泌尿器科クリニック経営シリーズ 第6回 泌尿器科が内科を標榜するという選択 ― 専門性と経営のバランスをどう取るか
更新日:2025年12月1日
はじめに
泌尿器科クリニックから近年とても多い相談が、「内科を標榜するべきか」というテーマです。 高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は腎機能と密接に関わり、患者さんからも「排尿だけでなく腎臓もまとめて診てほしい」という声が増えています(生活習慣病と腎臓の関係については、【生活習慣病と内科クリニック経営①】慢性腎臓病(CKD)と生活習慣病でも整理しています)。
同時に、2026年度診療報酬改定に向けた議論では、「生活習慣病管理」「かかりつけ機能」がより一層重視されています(詳しくは【2026年度診療報酬改定・骨子案】クリニックが今から整えるべき“3つの重点テーマ”もご参照ください)。 この流れの中で、泌尿器科が内科標榜を検討することは、単なる看板変更ではなく、経営構造・診療体制・地域ポジション・スタッフ運用まで含めた「経営判断」になってきています。
本記事は、「泌尿器科クリニック経営シリーズまとめ 治す医療と支える医療をつなぐ“続ける経営”」の第6回にあたります。シリーズ全体の流れを俯瞰したい方は、まずまとめページからご覧いただくのもおすすめです。
ここでは、泌尿器科クリニックが内科標榜を検討する際のポイントを、制度・経営・実務・代替策の順に整理します。
制度的には可能 ― ただし「診療実態」が前提
医師免許は包括的であり、泌尿器科専門医が「内科」を標榜することは制度上問題ありません。 しかし保険診療では実態のある診療が求められるため、以下の準備が欠かせません。
標榜を届け出る前に確認したい3点
- 検査体制: 採血・心電図・血圧測定を無理なく日常運用できるか。
- 人員体制: スタッフが生活習慣病指導・測定補助を担えるか。
- 診療設計: 高血圧や糖尿病を継続管理するフロー(来院頻度・検査項目・説明資料)が設計されているか。
経営面でのメリット
- 患者層の拡大: 「泌尿器+内科」の表示により、高齢層・慢性疾患層の受診ハードルが下がる。
- 診療報酬の多様化: 生活習慣病管理料など点数の幅が広がり、経営が安定しやすい。
- “かかりつけ機能”の確立: 全身管理の安心感が地域での信頼につながり、再診基盤が強化。
注意点とリスク
- 専門性の分散: 泌尿器科の強みがぼやけ、「何でも屋」と見られる可能性。
- 運営コストの増加: 検査設備・試薬・電子カルテ設定・スタッフ教育にコストが生じる。
- 患者ニーズの拡大: 感冒・健診など、本来想定していない相談が増えやすい。
- 診療効率の低下: 専門外相談が多くなると、泌尿器科本来の診療時間が圧迫されることも。
実務的判断のステップ
- 地域分析: 周辺内科の数や距離、競合状況を把握。医師多数地域かどうかは、「医師多数地域での開業戦略」の視点も参考になります。
- 導線設計: 「泌尿器」「腎臓」「生活習慣病」の通院導線を描く。
- 診療範囲の明文化: 例:高血圧・糖尿病に限定し、感冒・健診は受けないなど院内ルールを明確化。
- スタッフ運用: スコア記入、生活指導、検査案内をスタッフが担う体制構築。
- 発信の統一: HP・院内掲示で「泌尿器科+腎・生活習慣病フォロー」を一貫して訴求。
代替戦略 ― 標榜せずに「内科的視点」を持つ方法
標榜しない場合でも、以下の工夫で「腎臓を守る医療」を強化できます。
- 検査設計の拡張: HbA1c・脂質・eGFR・尿蛋白の定期測定と見える化。
- 生活指導の仕組み化: 水分・塩分・運動の目安をスタッフが説明し継続率を向上。
- 伝え方の工夫: Webで「腎臓を守る医療」「血圧・生活習慣病もサポート」を明示。
- 内科との提携: 紹介ルートを院内・HPで明示し、連携の信頼性を可視化。
判断基準の整理
内科標榜を検討する際は、専門性・体制・地域性・ブランディングの4観点を揃えることが重要です。 泌尿器科のコアを守りながら、無理なく生活習慣病をフォローできる体制が整っているか。 地域ネットワークと調和し、院内外の発信が一貫しているか。 これらが満たされるなら、内科標榜は強力な経営施策になり得ます。
まとめ
内科標榜は“やる・やらない”の二択ではありません。 目的を明確にし、導線を設計できるかが成否を分けます。 泌尿器科の専門性を軸に、腎臓・血圧・生活習慣病の管理まで一貫して支援できる体制が整えば、標榜の有無に関わらず地域から選ばれるクリニックに育ちます。
シリーズ全体の流れや、泌尿器科クリニックの“続ける経営”を俯瞰したい方は、泌尿器科クリニック経営シリーズまとめもあわせてご覧ください。
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