開業検討・準備、クリニック運営、制度対応などで、 何から考えるべきか分かりにくくなったときに。 採用、院内運用、制度対応、システム導入など、 重なっているテーマを整理し、 院長が次の判断をしやすい状態を整えます。

クリニック開業・経営コラム

電子的診療情報連携体制整備加算はどこまで対応すべきか ──加算3・加算2・加算1の順で整理する判断ポイント

本記事は、2026年5月9日時点の告示・通知・疑義解釈(その5:2026年5月8日発出)をもとに整理しています。実際の算定や届出では、最新情報および管轄する地方厚生局の案内をご確認ください。

2026年度診療報酬改定では、医療DX関連の評価が見直され、クリニックとしても「どこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。

特に実務上は、加算3・加算2・加算1のどれを目指すかだけでなく、マイナ保険証利用率30%以上を満たしているか、再届出を漏らさないか、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応をどこまで進めるかが判断ポイントになります。

この記事では、電子的診療情報連携体制整備加算について、共通要件を確認したうえで、加算3 → 加算2 → 加算1の順に、自院の現在地と判断ポイントを整理します。

制度上の要件を確認するだけでなく、既存システム、スタッフ体制、窓口運用、今後の診療方針を踏まえて、自院ではどこまで対応するのが現実的かを考えるための補助線としてお読みください。

2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。

1.まず整理しておきたい全体像

今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すかどうかを決めるより、まず自院がどの段階にいるかを確認する方が整理しやすくなります。

区分 初診時 位置づけ 確認したいこと
加算3 4点 基本対応 まず土台となる体制を満たせるか
加算2 9点 追加対応 電子処方箋等を含めて一段上を目指せるか
加算1 15点 高度対応 設備・運用・今後の方向性まで含めて合うか

※加算1・2・3の区分があるのは初診時です。再診時は区分にかかわらず、全区分共通で月1回2点の算定となります。

医療DXだけでなく、制度対応全体で優先順位を整理する

2026年改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料や生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。

ベースアップ評価料の届出判断については、以下の記事でも整理しています。
ベースアップ評価料は届出すべきか|期限と実務スケジュールを院長向けに整理

2.全区分に共通する基本要件

加算3・2・1の違いを見る前に、まず全区分に共通する基本要件を確認しておく必要があります。

オンライン請求、オンライン資格確認、診察室等で診療情報を閲覧できる体制、明細書の無償交付、健康相談体制、院内掲示・ホームページ掲載などは、基本となる対応です。

また、マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけの要件ではなく、加算3・加算2・加算1に共通する重要な前提です。

※マイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。6月算定開始を目指す場合は原則3月実績が基準ですが、直近の4月または5月の実績を用いることも認められています。

3.まず現在地を確認しやすい「加算3」

まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックでは、加算3から現在地を確認する流れが考えやすいかもしれません。

加算3から確認しやすいクリニックの例

  • まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
  • 紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
  • 電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
  • まず算定できる区分を安定して押さえたい

自院の現在地チェック(加算3)

□ オンライン請求を実施している

□ オンライン資格確認を導入している

□ 診察室等で必要な診療情報を閲覧できる体制がある

□ マイナ保険証利用率30%以上を確認している

□ 明細書の無償交付を行っている

□ 院内掲示とホームページ掲載に対応できる

なお、これまで一部の診療所で認められていた「明細書無料発行の義務の免除規定(正当な理由)」について、今回の改定で直ちに廃止されるわけではありません。

一方で、令和10年(2028年)以降の標準型レセプトコンピュータ提供が実施される時期を目途に、免除規定自体を廃止する方針が示されています。自院のシステム対応が将来的にどう必要になるかを見据えておく必要があります。

4.一段上の対応として考える「加算2」

加算2は、加算3の基本対応を整えたうえで、さらに一段上の対応を検討する区分です。

加算3の基本要件に加えて、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、情報共有ネットワーク等の追加要件のうち、いずれかを満たすことで検討しやすくなります。

電子処方箋については、運用開始日の登録や、厚生労働省ウェブサイト上で電子処方箋対応施設として公表されている状態が求められます。一方、電子カルテ情報共有サービスについては、国側の稼働状況や公表ページ等の整備状況を踏まえた確認が必要です。

加算2を検討する際に見ておきたいこと

  • 電子処方箋の導入を現実的に進められるか
  • 電子カルテ情報共有サービスへの対応状況を確認しているか
  • マイナ保険証の利用が少しずつ定着してきているか
  • 加算3で止めるより、一段上を目指す意味があるか

