正解を急がず、 クリニック経営で重なりやすい論点を整理するために。 患者さんの視点も踏まえながら、 開業準備や日々の経営で迷いやすい場面の前提を整える時間です。

クリニック開業・経営コラム

医療DX関連の加算はどこまで対応すべきか ──加算3・加算2・加算1の順で整理する判断ポイント

本記事は、2026年度診療報酬改定における医療DX関連の見直しをもとに、クリニックの制度対応を整理したい院長先生向けに整理したものです。実際の算定や届出にあたっては、最新の告示・通知・疑義解釈、ならびに地方厚生局等の案内を必ずご確認ください。

2026年度診療報酬改定では、医療DX関連の評価が見直され、クリニックとしても「どこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。

制度の説明だけでは、「結局うちはどこを目指せばよいのか」が分かりにくいと感じる院長先生も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、加算3 → 加算2 → 加算1の順に整理しながら、自院の現在地と、今後どこまで対応を進めるかの判断ポイントを整理します。

なお、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。

1.まず整理しておきたい全体像

今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。

実務上は、「いきなり一番上を目指すかどうか」ではなく、まず自院がどの段階にいるかを把握し、そのうえで必要に応じて上位区分を検討していく方が現実的です。

区分 点数 位置づけ 考え方
加算3 4点 基本対応 まず確実に整えたい土台
加算2 9点 中間対応 現実的に一段上を目指すライン
加算1 15点 高度対応 設備・運用・今後の方向性まで含めて検討するライン

すべてのクリニックが最初から加算1を目指すべき、という整理ではありません。まずは加算3を含めた現在地を確認するところから始める方が、現場にはなじみやすいと思います。

2.まず現実的な出発点になる「加算3」

まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックにとって、検討しやすいのが加算3です。

ここでは、オンライン請求、オンライン資格確認、診察室等での情報閲覧体制、明細書の無償交付、マイナ保険証利用率、健康相談体制、院内掲示やホームページ掲載といった、医療DXの基本部分が中心になります。

加算3を考えやすいクリニックの例

・まずは届出漏れなく基本対応を整えたい

・紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である

・電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない

・まず算定できる区分を安定して押さえたい

自院の現在地チェック(加算3)

□ オンライン請求を実施している

□ オンライン資格確認を導入している

□ 診察室等で必要な診療情報を閲覧できる体制がある

□ 明細書の無償交付を行っている

□ マイナポータル等の医療情報に基づく健康相談に対応できる体制がある

□ 院内掲示に加えて、ホームページ掲載にも対応できる

□ まずは基本対応を確実に整える方針である

当てはまる項目が多ければ、加算3は現実的な出発点になりやすいと考えられます。

3.次に現実的な上位ラインとして考えやすい「加算2」

加算2は、多くのクリニックにとって「現実的な上位ライン」として検討しやすい区分です。

加算2は、必ずしも電子カルテの更新が必要というわけではありません。加算3の基本要件に加えて、電子処方箋、要件を満たす電子カルテ、情報共有ネットワーク等の追加要件のうち、いずれか1つを満たせばよいためです。

そのため、例えば先に電子処方箋を導入することで、一段上の区分を現実的に狙えるケースがあります。システム全体をすぐに総入れ替えしなくても検討しやすい点が、加算2の特徴です。

加算2を考えやすいクリニックの例

・電子処方箋の導入を現実的に進められる

・電子カルテを導入済み、または更新を検討している

・マイナ保険証の利用が少しずつ定着してきている

・加算3で止まるより、現実的に一段上を目指したい

4.加算1は「取れるかどうか」より「取る意味があるか」で考える

加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては、「最上位だから目指す」というより、「自院の今後の方向性に合っているか」で考える方が実務的です。

特に、電子処方箋や電子カルテまわりの体制、情報共有への向き合い方は、単なる点数の話だけではなく、今後どの程度DXを進めていくかという経営判断にも関わってきます。

なお、電子カルテ情報共有サービスに関する要件については、国のシステム稼働までの当面の間は「満たしているものとみなす」とされています。そのため、現時点では電子処方箋などの対応を進めることで、上位区分を検討しやすい状況ともいえます。

また、今後のシステム更新を検討する際には、厚生労働省が認証する電子カルテ製品(標準型電子カルテ等)という新たな選択肢も視野に入ってきます。

加算1を検討しやすいクリニックの例

・電子処方箋の導入済み、または導入予定がある

・電子カルテの更新や連携強化を見据えている

・地域連携や情報共有を中長期で強めたい

・点数だけでなく、今後の運用全体を見直す意思がある

5.順番としては「3 → 2 → 1」で考える方が整理しやすい

実務的には、加算3 → 加算2 → 加算1の順で考える方が、自院の状況を整理しやすいと思います。

考え方 向いているケース
まず加算3(4点)を確実に押さえる 基本対応の整理を優先したい、設備投資は最小限にしたい
次に加算2(9点)を現実的に目指す 電子処方箋などを活用しながら無理なく一段上を検討したい
必要なら加算1(15点)を戦略的に考える 電子処方箋や中長期のDX投資まで視野に入っている

この順番で整理すると、「うちは今どこにいるのか」「次に何を判断すればよいのか」が見えやすくなります。

6.見落としやすい実務上の注意点

制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。

また、要件の読み方によっては「自院は上位区分を狙えるのか」「まだ加算3で止めるべきか」で迷う場面も出てくると思います。こうしたときは、点数差だけではなく、設備状況、スタッフ運用、今後の更新予定まで一緒に見ておく方が判断しやすくなります。

7.特に注意したいのは「再届出」です

今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。

具体的には、2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算や診療録管理体制加算を届け出ている医療機関が、2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合には、改めて届出を行う必要があります。

再届出の対象として特に確認したい医療機関

・2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている医療機関

・2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている医療機関

・2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい医療機関

「今まで算定していたから、そのままでよい」と思い込んでしまうと、届出対応が漏れる可能性があります。6月1日以降途切れることなく算定を継続するためには、5月末までに届出の準備を終えておくことが重要です。

8.まとめ

今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすいと思います。

加算3(4点)で基本対応を整える

加算2(9点)を、電子処方箋などを活用した現実的な上位ラインとして考える

加算1(15点)は、自院の中長期的なDX投資の方向性に合うかを見て判断する

という順番が、実務上は分かりやすいはずです。

ただし、どの区分を目指すにしても、2026年5月末までに新しい名称での届出準備を進めておかなければ、6月以降の算定が途切れる可能性があります。まずは自院の現在地を確認し、確実に取れる区分の届出準備から着手することをお勧めします。

判断が重くなり始めた段階で、ご相談いただくことがあります

制度対応は、要件を確認すれば終わるものではなく、自院としてどこまで対応するか、何を優先するかを考える場面で迷いやすいものです。

実際には、判断が重くなり始めた段階で、論点や優先順位を整理するためにご相談いただくことがあります。

相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。むしろ、何から考えるべきかを整理するところから始まることが多くあります。

臨床と同じように、経営判断も「症状が出てから」ではなく、「違和感の段階」で整理することに意味があります。

開業準備中の先生や、開業後の体制整備の中で制度判断の前提を整理したい先生は、下記ページもご覧ください。

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