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クリニック開業・経営コラム

電子的診療情報連携体制整備加算|加算3・2・1の違いと、自院でどこまで対応するか

本記事は、2026年6月時点で公表されている情報をもとに整理しています。実際の算定や届出では、最新情報および管轄する地方厚生局の案内をご確認ください。

2026年6月の診療報酬改定を踏まえて、これまでの医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算が見直され、医療DX関連の評価が電子的診療情報連携体制整備加算として再編されました。

クリニックとしては、単に名称が変わったと捉えるだけでなく、「加算1・加算2・加算3のどれを目指すのか」「自院ではどこまでシステム対応を進めるのか」「患者説明や受付運用をどう整えるのか」を整理しておきたい局面になっています。

本記事では、電子的診療情報連携体制整備加算の全体像、加算1・2・3の違い、届出や運用上の注意点に加え、この加算が新設された背景と、これから求められるクリニック経営の考え方を整理します。

この記事で整理すること

  • 電子的診療情報連携体制整備加算が新設された背景
  • 加算1・加算2・加算3の違い
  • マイナ保険証利用率30%以上などの共通要件
  • 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス等の確認ポイント
  • クリニック側・患者側のメリットと注意点
  • 制度対応を経営判断としてどう考えるか

1.なぜ電子的診療情報連携体制整備加算が新設されたのか

電子的診療情報連携体制整備加算は、単に加算の名称を変更したものではありません。

これまで評価されてきた医療情報取得加算や医療DX推進体制整備加算などを再編し、オンライン資格確認やマイナ保険証の活用に加えて、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、地域医療情報ネットワークなどを活用した診療情報の連携を、より明確に評価する仕組みとして整理されたものです。

背景には、医療機関ごとに情報が分断されやすい状況を改善し、患者の薬剤情報、健診情報、診療情報などを必要な場面で確認しやすくする狙いがあります。

つまり、この加算は「点数が付く制度」というだけではなく、国が進める医療DXの流れの中で、クリニックにも一段上の情報連携体制を求める制度と捉えると理解しやすくなります。

制度創設の背景として押さえたいこと

  • 医療情報取得加算や医療DX推進体制整備加算などの再編
  • オンライン資格確認やマイナ保険証活用の定着
  • 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等の活用促進
  • 医療機関間での診療情報共有を進める方向性
  • 制度対応だけでなく、院内運用・患者説明・システム整備まで含めた対応が必要になること

2.まず整理しておきたい全体像

今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すかどうかを決めるより、まず自院がどの段階にいるかを確認する方が整理しやすくなります。

区分 初診時 位置づけ 確認したいこと
加算3 4点 基本対応 まず土台となる体制を満たせるか
加算2 9点 追加対応 電子処方箋等を含めて一段上を目指せるか
加算1 15点 高度対応 複数の高度な要件を全て満たせるか

※加算1・2・3の区分があるのは初診時です。再診時は区分にかかわらず、全区分共通で月1回2点の算定となります。

点数だけを見ると加算1を目指したくなるかもしれませんが、実際には電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等、マイナ保険証利用率、受付での患者説明、スタッフの運用負荷まで含めて確認する必要があります。

3.全区分に共通する基本要件

加算3・2・1の違いを見る前に、まず全区分に共通する基本要件を確認しておく必要があります。

オンライン請求、オンライン資格確認、明細書の無償交付、院内掲示・ホームページ掲載などは、基本となる対応です。

また、健康相談体制については、単なる一般的な相談体制ではなく、マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制として整理しておく必要があります。

マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけの要件ではありません。加算3・加算2・加算1に共通する重要な前提です。

※マイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。実際の判定や取扱いは、最新の通知・疑義解釈および地方厚生局の案内をご確認ください。

4.まず現在地を確認しやすい「加算3」

まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックでは、加算3から現在地を確認する流れが考えやすいかもしれません。

