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クリニック開業・経営コラム

小児科経営シリーズ③|サービス提供の設計 ― 継続支援・地域連携・ICT

小児科クリニックにおける「サービス提供」は、診療行為だけでなく、継続支援・地域連携・ICT・情報発信を含めた総合的な設計が求められます。

はじめに

小児科は、子どもの病気を「治す場」であると同時に、保護者が安心して相談できる「支える場」でもあります。
制度面では、かかりつけ医機能の明確化医療DXの推進が進み、診療の枠を超えた“地域での支援体制”が重視されつつあります。
小児科経営におけるサービス設計とは、単に利便性を高めることではなく、「安心を継続的に提供する仕組み」を経営資源として位置づけることです。
本稿では、こうした流れを踏まえ、小児科クリニックにおけるサービス提供の設計を5つの視点から整理します。

(関連:小児科クリニック経営シリーズ①|制度変化から読み解く“治す×支える”医療

1.継続支援を設計する(予防接種・健診)

予防接種や乳幼児健診は、子どもの成長を見守る「定期接点」です。保護者にとっては安心して相談できる時間であり、クリニックにとっては再診の基盤となります。
スケジュール管理やリマインドをシステム化し、「受け忘れを防ぐ」だけでなく、継続的な信頼関係を築く設計が重要です。

  • 年齢別・疾患別の接種スケジュールの「見える化」
  • LINE・メールを用いたリマインド通知の運用
  • 健診時に「育児相談」を自然に組み込む設計

2.地域連携を設計する(学校・保育園)

医療と教育がつながることで、保護者の安心感は大きく高まります。
健診結果のフィードバックや、アレルギー・喘息児への配慮、保健室・園との連携は、地域全体で子どもを支える体制づくりにつながります。

  • 健診後のフォロー体制(結果説明・生活上の留意点)
  • アレルギー・喘息等に関する学校対応マニュアル・文書整備
  • 同意に基づく情報共有フローの明文化

3.支援導線を設計する(発達・メンタル)

発達・行動・睡眠・不登校など、医療と福祉・教育の狭間にある相談が増えています。
小児科が初期相談の入り口となり、必要に応じて専門職につなぐ仕組みを整えることで、地域の“安心の入口”を担えます。

  • 問診票・Webフォームで自由記述欄を設け、気になる点を拾い上げる
  • 健診時に「心と発達」を確認する簡易チェック項目を導入
  • 紹介・逆紹介ルートを明文化し、保護者にも共有

4.利便性と効率を設計する(ICT活用)

ICTの導入は「効率化」だけでなく、「不安を減らす体験設計」として位置づけることが大切です。
Web予約・事前問診・AI電話・チャットボットなどを活用し、“待たせない・迷わせない・伝わる”仕組みを整えます。

  • Web予約・事前問診による来院目的・重症度の把握
  • AI電話による時間外・混雑時の一次対応
  • HP連動チャットボットでFAQを即時回答(受診目安・持ち物等)
  • オンライン診療(再診・相談中心)の併用

5.信頼形成を設計する(情報発信)

ホームページやSNSは広報ではなく「診療を補完するツール」として機能します。
予防接種スケジュールや感染症流行情報、生活支援の知恵などを発信し、保護者の判断を支える“共創型コミュニケーション”を築きましょう。

  • 年齢別・症状別の「よくある質問」ページの整備
  • 院内掲示とHP記載内容の統一(説明の重複削減)
  • スタッフ紹介・医院方針の更新で、信頼性を高める

まとめ

小児科クリニックのサービスは、診療行為にとどまらず、継続支援・地域連携・ICT・情報発信を含めた包括的な“体験設計”が求められます。
保護者の安心感をどう生み出すか──その問いこそが、これからの経営戦略の中心です。
「サービス設計」は、理念をかたちにする営みでもあります。いまの自院のサービスを、どんな「体験」として届けたいか。
その問いから、次の一歩が見えてきます。

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