開業準備、クリニック運営。 複数のテーマが重なると、何から考えるべきか分からなくなることがあります。 院長の代わりに決めるのではなく、 論点・優先順位・次の一歩を整理します。

クリニック開業・経営コラム

ベースアップ評価料はスタッフにどう説明する?よくある質問と整理ポイント

本記事は2026年6月施行予定の制度と、2026年5月8日までに公表された関連通知・疑義解釈(その5まで)をもとに整理しています。今後、厚生労働省から追加の疑義解釈や事務連絡等が公表された場合は、内容を順次更新していきます。

ベースアップ評価料について、スタッフから「全員の給料が上がるのですか」「医療事務も対象ですか」「給料にいつ反映されますか」と聞かれることがあります。

この制度は、医療機関で働く職員の賃金改善を目的としたものです。ただし、算定すれば全員が一律に同じ金額だけ上がる制度ではありません。

院長としては、制度上決まっていることと、自院として整理することを分けて伝える必要があります。

結論

  • ベースアップ評価料は、スタッフの賃金改善を目的とした制度です。
  • ただし、全員に一律で同額を配分する制度ではありません。
  • 医療事務職員は対象になり得ます。
  • 業務委託・請負のスタッフや経営者・法人役員は対象外です。
  • 給与への反映時期や配分方法は、自院の体制を踏まえて整理する必要があります。

スタッフ全員の給与が上がる制度なのか

ベースアップ評価料は、対象職員の賃金改善を目的とした制度です。

ただし、全員に一律で同じ金額を配分しなければならない制度ではありません。

対象職員の中で、どのような形で賃金改善を行うかは、制度上のルールと自院の方針を踏まえて整理する必要があります。

スタッフに伝えるときの整理

  • 制度としては、対象職員の賃金改善を目的としている
  • ただし、全員に同額を配分する制度ではない
  • 職種、役割、勤務状況、院内の方針によって反映の仕方は変わる
  • 配分に差をつける場合は、その理由を説明できるようにしておく

医療事務・派遣職員・委託職員は対象になるのか

医療事務職員を含め、医療機関で勤務する幅広い職種が対象になり得ます。

一方で、すべての人が対象になるわけではありません。

対象・対象外の整理

  • 医療事務職員:対象になり得ます
  • 看護職・看護補助者・リハビリ職種など:対象になり得ます
  • 40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師:対象として整理されています
  • 40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師:対象外と整理されています
  • 派遣職員:一定条件のもとで対象に含めることが可能とされています
  • 業務委託・請負のスタッフ:対象外と整理されています
  • 経営者・法人役員:対象外です

「なぜあの人は対象で、私は対象外なのか」という疑問が出ることは自然です。

そのときに、院長の好き嫌いではなく、制度上のルールとして線引きされている部分があることを説明できるようにしておく必要があります。

給与はいつ、どのくらい反映されるのか

制度上は、原則として評価料の算定を開始した月から給与に反映させることが求められています。

ただし、実際にどのくらい上がるかは一律には言えません。

患者数、算定状況、スタッフ数、職種構成、配分方法によって、確保できる原資や反映の仕方が変わるからです。

「どのくらい上がるのか」への説明

  • 全国一律の金額や率が決まっているわけではない
  • 患者数や算定状況によって原資は変動する
  • スタッフ数や職種構成によって配分の考え方は変わる
  • 具体額を伝える前に、自院としての考え方を整理する必要がある

なお、2026年度改定では、賃上げの目標として3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)が示されています。

ただし、この数値は各医療機関に義務として課されている達成条件ではありません。この水準に到達していない場合でも、ベースアップ評価料の算定は可能です。

人によって賃金改善額が違ってもよいのか

ベースアップ評価料は、対象職員全員に同じ金額を配分しなければならない制度ではありません。

職種、役割、勤務状況、定着させたい人材、院内での貢献度などを踏まえて、賃金改善の方法に差が出ることはあり得ます。

ただし、配分に差をつける場合は、説明の準備が重要です。

配分に差をつける場合に考えたいこと

  • なぜその配分にするのか
  • どの職種・役割を重視するのか
  • 院内で不公平感が出たときにどう説明するのか
  • 制度の趣旨と自院の方針が矛盾していないか

配分方法そのものの整理については、こちらの記事でもまとめています。
ベースアップ評価料はどう配分するか|院長が整理しておきたい3つの視点

評価料が余った場合はどう考えるのか

今回の改定では、余った評価料を翌年度のために繰り越すことは原則できなくなり、年度内で確実にスタッフへ還元することが求められます。

基本は、基本給や毎月決まって支払われる手当の引き上げです。

ただし、患者数の変動などにより想定より評価料収入が多くなり、追加の基本給等の引き上げだけでは使い切れない場合などには、例外的に賞与等で還元する考え方も示されています。

原則と例外を分け、自院としてどのような賃金改善として位置づけるのかを整理しておく必要があります。

スタッフへ説明するときのポイント

スタッフに説明するときは、制度の内容をすべて細かく伝えるよりも、誤解が生じやすい点を先に整理しておく方が実務的です。

説明で押さえたいポイント

  • 今回の制度は、医療分野の賃上げを進めるための仕組みであること
  • 評価料として得られた原資は、スタッフの処遇改善に充てる前提の制度であること
  • ただし、全員一律・同額で上がる制度ではないこと
  • 対象職員と対象外職員が制度上整理されていること
  • 具体的な金額や配分は、患者数・職種構成・経営状況によって変わること
  • 制度が将来見直された場合、同じ水準を維持できない可能性があること

スタッフ説明の前に整理したいこと

  • 制度上、何が決まっているか
  • 自院として、どこまで決まっているか
  • 対象・対象外の説明をどうするか
  • 配分に差がある場合、どう説明するか

スタッフへの説明の仕方は、クリニックごとに異なります。

制度のルールだけでなく、自院としてどう伝えるかまで含めて迷うこともあります。

そのようなときは、説明の言葉を先に決める前に、判断の前提を整理することが必要になる場合があります。

制度の説明は分かっても、院内でどう伝えるかで止まることがあります

ベースアップ評価料では、制度上のルールだけでなく、誰を対象にするのか、どう配分するのか、どこまで決めてからスタッフへ共有するのか、といった判断が必要になります。

近い相談事例は、こちらのページで整理しています。
クリニック経営の相談事例を見る

まとめ

ベースアップ評価料は、スタッフの処遇改善を目的とした制度です。

ただし、全員に一律で同じ金額を配分する制度ではありません。

医療事務職員は対象になり得ますが、業務委託のスタッフや40歳以上の勤務医師など、対象外と整理される人もいます。

また、人によって配分が違うこともあり得ますが、その場合は理由を説明できるようにしておく必要があります。

制度の説明だけでは、スタッフ説明は整いません。

自院としてどう扱うかを整理したうえで、院内に共有することが大切です。

スタッフ説明の前に、院長として整理しておきたいときに

ベースアップ評価料は、制度の説明だけでは済まないことがあります。

誰を対象にするのか。どう配分するのか。どこまで決めてからスタッフに共有するのか。

判断が重くなったときは、答えを急ぐ前に、まず前提を整理することがあります。

近い相談があるか確認したい方は、まず相談事例をご覧ください。

※判断整理(初回)は、正解や結論の提示、実務代行ではなく、判断の前提を整理するための時間です。

記事一覧