加算3から確認しやすいクリニックの例

  • まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
  • 紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
  • 電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
  • まず算定できる区分を安定して押さえたい

加算3は、医療DXに関する基本的な体制を整える出発点として考えやすい区分です。ただし、基本対応とはいえ、マイナ保険証利用率や院内掲示・ホームページ掲載など、継続的に確認すべき項目があります。

5.一段上の対応として考える「加算2」

加算2は、加算3の基本対応を整えたうえで、さらに一段上の対応を検討する区分です。

加算2では、共通要件に加えて、電子処方箋の発行体制、指定要件を満たす電子カルテの導入、電子カルテ情報共有サービス等の活用体制のうち、いずれかを満たす必要があります。

ここで注意したいのは、加算2は「すべてを満たす」区分ではなく、追加要件のうちいずれかを満たすことで検討できる区分だという点です。

電子処方箋については、経過措置で先送りできる要件ではありません。

加算2・加算1で電子処方箋を要件として見る場合、以前の医療DX推進体制整備加算で設けられていたような経過措置ではなく、実際に電子処方箋を発行できる体制が必要になります。

ただし、当面の間は、院内で処方を行う全ての医師が電子処方箋を発行できる必要まではなく、常勤医師2名以上、常勤医師が1名のみのクリニックでは1名以上が電子処方箋を発行できればよいとされています。

電子カルテ情報共有サービス等については、電子カルテ情報共有サービスそのものだけでなく、地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有または閲覧できる地域医療情報ネットワークの活用も選択肢になります。

地域医療情報ネットワークを活用する場合の注意点

地域医療情報ネットワークに参加しているだけではなく、実際に患者の診療情報を閲覧または共有している運用実績が求められます。

2026年5月29日の疑義解釈では、少なくとも概ね2月に1回以上は、診療情報の閲覧または共有を行うことが示されました。

また、ネットワークに加入した月から3か月後までは猶予があります。2026年5月31日までに加入していた医療機関については、2026年6月1日から9月30日までが猶予期間とされています。

そのため、単に「ネットワークに参加しているか」だけでなく、実際にどの患者情報をどのように閲覧・共有するのか、院内で運用を確認しておく必要があります。

電子カルテ情報共有サービス等に関する経過措置

電子カルテ情報共有サービスに係る要件については、当面の間、経過措置として基準を満たしているものとみなされます。

ただし、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するよう努めることが求められます。

現時点で未対応だから対象外と切り離すのではなく、自院の電子カルテメーカーやレセコンベンダーの対応予定を確認しておくことが重要です。

6.加算1は「全て満たせるか」で考える

加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては「最上位だから目指す」というより、点数差だけでなく、自院の今後の方向性に合っているかで考えたい区分です。

特に注意したいのは、加算2では追加要件のうち「いずれか」を満たす整理であるのに対し、加算1では高度な要件を全て満たす必要がある点です。

加算1で確認したい主な要件

  • 電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を登録できる体制がある
  • 電子カルテ要件を満たしている
  • 電子カルテ情報共有サービス等を活用できる体制がある
  • マイナ保険証利用率30%以上を満たしている

加算1の電子カルテ要件は、単に「ガイドライン準拠電子カルテ、または認証電子カルテ」とだけ理解すると、実務上の確認がやや曖昧になります。

制度上は、主に次のいずれかを満たす構造として整理しておく必要があります。

加算1における電子カルテ要件の考え方

  • A:安全管理ガイドライン等に準拠し、電子処方箋の接続インターフェースと電子カルテ情報共有サービスの接続インターフェースを有する電子カルテ
  • B:厚生労働省が認証する電子カルテ製品

ただし、2026年5月時点では、厚生労働省が認証する電子カルテ製品については認証制度が検討中とされています。そのため、現時点で「認証電子カルテを待てばよい」と単純に考えるのではなく、まずは現在利用している電子カルテが、安全管理ガイドライン等への準拠や各接続インターフェースにどこまで対応しているかを、ベンダーに確認することが重要です。

