求人を出しても応募が来ない|クリニック採用で院長からよくある相談【経営相談Q&A】
クリニック経営の相談の中で、採用に関する悩みを伺うことがあります。
「求人を出しても応募が来ません」
「採用してもすぐ辞めてしまいます」
「給与を上げれば解決するのでしょうか」
医療機関では人材不足が続いているため、「採用が難しいのは仕方がない」と感じる場面もあると思います。
もちろん、人材不足という社会背景はあります。
ただ、相談内容を整理していくと、それだけでは説明しきれないケースも少なくありません。
採用の問題に見えていても、実際には、役割・働き方・院長の考え方が十分に整理されていないことが背景にある場合があります。
今回は、求人を出しても応募が来ない、採用しても定着しないときに、院長からよくある相談をもとに、まず整理しておきたい論点をまとめます。
採用のテクニックや求人媒体の選び方ではなく、採用活動の前に整理しておきたい現状・役割・働き方・院長の考え方に焦点を当てています。
採用が決まらないとき、まず整理したいこと
採用がうまくいかないとき、多くの場合は次のような理由が挙がります。
- 求人媒体の選び方や見せ方の問題
- 人材紹介会社を使うかどうかの問題
- 給与や勤務条件の問題
- そもそも働き手が少ないという人材不足の問題
もちろん、これらは重要な論点です。
求人媒体を見直す、人材紹介会社に相談する、給与や勤務条件を調整する。
いずれも採用活動では検討すべき選択肢です。
ただ、実務上は、給与を上げても応募が増えない、求人媒体を変えても反応が弱い、人材紹介会社から紹介を受けても採用後に定着しない、ということもあります。
そのときに一度立ち止まって考えたいのが、クリニックの現状が整理できているかという点です。
具体的には、クリニック側が求めている働き方と、求職者が求めている働き方が噛み合っているかを確認する必要があります。
採用は、条件の勝負だけではありません。
求職者が「ここで働くイメージを持てるか」「自分に合いそうだと思えるか」も大きく関係します。
採用相談で整理する5つの論点
① クリニック側が求めている役割が曖昧になっていないか
同じ「受付」や「医療事務」でも、クリニックによって任せる範囲は大きく異なります。
- 受付・会計が中心なのか
- 電話対応や予約管理まで含むのか
- レセプト業務まで期待するのか
- 診療補助や患者説明まで関わるのか
この役割が曖昧なまま求人を出すと、求職者は「自分にできそうか」「負担はどの程度か」を判断しにくくなります。
その結果、応募が起きにくくなったり、採用後に「思っていた仕事と違う」と感じられたりすることがあります。
採用を考える前に、まずは誰に、何を、どこまで任せたいのかを整理する必要があります。
② 求職者が求める働き方が変わっていないか
以前は、医療機関で働く安定性そのものが魅力になりやすい時期もありました。
しかし現在は、求職者が重視するポイントも変わってきています。
- 勤務日数や勤務時間
- 残業の有無
- 家庭や子育てとの両立
- 任される業務の範囲
- 職場の雰囲気や人間関係
クリニック側が「これくらいは当然」と考えている働き方と、求職者が求めている働き方にズレがあると、条件を整えても応募が集まりにくくなります。
人材不足という言葉だけで片づけるのではなく、求職者側の前提が変わっていると捉えると、見直すべき点が整理しやすくなります。
③ 院長が何を大切にしているか伝わっているか
求職者は、給与や勤務時間だけで職場を選んでいるわけではありません。
「どんな院長なのか」「どんな診療を大事にしているのか」「スタッフにどのような関わり方を求めているのか」も見ています。
- どのような患者さんが多いのか
- どのような診療スタイルなのか
- 忙しさの質はどうか
- スタッフに期待していることは何か
- 院長が大事にしている価値観は何か
院長の考え方が見えない求人は、求職者にとって判断材料が少ない状態です。
採用は、条件を並べるだけでなく、どのような職場なのかを伝えることでもあります。
④ まずは現状を整理し、採用で解決すべき問題かを確認する
人が足りないと感じると、すぐに採用で補おうと考えがちです。
しかし、相談内容を整理していくと、そもそも業務が膨らみすぎている、役割分担が曖昧になっている、システムで減らせる作業が残っている、というケースもあります。
