医師の“考えを整理する時間”をつくる|治す医療から、治し支える医療へ

クリニック開業・経営コラム

小児科クリニックにおけるサービス提供の視点


診療だけでなく、継続支援・地域連携・ICT・情報発信まで含めた「サービス設計」を経営戦略として捉え直します。




はじめに


小児科クリニックは「子どもの病気を治す場」であると同時に、保護者にとって安心して相談できる拠点でもあります。 制度動向(治す医療と治し支える医療、医療DXの推進)を踏まえると、サービス提供の幅を広げ、保護者の安心感を高めることが経営の安定につながります。 本稿では、小児科クリニックにおけるサービス提供の要点を整理します。 (関連:制度から考える小児科クリニックの未来像




1. 予防接種・健診を軸とした継続的サービス


予防接種や乳幼児健診は、子どもの成長を見守るうえで欠かせません。保護者にとっては「定期的に相談できる安心の機会」となり、医院にとっては安定した再診の基盤です。 接種スケジュールの一覧化や、メール・LINE等によるリマインド通知を導入することで、受け忘れを減らし、信頼性を高められます。



  • 年齢別・疾患別の接種スケジュールの「見える化」

  • リマインド通知(メール/LINE)の運用

  • 健診と相談(育児・発達)のセット化




2. 学校・保育園との連携


教育機関との連携は、保護者に「医療と教育がつながっている」安心感を提供します。健診結果のフォローや、アレルギー・喘息への学校生活での配慮に関する助言は、地域からの信頼獲得にも直結します。



  • 健診後のフォロー体制(結果説明・生活上の留意点)

  • アレルギー・喘息等の学校対応に関する文書・資料整備

  • 同意に基づく情報共有フローの明文化




3. 発達・メンタル面の支援サービス


発達・行動・睡眠・不登校などの相談は、保護者が不安を抱えやすい領域です。小児科が初期相談窓口となり、必要に応じて専門医・心理士と連携することで、地域の「安心の入り口」になります。



  • 問診票・Webフォームに自由記入欄を設け、気になる点を拾い上げる

  • 定期健診時に「心と発達」の簡易チェック項目を導入

  • 紹介・逆紹介の基準とルートの明文化(保護者への周知含む)




4. ICTを活用した利便性向上サービス


ICTの活用は、保護者の利便性と医院の効率化を両立します。Web予約・事前Web問診で待ち時間や接触機会を減らし、AI電話で時間外や混雑時の問い合わせに対応。 さらにホームページ連動のチャットボットでFAQ(受診目安・持ち物等)に即時回答することで、不安を軽減できます。



  • Web予約・事前Web問診:来院目的・重症度の把握と混雑平準化

  • AI電話:予約変更・基本的な問い合わせの一次対応

  • HP連動チャットボット:FAQに即時対応、院内掲示と情報整合

  • オンライン診療(再診・相談中心)の併用




5. 情報提供・啓発活動


ホームページやSNSは、単なる広報にとどまらず診療補助ツールとして機能します。予防接種スケジュール、感染症流行状況、生活習慣・育児支援情報を定期的に発信することで、 保護者の判断を支え、医院の認知・信頼を高めます。医院の方針・特色・連携体制の明示は、差別化や採用にも有効です。



  • 年齢別・症状別の「よくある質問」ページの整備

  • 院内配布資料とHP記載の統一(説明の重複削減)




まとめ


小児科のサービスは、単なる診療行為にとどまらず、継続支援・地域連携・ICTによる利便性・情報発信までを含む包括的な設計が求められます。 保護者の安心感を高めることは、そのまま経営の安定につながります。今後は「サービス設計」そのものを経営戦略の柱として位置づけることが、地域に選ばれる小児科クリニックの条件となるでしょう。




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