つまり、加算1は、加算2のように追加要件のうちどれか一つを満たせばよいという整理ではありません。電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等、マイナ保険証利用率を含めて、院内のDX対応を総合的に確認する区分です。

7.見落としやすい実務上の注意点

制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。

ただし、自ら管理するホームページ等を有していないクリニックについては、ウェブサイトへの掲載要件は免除されます。すでに自院ホームページを運用している場合は、掲載内容の見直しも含めて確認しておきたいところです。

また、マイナ保険証利用率30%以上などは、地方厚生局へ個別に証明書類を提出する必要はありません。一方で、実績に基づいて判定されるため、窓口での案内や院内での確認を継続しておく必要があります。

なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算は併算定できません。明細書発行体制等加算は再診料および外来診療料に付随する加算であり、初診料には設定されていません。

そのため、加算3を算定する場合、初診時は4点がそのまま増点となり、再診時は電子的診療情報連携体制整備加算2点から明細書発行体制等加算1点分を差し引いて、実質+1点として捉えると、収益インパクトを確認しやすくなります。

まず確認したい相手

  • レセコン/電子カルテベンダー:電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等、明細書発行体制への対応状況
  • 地域医療情報ネットワークの運営主体:参加状況、共有できる情報、実際の閲覧・共有実績の管理方法
  • 院内スタッフ:マイナ保険証案内、掲示、患者説明の運用負荷
  • 地方厚生局の案内:届出様式、提出方法、最新の取扱い

8.届出と運用で確認しておきたいポイント

電子的診療情報連携体制整備加算は、届出を行えば終わりという制度ではありません。

算定区分を確認する際には、届出時点の要件だけでなく、マイナ保険証利用率、電子処方箋への対応状況、電子カルテ情報共有サービス等への対応予定、地域医療情報ネットワークの活用実績などを、継続的に確認していく必要があります。

届出後も確認したいこと

  • マイナ保険証利用率30%以上を維持できているか
  • 院内掲示・ホームページ掲載の内容が最新の状態か
  • 電子処方箋の発行体制を実際に運用できているか
  • 電子カルテ情報共有サービス等への対応予定をベンダーに確認しているか
  • 地域医療情報ネットワークを活用する場合、実際の閲覧・共有実績を確認できるか
  • 受付スタッフに患者説明の負荷が偏っていないか

特に、地域医療情報ネットワークを活用する場合には、参加しているだけではなく、実際に診療情報を閲覧または共有している運用実績が問われます。

そのため、制度要件の確認だけでなく、院内で誰が、どの場面で、どの情報を確認するのかまで整理しておくことが大切です。

届出で迷いやすいのは、「書類」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。

加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、加算1を視野に入れるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。

制度対応や院内運用で判断が止まりやすい相談事例は、以下のページで整理しています。
制度対応・院内運用の相談事例を見る

9.クリニックと患者にとってのメリット・注意点

電子的診療情報連携体制整備加算は、クリニック側にとっては収益面の評価である一方、患者側にとっては医療情報を活用した診療を受けやすくする制度でもあります。

ただし、メリットだけでなく、システム費用、スタッフの運用負荷、患者の自己負担増などもあわせて確認しておく必要があります。

クリニック側のメリット・注意点

項目 内容
メリット 要件を満たすことで、初診時・再診時に加算を算定でき、収益面の評価につながる。
メリット マイナ保険証、薬剤情報、健診情報、電子処方箋、診療情報共有などを活用することで、診療の質や安全性の向上につながる可能性がある。
注意点 電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等への対応には、ベンダー確認、システム改修、運用変更が必要になる場合がある。
注意点 マイナ保険証利用率の維持、受付での案内、患者説明、掲示・ホームページ更新など、現場スタッフの負荷が増える可能性がある。

