクとなる場合があります。
2. 診療方針との整合性
導入機器が自院の診療方針・患者層に合っているかを見極めます。高齢者が多い地域では「操作性」「検査時間の短縮」が重要ですし、新たな診療領域を広げたいなら「診療の幅が広がるか」を評価軸に。 また、スタッフが無理なく運用できるかも重要です。
3. 信頼関係を重視した交渉
メーカー・卸業者との関係は長期に及びます。単発の値下げに終始せず、複数見積もりを比較しつつ、誠実で現実的な価格を引き出す「関係づくり」を重視しましょう。
導入後に大切な「説明の工夫」
高額機器を導入しても、その価値を患者さんにどう伝えるかが極めて重要です。中学生にも理解できる言葉で説明できるよう、院内で表現を統一しましょう。例えば——
- 心エコー・ホルター心電図
「心臓の動きやリズムを調べ、負担や不整脈の兆しを早めに見つけます」 - 骨密度測定装置(DEXA/QUS)
「骨の強さを数値で測り、折れやすくなっていないかを確認します」 - 睡眠時無呼吸検査装置(簡易PSG)
「眠っている間の呼吸の止まりや酸素の状態を調べます」
専門用語を避けた説明をスタッフ全員で共有できていれば、患者さんの安心感が高まり、再診率や満足度の向上につながります。
まとめ
- 定価は参考値。実勢価格は交渉と条件で大きく変わる
- 価格だけでなく、保守・サポートを含めた総コストで判断する
- 自院の診療方針・患者層・運用体制と合致しているか確認する
- 導入後は誰でもわかる説明を院内で統一し、価値を伝える
これらを一人で進めるのは容易ではありません。外部の専門家が「横で一緒に考える存在」として加わることで、より現実的で無理のない判断が可能になるケースもあります。私たちも、先生の方針を尊重しながら安心して診療に専念できるよう、伴走型の支援を大切にしています。
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