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クリニック開業・経営コラム

電子的診療情報連携体制整備加算|加算3・2・1の違いと、自院でどこまで対応するか

本記事は、2026年5月29日に発出された疑義解釈その7までを踏まえて整理しています。実際の算定や届出では、最新情報および管轄する地方厚生局の案内をご確認ください。

2026年度診療報酬改定では、これまでの医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算が見直され、医療DX関連の評価が電子的診療情報連携体制整備加算として再整理されました。

クリニックとしては、単に名称が変わったと捉えるだけでなく、「自院ではどこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。

特に実務上は、加算3・加算2・加算1のどれを目指すかだけでなく、マイナ保険証利用率30%以上を満たしているか、再届出を漏らさないか、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等への対応をどこまで進めるかが判断ポイントになります。

2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。

1.まず整理しておきたい全体像

今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すかどうかを決めるより、まず自院がどの段階にいるかを確認する方が整理しやすくなります。

区分 初診時 位置づけ 確認したいこと
加算3 4点 基本対応 まず土台となる体制を満たせるか
加算2 9点 追加対応 電子処方箋等を含めて一段上を目指せるか
加算1 15点 高度対応 複数の高度な要件を全て満たせるか

※加算1・2・3の区分があるのは初診時です。再診時は区分にかかわらず、全区分共通で月1回2点の算定となります。

2.全区分に共通する基本要件

加算3・2・1の違いを見る前に、まず全区分に共通する基本要件を確認しておく必要があります。

オンライン請求、オンライン資格確認、明細書の無償交付、院内掲示・ホームページ掲載などは、基本となる対応です。

また、健康相談体制については、単なる一般的な相談体制ではなく、マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制として整理しておく必要があります。

マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけの要件ではありません。加算3・加算2・加算1に共通する重要な前提です。

※マイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。6月算定開始を目指す場合は原則3月実績が基準ですが、直近の4月または5月の実績を用いることも認められています。

3.まず現在地を確認しやすい「加算3」

まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックでは、加算3から現在地を確認する流れが考えやすいかもしれません。

加算3から確認しやすいクリニックの例

  • まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
  • 紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
  • 電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
  • まず算定できる区分を安定して押さえたい

4.一段上の対応として考える「加算2」

加算2は、加算3の基本対応を整えたうえで、さらに一段上の対応を検討する区分です。

加算2では、共通要件に加えて、電子処方箋の発行体制、指定要件を満たす電子カルテの導入、電子カルテ情報共有サービス等の活用体制のうち、いずれかを満たす必要があります。

ここで注意したいのは、加算2は「すべてを満たす」区分ではなく、追加要件のうちいずれかを満たすことで検討できる区分だという点です。

電子処方箋については、経過措置で先送りできる要件ではありません。

加算2・加算1で電子処方箋を要件として見る場合、以前の医療DX推進体制整備加算で設けられていたような経過措置ではなく、実際に電子処方箋を発行できる体制が必要になります。

ただし、当面の間は、院内で処方を行う全ての医師が電子処方箋を発行できる必要まではなく、常勤医師2名以上、常勤医師が1名のみのクリニックでは1名以上が電子処方箋を発行できればよいとされています。

電子カルテ情報共有サービス等については、電子カルテ情報共有サービスそのものだけでなく、地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有または閲覧できる地域医療情報ネットワークの活用も選択肢になります。

地域医療情報ネットワークを活用する場合の注意点

地域医療情報ネットワークに参加しているだけではなく、実際に患者の診療情報を閲覧または共有している運用実績が求められます。

2026年5月29日の疑義解釈では、少なくとも概ね2月に1回以上は、診療情報の閲覧または共有を行うことが示されました。

また、ネットワークに加入した月から3か月後までは猶予があります。2026年5月31日までに加入していた医療機関については、2026年6月1日から9月30日までが猶予期間とされています。

そのため、単に「ネットワークに参加しているか」だけでなく、実際にどの患者情報をどのように閲覧・共有するのか、院内で運用を確認しておく必要があります。

電子カルテ情報共有サービス等に関する経過措置

電子カルテ情報共有サービスに係る要件については、当面の間、経過措置として基準を満たしているものとみなされます。

ただし、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するよう努めることが求められます。

現時点で未対応だから対象外と切り離すのではなく、自院の電子カルテメーカーやレセコンベンダーの対応予定を確認しておくことが重要です。

5.加算1は「全て満たせるか」で考える

加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては「最上位だから目指す」というより、点数差だけでなく、自院の今後の方向性に合っているかで考えたい区分です。

特に注意したいのは、加算2では追加要件のうち「いずれか」を満たす整理であるのに対し、加算1では高度な要件を全て満たす必要がある点です。

加算1で確認したい主な要件

  • 電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を登録できる体制がある
  • 電子カルテ要件を満たしている
  • 電子カルテ情報共有サービス等を活用できる体制がある
  • マイナ保険証利用率30%以上を満たしている

