電子的診療情報連携体制整備加算はどこまで対応すべきか ──加算3・加算2・加算1の順で整理する判断ポイント
本記事は、2026年4月22日時点の告示・通知・疑義解釈(その4:2026年4月21日発出)をもとに整理しています。実際の算定や届出では最新情報をご確認ください。
2026年度診療報酬改定では、医療DX関連の評価が見直され、クリニックとしても「どこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。
特に実務上は、加算1・加算2・加算3のどれを目指すかだけでなく、マイナ保険証利用率30%以上を満たしているか、再届出を漏らさないか、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応をどこまで進めるかが判断ポイントになります。
この記事では、電子的診療情報連携体制整備加算について、共通要件を確認したうえで、加算3 → 加算2 → 加算1の順に、自院の現在地と判断ポイントを整理します。
制度上の要件を確認するだけでなく、「自院ではどこまで対応するのが現実的か」を考えるための補助線としてお読みください。
2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。
目次
1.まず整理しておきたい全体像
今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すのではなく、まず自院がどの段階にいるかを把握することが大切です。
| 区分 | 初診時 | 位置づけ | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 加算3 | 4点 | 基本対応 | まず整えたい土台 |
| 加算2 | 9点 | 中間対応 | 現実的に一段上を目指すライン |
| 加算1 | 15点 | 高度対応 | 設備・運用・方向性まで含めて検討 |
※加算1・2・3の区分があるのは初診時です。再診時は区分にかかわらず、全区分共通で月1回2点の算定となります。
医療DXだけでなく、制度対応全体で優先順位を整理する
2026年改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料や生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。
ベースアップ評価料の届出判断については、以下の記事でも整理しています。
ベースアップ評価料は届出すべきか|期限と実務スケジュールを院長向けに整理
2.全区分に共通する基本要件
加算1・2・3の違いを見る前に、まず全区分に共通する基本要件を確認しておく必要があります。
オンライン請求、オンライン資格確認、診察室等で診療情報を閲覧できる体制、明細書の無償交付、健康相談体制、院内掲示・ホームページ掲載などは、基本となる対応です。
また、マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけの要件ではなく、加算3・加算2・加算1に共通する重要な前提です。
※マイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。6月算定開始を目指す場合は原則3月実績が基準ですが、直近の4月または5月の実績を用いることも認められています。
つまり、どの区分を目指す場合でも、まずは利用率、院内掲示、ホームページ掲載、明細書発行体制などを確認することが出発点になります。
3.現実的な出発点になる「加算3」
まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックにとって、検討しやすいのが加算3です。
加算3は、いきなり電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応を前提にするというより、まず医療DX関連の基本体制を整える区分として捉えると分かりやすいと思います。
加算3を考えやすいクリニックの例
・まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
・紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
・電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
・まず算定できる区分を安定して押さえたい
自院の現在地チェック(加算3)
□ オンライン請求を実施している
□ オンライン資格確認を導入している
□ 診察室等で必要な診療情報を閲覧できる体制がある
□ マイナ保険証利用率30%以上を確認している
□ 明細書の無償交付を行っている
□ 院内掲示とホームページ掲載に対応できる
なお今回の改定で、これまで一部の診療所で認められていた「明細書無料発行の義務の免除規定」は、正当な理由がある場合を除き、原則として見直されています。自院が正当な理由に該当するか、またはシステム対応が必要かを確認しておきたいところです。
4.上位ラインとして考えやすい「加算2」
加算2は、多くのクリニックにとって現実的な上位ラインとして検討しやすい区分です。
加算3の基本要件に加えて、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、情報共有ネットワーク等の追加要件のうち、いずれかを満たすことで検討しやすくなります。
電子処方箋については、運用開始日の登録や、厚生労働省ウェブサイト上で電子処方箋対応施設として公表されている状態が求められます。一方、電子カルテ情報共有サービスについては、国側の稼働状況や公表ページ等の整備状況を踏まえた確認が必要です。
加算2を考えやすいクリニックの例
・電子処方箋の導入を現実的に進められる
・電子カルテ情報共有サービスへの対応を確認している
・マイナ保険証の利用が少しずつ定着してきている
・加算3で止まるより、現実的に一段上を目指したい
迷いやすいのは、要件確認よりも「どこまで進めるか」です。
加算3でまず整えるのか、加算2まで進めるのか、加算1を視野に入れるのかは、点数だけでは決めにくい判断です。自院の人員、窓口運用、ベンダー対応、他の届出との優先順位まで含めて整理する必要があります。