迷いやすいのは、要件確認よりも「どこまで進めるか」です。

加算3でまず整えるのか、加算2まで進めるのか、加算1を視野に入れるのかは、点数だけでは決めにくい判断です。自院の人員、窓口運用、ベンダー対応、他の届出との優先順位まで含めて整理する必要があります。

5.加算1は「取る意味があるか」で考える

加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては「最上位だから目指す」というより、点数差だけでなく、自院の今後の方向性に合っているかで考えたい区分です。

① 電子処方箋の導入が重要になる

電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を登録できる体制が必要になります。

② 電子カルテ情報共有サービス等への対応を確認する

電子カルテ情報共有サービスへの接続インターフェース、または要件を満たす地域医療情報ネットワークの活用などが関係します。地域医療情報ネットワークへの参加だけが絶対条件というわけではなく、選択肢の一つとして整理する必要があります。

③ マイナ保険証利用率30%以上の維持・継続

マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけでなく加算3・加算2でも必要となる共通要件です。窓口での案内や利用率の確認を継続しておくことが大切です。

そのため、まず加算3で基本対応を確認し、次に電子処方箋導入等を踏まえた加算2を検討し、その後のシステム対応や診療方針を見ながら加算1への移行可能性を考える、という順番で整理すると判断しやすくなります。

6.見落としやすい実務上の注意点

制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。

ただし、自ら管理するホームページ等を有していないクリニックについては、ウェブサイトへの掲載要件は免除されます。すでに自院ホームページを運用している場合は、掲載内容の見直しも含めて確認しておきたいところです。

また、マイナ保険証利用率30%以上などは、地方厚生局へ個別に証明書類を提出する必要はありません。一方で、実績に基づいて判定されるため、窓口での案内や院内での確認を継続しておく必要があります。

なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算(1点)は併算定できません。これまで明細書発行体制等加算を算定していた医療機関では、加算3を算定した場合、初診時は実質+3点、再診時は実質+1点の増点として捉える方が、収益インパクトを確認しやすい場面があります。

まず確認したい相手

  • レセコン/電子カルテベンダー:電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、明細書発行体制への対応状況
  • 院内スタッフ:マイナ保険証案内、掲示、患者説明の運用負荷
  • 地方厚生局の案内:届出様式、提出期限、電子申請の受付開始日

7.特に注意したいのは「再届出」

今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。

再届出の対象として確認したい医療機関

  • 2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている
  • 2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている
  • 2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい

6月1日から算定を開始するための届出期間は5月7日〜6月1日(必着)とされています。

また、厚生労働省からの疑義解釈においても、可能な限り5月18日までの届出に努めることが示されています。5月下旬は窓口混雑が予想されるため、早めに準備しておきたいところです。

一方で、電子申請の受付は5月25日から開始されます。受付開始から6月1日までの期間が短いため、電子申請を使う場合も、事前に必要書類や院内確認を済ませておくことが重要です。

再届出で迷いやすいのは、「書類」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。

加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、電子処方箋や地域連携まで含めて考えるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。

制度の要件を確認したうえで、自院としての進め方を整理したい場合は、判断整理の進め方を見るもご確認ください。

制度対応を個別テーマごとに整理したい場合

2026年診療報酬改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料、生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。

院長の経営判断として整理したいテーマについては、以下の一覧にもまとめています。
院長の経営相談Q&A|記事一覧

8.まとめ

今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすくなります。

  • 加算3は、基本対応を整える出発点です。
  • 加算2は、電子処方箋などを踏まえた一段上の対応です。
  • 加算1は、中長期的なDX投資や地域連携の方向性に合うかを見て判断したい区分です。

ここまで整理しても、実際には「加算3で止めるか」「加算2まで進めるか」「電子処方箋導入を今やるか」「ベンダーに何を確認すべきか」で判断が止まることがあります。

制度の正解を探すだけでなく、自院の現状、スタッフ体制、患者対応、システム更新の予定を重ねて考えることで、判断の前提が見えやすくなります。

制度の違いは分かった。では、自院ではどこまで対応するか。

電子的診療情報連携体制整備加算は、加算3・加算2・加算1の違いを確認するだけで判断が終わるとは限りません。

加算3でまず整えるのか。
加算2まで進めるのか。
電子処方箋をいつ導入するのか。
他の届出や院内運用との優先順位をどう考えるのか。

制度の要件を確認すれば自動的に答えが決まるテーマではなく、自院の現状を重ねて考える必要があります。

記事では、制度の要点と一般的な判断材料を整理しました。

一方で、自院の患者層、スタッフ体制、既存システム、今後の診療方針を前提にした整理は、個別に状況が変わります。

自院の状況を前提に整理したい場合は、個別に判断整理をご一緒しています。

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