制度から考える小児科クリニックの未来像――“治す医療”と“治し支える医療”を両輪に
                はじめに
これからの小児科クリニックは、単に風邪や感染症を「治す場」ではなく、子どもと家族の生活を「支える場」としての役割が強く求められます。少子化の進行、慢性疾患の増加、共働き家庭の増加、そして医療制度の変化――これらを踏まえると、経営戦略の見直しが不可欠です。 本稿では、(1)制度の方向性 →(2)将来の経営設計 →(3)施設・サービスへの落とし込みという流れで整理します。 既存記事「小児科=まちの保健室」とも相互補完できる内容です。
1. 制度の方向性
- 「治す医療」と「治し支える医療」の両立:急性期疾患の治療だけでなく、慢性疾患や発達支援など生活に寄り添う医療が重視されます。
 - 医療DXの推進:オンライン資格確認、標準化された情報連携、医療DX推進体制の整備など、ICT活用が評価されやすくなります。
 - 地域包括ケアの拡大:医療は家庭・学校・地域と連動して提供するものへ。医療機関単体ではなく「地域のチーム」で支える流れが加速しています。
 
この流れを踏まえると、小児科クリニックは「早く治す」だけでは不十分で、子どもと家族を支える継続的な仕組みの構築が求められます。
2. 将来の経営設計
2-1. 役割の再定義
小児科は地域における最初の相談窓口(ハブ)としての役割を強化します。
- 急性期対応:発熱、感染症、胃腸炎などの初期対応
 - 慢性・発達対応:喘息、アトピー、食物アレルギー、発達や不登校への支援
 - 家族支援:育児不安、働く親へのサポート、学校・保育園との橋渡し
 
2-2. 他診療科との連携(例)
耳鼻科・皮膚科・心療内科・呼吸器内科は代表例です。地域のニーズに応じ、眼科・整形外科・歯科・泌尿器科・産婦人科などへ柔軟に広がります。
- 耳鼻科:中耳炎・副鼻腔炎の治療と、言語・発達への影響を踏まえた共同フォロー
 - 皮膚科:アトピー性皮膚炎や難治性湿疹の継続ケアとスキンケア指導の共通化
 - 心療内科:不登校・睡眠障害など心身の課題への専門治療と日常フォロー
 - 呼吸器内科:重症喘息・思春期以降の移行期ケア(成人領域への橋渡し)
 
2-3. 日々見る経営指標
- 通い続けてくれている割合:慢性・発達フォローの継続がどれくらい保てているか。
 - 受け忘れが少ないか:予防接種や健診が、期限内に受けられているか。
 - 紹介が詰まっていないか:紹介・逆紹介がスムーズに行き来できているか(待たせすぎていないか)。
 - 保護者の安心度:説明が伝わり、不安が軽くなった実感があるか(アンケート・口頭確認)。
 - スタッフが育っているか:説明・指導が標準化でき、入れ替わっても同じ品質で対応できているか。
 
2-4. 収益のバランスとリスクの分散
季節変動や流行依存を軽減するため、急性 × 慢性 × 予防 × 相談のバランスを設計します。
- 予防(ワクチン・健診)を計画的に推進
 - 慢性・発達支援はプログラム化して継続率を高める
 - 非診療型サービス(学校・保育連携相談、保護者教室 など)を検討
 
3. 施設・サービスへの落とし込み
経営設計を日常運用へ落とす具体策です。
- WEB予約・事前Web問診:受診理由・重症度・感染疑いを把握し、適切な枠・動線へ仕分け
 - AI電話・自動応答:FAQ(ホームページやAIチャットボットを活用)や予約変更を自動化し、電話混雑を緩和
 - 院内動線の工夫:発熱・感染疑いと一般外来の動線分離、安心できる待合環境
 - オンライン診療・情報共有:慢性疾患や保護者相談を継続的にサポート
 - データの見える化:成長曲線や治療計画を家族と共有(患者ポータル等)
 - 地域との橋渡し:学校・保育園・地域資源との連携を仕組み化
 
まとめ
小児科クリニックの未来を考える際は、制度の方向性を理解し、経営設計を組み立て、そして施設・サービスで実行に落とし込む流れが重要です。 既存記事「小児科=まちの保健室」と合わせてお読みいただくと、理念(役割)→戦略(経営設計)→実践(施設・サービス)の全体像がつながります。
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