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クリニック開業・経営コラム

クリニックの採用が決まらない理由|院長が見落としやすい5つのポイント【経営相談Q&A】

クリニック経営の相談の中で、よく聞く悩みの一つがあります。

「求人を出しても応募が来ません」
「採用してもすぐ辞めてしまいます」

医療機関では人材不足が続いているため、「採用が難しいのは仕方がない」と感じることもあると思います。

もちろん、人材不足という社会背景もあります。
ただ、実際の相談を整理していくと、それだけでは説明できないケースも少なくありません。

話を進めるうちに見えてくるのは、働き方のミスマッチです。

求職者が求めている働き方(需要)と、クリニック側が想定している働き方(供給)が合っていないと、応募が集まりにくくなります。採用できたとしても、働き方のイメージが違って短期離職につながることがあります。

今回は、クリニックの採用が決まらないときに、院長が見落としやすいポイントを5つに分けて整理します。

この記事の立ち位置
採用の「テクニック」よりも、採用が動き出す前に必要な前提整理(役割・働き方・院長の考え)に焦点を当てます。

クリニックの採用が決まらない理由とは

採用がうまくいかないとき、多くの場合は次のような理由が挙がります。

  • 求人媒体(出し方・見せ方)の問題
  • 給与や条件の問題
  • そもそも働き手が少ない(人材不足)

もちろん、これらも一因になり得ます。
ただ、実務の場では「条件を上げても決まらない」「媒体を変えても反応がない」ということも起きます。

そのときに疑いたいのが、働き方のミスマッチです。

採用は、条件の勝負というよりも、
求職者が求める働き方と、クリニックが提供する働き方が噛み合っているかの問題になっていることがあります。

院長が見落としやすい5つのポイント

① クリニック側が求めている「役割」が曖昧

働き方が多様化している今、「何をするのか」が曖昧な求人は、応募が集まりにくくなります。

たとえば、同じ「受付」でも、クリニックによって役割は違います。

  • 受付・会計中心なのか
  • 電話対応やレセプトまで含むのか
  • 診療補助や患者説明まで期待するのか

役割が曖昧なままだと、求職者は「自分にできるか」「負担がどれくらいか」を判断できません。
結果として応募が来ないだけでなく、採用できたとしても「思っていた働き方と違う」となり、短期離職につながることがあります。

② 求職者が求める働き方(需要)が変わっている

以前は「医療機関で働く安定性」そのものが魅力になりやすい時期もありました。
しかし今は、求職者が重視する軸が変わっています。

  • 働く時間(週何日・何時まで・残業の有無)
  • 役割(どこまで担うのか/担わないのか)
  • 職場の雰囲気(忙しさ・人間関係・院長の関わり方)

ここが噛み合っていないと、条件だけ整えても応募が集まりにくくなります。
「人材不足」というよりも、需要側の前提が変わっていると捉えた方が整理しやすい場面があります。

③ 院長の考え(思想)が言語化されていない

求職者は、条件だけでなく「どんな職場なのか」を知りたいと思っています。

  • どんな診療を大事にしているのか
  • 患者層はどんな感じか
  • 忙しさの質(急性期が多い/慢性が多い など)
  • スタッフに何を期待するのか

院長の考えが見えないと、求職者は「合うかどうか」を判断できません。
その結果、応募が起きにくくなったり、採用後の違和感につながったりします。

④ 「人がいない」を前提に、業務の見直しが止まっている

医療機関で働き手が少ない状況は、現実としてあります。
ただ、その状況を前提にすると、採用だけで解決しようとしてしまいがちです。

一方で、採用が難しい局面では、次のような選択肢が「現実的な整理」になることもあります。

  • 業務の棚卸し(やらなくていい業務/減らせる業務の整理)
  • 外部支援の活用(委託できるものを切り分ける)
  • DXの導入(人に依存していた業務を仕組みに寄せる)

業務が整理されると、「どんな人が必要か」「どこに人手が要るのか」が明確になり、結果として採用も動きやすくなります。

⑤ 採用が「作業」になっている

退職が出るたびに「補充」として採用活動を行うケースも見られます。
もちろん、緊急対応が必要なときもあります。

ただ、採用が作業化すると、働き方のミスマッチが起きやすくなります。
なぜなら、採用の前提となる整理(役割・期待・働き方)が置き去りになりやすいからです。

採用は本来、単に人数を揃えることではなく、
クリニックの働き方を再設計する機会にもなります。

採用は「働き方の整理」でもある

採用がうまくいかないとき、求人媒体や給与条件を見直すことは、もちろん一つの手です。
ただ、相談の現場では、採用のつまずきが「求人の打ち手」ではなく、働き方の噛み合わせから起きていることも少なくありません。

採用は、単に人を集めることではなく、

  • クリニックとして何を提供するのか(役割)
  • スタッフに何を担ってもらうのか(役割)
  • どんな働き方を成立させたいのか(供給)

こうした前提を整理することでもあります。

もし、

  • 採用がうまくいかない理由が掴めない
  • 求める役割が言語化できていない気がする
  • 院長としての考えをどう伝えるべきか迷っている

という状態であれば、求人の前に一度、働き方の整理から始めてみるのも一つの方法です。

採用の悩みを「働き方の整理」からほどいてみる

採用は、条件を足す前に「役割・働き方・院長の考え」を整えることで、次の一手が見えやすくなることがあります。開業準備中〜開業後の院長向けに、考えを整理するセッションをご用意しています。

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