- 本当に人を増やす必要があるのか
- 今いるスタッフの業務が偏っていないか
- 減らせる業務はないか
- 外部に任せられる業務はないか
- DXやシステムで置き換えられる作業はないか
採用が必要に見えても、まず現状を整理し、業務を見直した方がよい場合があります。
採用手段としては、求人媒体、人材紹介会社、知人紹介など様々な方法があります。
どの手段を選ぶかも重要ですが、その前に「どのような人を求めているのか」「何を任せたいのか」が整理されていないと、紹介を受けてもミスマッチが起きやすくなります。
業務の全体像が整理されると、「どんな人が必要なのか」「どの時間帯に人が必要なのか」「どの業務を任せたいのか」が明確になります。
現状を整理した結果、必ずしも採用が最優先とは限りません。
例えば、
- 予約システムやWEB問診の見直し
- 業務フローの整理
- 外部サービスの活用
- 一部業務の委託
などによって、採用以外の方法で改善できる場合もあります。
採用の前に整理したいこと
- 本当に採用が必要なのか
- 何を任せたいのか
- 採用以外の選択肢はないのか
そのため、まずは現状を整理し、「本当に採用が必要なのか」「採用以外にできることはないのか」を確認することが大切です。
⑤ 採用を「欠員補充」だけで考えていないか
スタッフの退職が決まると、急いで求人を出す必要が出てきます。
もちろん、現場を止めないためには、緊急対応が必要な場面もあります。
ただ、採用が「辞めたから補充する」という作業だけになると、働き方の前提を見直す機会が失われやすくなります。
本来、採用は単に人数を揃えることではありません。
クリニックとして、今後どのような診療体制をつくりたいのか。
スタッフにどのような役割を担ってもらいたいのか。
院長自身がどこまで関わり、何を手放していくのか。
こうした点を整理する機会でもあります。
採用の前に、現状整理から始めることもある
採用について相談をいただいたとき、最初から求人票や求人媒体の話をするとは限りません。
むしろ、次のような点から現状を確認することがあります。
- どの職種を採用したいのか
- その人に何を任せたいのか
- 今いるスタッフとの役割分担はどうなっているのか
- 院長が本当に困っていることは何か
- 採用以外で整理できることはないか
なぜなら、前提が曖昧なまま求人を出しても、採用後のミスマッチにつながる可能性があるからです。
採用の問題に見えていても、実際には業務設計、スタッフとの関係、院長の考え方、診療体制の整理が関係していることがあります。
そのため、求人を出す前に一度、現状を整理し、採用で何を解決したいのかを確認しておくことが大切です。
採用の悩みは、現状整理から始まる
採用がうまくいかないとき、求人媒体や給与条件を見直すことは一つの方法です。
ただ、それだけで解決しない場合は、採用活動の前提を見直す必要があります。
- クリニックとしてどのような働き方を提供できるのか
- スタッフに何を担ってもらいたいのか
- 求職者に何を伝える必要があるのか
- 採用で解決する問題と、業務整理で解決する問題を分けられているか
採用は、単に人を集めることではありません。
クリニックの働き方を整理し、院長の考えを言語化する機会でもあります。
採用の問題に見えていても、実際には採用以外の論点が隠れていることがあります。
だからこそ、求人の出し方を考える前に、
- 何が問題なのか
- 何を解決したいのか
- 採用以外の選択肢はないのか
を整理することが大切です。
現状が整理できると、採用を進めるべきなのか、仕組みを見直すべきなのか、システムや外部支援の導入を検討すべきなのかが見えやすくなります。
もし、
- 求人を出しても応募が来ない
- 採用しても定着しない
- どんな人を採用すべきか整理できていない
- 求人の前に、院内の役割や業務を見直したい
という状態であれば、求人の出し方を考える前に、一度、採用の前提と現状を整理してみることをおすすめします。
採用の悩みを、求人だけで考えないために
採用が決まらない背景には、求人媒体や給与条件だけでなく、現状・役割分担・働き方・院長の考え方の整理が関係していることがあります。実際にどのような経営相談があるのか知りたい方は、相談事例をご覧ください。