経過措置も含めて確認する
電子カルテ情報共有サービス等については、国側の運用開始状況に合わせた経過措置や、要件を満たすものとみなす取扱いが設けられる場合があります。要件の字面だけで判断せず、最新の通知・疑義解釈と自院のシステム対応状況をあわせて確認することが大切です。
5.加算1は「取る意味があるか」で考える
加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては「最上位だから目指す」というより、自院の今後の方向性に合っているかで考える方が実務的です。
① 電子処方箋の導入が重要になる
電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を登録できる体制が必要になります。
② 電子カルテ情報共有サービス等への対応を確認する
電子カルテ情報共有サービスへの接続インターフェース、または要件を満たす地域医療情報ネットワークの活用などが関係します。地域医療情報ネットワークへの参加だけが絶対条件というわけではなく、選択肢の一つとして整理する必要があります。
③ マイナ保険証利用率30%以上の維持・継続
マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけでなく加算3・加算2でも必要となる共通要件です。窓口での案内や利用率の確認を継続しておくことが大切です。
このため実務上は、まず加算3、次に電子処方箋導入等を踏まえた加算2を現実的な着地点として整理し、その後の動向を見ながら加算1への移行可能性を検討する流れが分かりやすいと思います。
6.見落としやすい実務上の注意点
制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。
また、マイナ保険証利用率30%以上などは、地方厚生局へ個別に証明書類を提出する必要はありません。一方で、実績に基づいて判定されるため、窓口での案内や院内での確認を継続しておく必要があります。
なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算(1点)は併算定できません。たとえば加算3を算定する場合でも、これまで明細書発行体制等加算を算定していた医療機関では、実質的な増点は3点として捉える方が分かりやすい場面があります。
まず確認したい相手
・レセコン/電子カルテベンダー:電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、明細書発行体制への対応状況
・院内スタッフ:マイナ保険証案内、掲示、患者説明の運用負荷
・地方厚生局の案内:届出様式、提出期限、電子申請の受付開始日
7.特に注意したいのは「再届出」
今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。
再届出の対象として確認したい医療機関
・2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている
・2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている
・2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい
6月1日から算定を開始するための届出期間は5月7日〜6月1日(必着)とされています。5月下旬は窓口混雑が予想されるため、可能な限り早めに準備しておきたいところです。
一方で、電子申請の受付は5月25日から開始されます。受付開始から6月1日までの期間が短いため、電子申請を使う場合も、事前に必要書類や院内確認を済ませておくことが重要です。
再届出で迷いやすいのは、「書類」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。
加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、電子処方箋や地域連携まで含めて考えるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。
制度を踏まえた上で、自院としての進め方を整理したい場合は、はじめて利用される方へでも考え方をまとめています。
制度対応を個別テーマごとに整理したい場合
2026年診療報酬改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料、生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。
院長の経営判断として整理したいテーマについては、以下の一覧にもまとめています。
院長の経営相談Q&A|記事一覧
8.まとめ
今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすいと思います。
加算3は、基本対応を整える出発点です。
加算2は、電子処方箋などを踏まえた現実的な上位ラインです。
加算1は、中長期的なDX投資や地域連携の方向性に合うかを見て判断する区分です。
ここまで整理しても、実際には「加算3で止めるか」「加算2まで進めるか」「電子処方箋導入を今やるか」「ベンダーに何を確認すべきか」で判断が止まることがあります。
判断が重くなり始めた段階で、ご相談いただくことがあります
制度対応は、要件を確認すれば終わるものではなく、自院としてどこまで対応するか、何を優先するかを考える場面で迷いやすいものです。
たとえば、加算3でまず整えるのか、加算2まで進めるのか、電子処方箋をいつ導入するのか、複数の届出の優先順位をどうつけるのか。こうした判断は、制度を読んだだけでは決めにくいことがあります。
相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。何から考えるべきかを整理するところから始まることも多くあります。
電子的診療情報連携体制整備加算に限らず、複数の制度対応が重なり、院内での優先順位や進め方を整理したい先生は、下記ページもご覧ください。