患者側のメリット・注意点

項目 内容
メリット 薬剤情報、健診情報、診療情報などを活用することで、より安全で適切な医療を受けやすくなる。
メリット 重複投薬や相互作用の確認、過去の情報を踏まえた診療などにつながる可能性がある。
注意点 加算を算定することで、患者の窓口負担はわずかに増える。
注意点 マイナ保険証や電子処方箋など、デジタル対応に不慣れな患者には、丁寧な説明が必要になる。

例えば、初診時に加算1の15点を算定する場合、3割負担の患者では自己負担が約45円増える計算になります。

金額としては大きくないかもしれませんが、患者にとっては「なぜ負担が増えるのか」が分かりにくい場合もあります。そのため、院内掲示や受付での説明を含め、患者に伝わる形で整理しておくことが大切です。

10.これから求められるクリニック経営像

電子的診療情報連携体制整備加算は、制度上は診療報酬の加算ですが、実務上はクリニック経営そのものに関わるテーマです。

電子処方箋を導入するのか。電子カルテ情報共有サービス等への対応をどう考えるのか。地域医療情報ネットワークを活用するのか。マイナ保険証利用率をどう維持するのか。

これらは、単に「算定できるかどうか」だけでなく、システム投資、スタッフ教育、受付運用、患者説明、地域連携のあり方まで関係してきます。

これからのクリニック経営で問われること

  • 制度の点数だけでなく、自院の診療方針と合っているか
  • システム導入による費用と運用負荷を引き受けられるか
  • 受付・事務スタッフに過度な負担がかからないか
  • 患者に分かりやすく説明できる運用になっているか
  • 地域連携や情報共有を、実際の診療に活かせるか

今後のクリニック経営では、制度対応を「点数を取るための作業」として見るだけでは難しくなっていくかもしれません。

むしろ、制度改定をきっかけに、自院のシステム構成、受付動線、患者説明、スタッフの役割分担を見直すことが求められます。

その意味で、電子的診療情報連携体制整備加算は、単なる医療DXの加算ではなく、自院がこれからどのような診療体制・運用体制を整えていくのかを考える材料でもあります。

11.まとめ

今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすくなります。

  • 加算3は、基本対応を整える出発点です。
  • 加算2は、追加要件のいずれかを満たして一段上を目指す区分です。
  • 加算1は、電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等を含め、高度な要件を全て満たせるかを確認する区分です。

電子処方箋については、加算2・加算1の判断に直結する一方で、院内の全医師が直ちに対応できなければならないわけではなく、当面の間の緩和ルールも示されています。

また、電子カルテ情報共有サービス等には経過措置が設けられていますが、地域医療情報ネットワークを活用する場合には、概ね2月に1回以上の閲覧・共有実績など、実際の運用も問われます。

ここまで整理しても、実際には「加算3で止めるか」「加算2まで進めるか」「加算1を視野に入れるか」「ベンダーに何を確認すべきか」で判断が止まることがあります。

制度の正解を探すだけでなく、自院の現状、スタッフ体制、患者対応、システム更新の予定を重ねて考えることで、判断の前提が見えやすくなります。

制度の違いは分かった。では、自院ではどこまで対応するか。

電子的診療情報連携体制整備加算は、加算3・加算2・加算1の違いを確認するだけで判断が終わるとは限りません。

加算3でまず整えるのか。
加算2まで進めるのか。
加算1を視野に入れるのか。
電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等への対応をいつ確認するのか。
他の届出や院内運用との優先順位をどう考えるのか。

制度の要件を確認すれば自動的に答えが決まるテーマではなく、自院の現状を重ねて考える必要があります。

記事では、制度の要点と一般的な判断材料を整理しました。

一方で、自院の患者層、スタッフ体制、既存システム、今後の診療方針を前提にした整理は、個別に状況が変わります。

制度対応や院内運用で判断が止まりやすい相談事例は、以下のページで整理しています。

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