加算1の電子カルテ要件は、単に「ガイドライン準拠電子カルテ、または認証電子カルテ」とだけ理解すると、実務上の確認がやや曖昧になります。

制度上は、主に次のいずれかを満たす構造として整理しておく必要があります。

加算1における電子カルテ要件の考え方

  • A:安全管理ガイドライン等に準拠し、電子処方箋の接続インターフェースと電子カルテ情報共有サービスの接続インターフェースを有する電子カルテ
  • B:厚生労働省が認証する電子カルテ製品

ただし、2026年5月時点では、厚生労働省が認証する電子カルテ製品については認証制度が検討中とされています。そのため、現時点で「認証電子カルテを待てばよい」と単純に考えるのではなく、まずは現在利用している電子カルテが、安全管理ガイドライン等への準拠や各接続インターフェースにどこまで対応しているかを、ベンダーに確認することが重要です。

つまり、加算1は、加算2のように追加要件のうちどれか一つを満たせばよいという整理ではありません。電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等、マイナ保険証利用率を含めて、院内のDX対応を総合的に確認する区分です。

6.見落としやすい実務上の注意点

制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。

ただし、自ら管理するホームページ等を有していないクリニックについては、ウェブサイトへの掲載要件は免除されます。すでに自院ホームページを運用している場合は、掲載内容の見直しも含めて確認しておきたいところです。

また、マイナ保険証利用率30%以上などは、地方厚生局へ個別に証明書類を提出する必要はありません。一方で、実績に基づいて判定されるため、窓口での案内や院内での確認を継続しておく必要があります。

なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算は併算定できません。明細書発行体制等加算は再診料および外来診療料に付随する加算であり、初診料には設定されていません。

そのため、加算3を算定する場合、初診時は4点がそのまま増点となり、再診時は電子的診療情報連携体制整備加算2点から明細書発行体制等加算1点分を差し引いて、実質+1点として捉えると、収益インパクトを確認しやすくなります。

まず確認したい相手

  • レセコン/電子カルテベンダー:電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等、明細書発行体制への対応状況
  • 地域医療情報ネットワークの運営主体:参加状況、共有できる情報、実際の閲覧・共有実績の管理方法
  • 院内スタッフ:マイナ保険証案内、掲示、患者説明の運用負荷
  • 地方厚生局の案内:届出様式、提出期限、電子申請の受付開始日

7.特に注意したいのは「再届出」

今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。

再届出の対象として確認したい医療機関

  • 2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている
  • 2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている
  • 2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい

6月1日から算定を開始するための届出期間は、5月7日から6月1日必着とされています。

また、可能な限り5月18日までの届出に努めることが示されています。5月下旬は窓口混雑が予想されるため、早めに準備しておきたいところです。

一方で、電子申請の受付は5月25日から開始されます。電子申請システムでは、過去に届け出た情報の一部自動表示など、事務負担を軽減する機能も活用できるため、窓口混雑を避ける意味でも選択肢になります。

ただし、電子申請を利用する場合でも、事前にGビズID等のアカウント取得やセットアップが必要になる場合があります。受付開始後に初めて準備すると、届出期限に間に合わない可能性があるため、必要書類だけでなく、電子申請を使える状態になっているかも早めに確認しておきたいところです。

再届出で迷いやすいのは、「書類」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。

加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、加算1を視野に入れるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。

制度対応や院内運用で判断が止まりやすい相談事例は、以下のページで整理しています。
制度対応・院内運用の相談事例を見る

8.まとめ

今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすくなります。

  • 加算3は、基本対応を整える出発点です。
  • 加算2は、追加要件のいずれかを満たして一段上を目指す区分です。
  • 加算1は、電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等を含め、高度な要件を全て満たせるかを確認する区分です。

電子処方箋については、加算2・加算1の判断に直結する一方で、院内の全医師が直ちに対応できなければならないわけではなく、当面の間の緩和ルールも示されています。

また、電子カルテ情報共有サービス等には経過措置が設けられていますが、地域医療情報ネットワークを活用する場合には、概ね2月に1回以上の閲覧・共有実績など、実際の運用も問われます。

ここまで整理しても、実際には「加算3で止めるか」「加算2まで進めるか」「加算1を視野に入れるか」「ベンダーに何を確認すべきか」で判断が止まることがあります。

制度の正解を探すだけでなく、自院の現状、スタッフ体制、患者対応、システム更新の予定を重ねて考えることで、判断の前提が見えやすくなります。

制度の違いは分かった。では、自院ではどこまで対応するか。

電子的診療情報連携体制整備加算は、加算3・加算2・加算1の違いを確認するだけで判断が終わるとは限りません。

加算3でまず整えるのか。
加算2まで進めるのか。
加算1を視野に入れるのか。
電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等への対応をいつ確認するのか。
他の届出や院内運用との優先順位をどう考えるのか。

制度の要件を確認すれば自動的に答えが決まるテーマではなく、自院の現状を重ねて考える必要があります。

記事では、制度の要点と一般的な判断材料を整理しました。

一方で、自院の患者層、スタッフ体制、既存システム、今後の診療方針を前提にした整理は、個別に状況が変わります。

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