スタッフの産休・育休や退職によって欠員が出ると、多くの院長は「早く採用しなければ」と考えます。
もちろん、採用が必要なケースもあります。けれども、欠員が出たからといって、すぐに求人募集を始めることだけが唯一の選択肢とは限りません。
大切なのは、まず現状を整理し、何が不足するのか、どの対応が自院に合っているのかを見極めることです。
今回は、産休代替スタッフの採用を検討していたクリニックで、業務や体制を整理した結果、「今回は新たに採用しない」という判断になった事例をご紹介します。
1. 欠員が出たとき、最初に整理したこと
ある院長先生から、「スタッフが産休に入るため、その期間を埋める代替スタッフを募集したい」とご相談をいただきました。
院長先生としては、現場が回らなくなる不安があり、求人広告の予算や募集開始の時期についても考え始めている状況でした。
ただ、私はすぐに求人票を作るのではなく、まず現状を整理することをご提案しました。
具体的には、次のような点を一緒に確認していきました。
- 産休・育休に入るスタッフが、現在どの業務を担っているのか
- その業務は、どの頻度で発生しているのか
- その方が不在になった場合、どの業務に影響が出るのか
- 既存スタッフが担うことになる業務量はどの程度か
- 産休・育休の予定期間はどのくらいか
- 復帰後の働き方は、現時点でどのように想定されるのか
産休代替の場合、一時的な欠員なのか、長期的な体制見直しが必要なのかによって、取るべき対応は変わります。
そのため、「人が一人いなくなる」という事実だけで判断するのではなく、どのくらいの期間、どの業務が、どの程度不足するのかを言語化することから始めました。
2. 業務を言語化して見えてきたこと
業務を一つひとつ整理していくと、単に「人が足りない」という話ではなく、いくつかの論点が見えてきました。
たとえば、その方が担っていた業務の中には、既存スタッフで対応できるものもあれば、引き継ぎに注意が必要なものもありました。
また、その方しか把握していない業務がないか、つまり業務の属人化が起きていないかも確認しました。
欠員対応を考えるときに大切なのは、すぐに「採用するか、しないか」を決めることではありません。
まず、現場で何が起きるのかを見える状態にすることです。
業務を言語化すると、採用以外の対応を検討しやすくなります。既存スタッフで役割分担を調整できるのか、運用を少し見直せば対応できるのか、あるいはやはり新たな採用が必要なのかを比較しやすくなるからです。
また、仮に求人を出す場合でも、業務を言語化しておくことには意味があります。
「受付業務」「医療事務業務」といった抽象的な表現だけでは、求職者は入職後の働き方を具体的にイメージしにくいことがあります。
どのような業務を担当するのか、どのような役割を期待しているのかを整理しておくことで、求人票にも具体的な内容を書きやすくなります。
求職者にとっても、実際の仕事内容をイメージしやすくなるため、採用する場合にも業務整理は大切な前提になります。
3. 今回は「採用しない」という判断になった
現状を整理したうえで、採用、既存スタッフでの役割調整、業務運用の見直しなど、いくつかの対応策を比較しました。
その結果、このクリニックでは、今回は新たにスタッフを募集しないという判断になりました。
これは、「採用しないことが正解だった」という話ではありません。
今回の状況では、採用にかかる時間やコスト、入職後の教育負担、既存スタッフとの役割調整などを考えると、まずは既存体制の見直しで対応する方が現実的だと整理された、ということです。
別のクリニックであれば、採用が最も適した選択肢になることもあります。
大切なのは、最初から結論を決めることではなく、現状を整理し、選択肢を比較できる状態にすることです。
今回はその結果として、「採用しない」という判断になりました。
4. 私が大切にしていること
私は、採用するべきかどうかを決める立場ではありません。
また、「採用しない方がよい」と決めつけるつもりもありません。
大切にしているのは、院長先生が焦りの中で判断する前に、現状を整理し、論点を言語化し、次の行動に移りやすい状態をつくることです。
欠員対応に限らず、クリニック経営では判断が求められる場面が数多くあります。
採用、システム導入、業者からの提案、診療体制の見直し、スタッフ配置の変更。
どれも、すぐに答えを出したくなる場面です。
しかし、判断の前提が整理されていないまま動き出すと、あとから「本当にそれでよかったのか」と迷いが残ることもあります。
今回の事例は、現状を整理して、次の行動に移すための一つの例です。
採用するかどうかを決める前に、まず何が起きているのかを整理する。
その過程で、自院に合った選択肢が見えてくることがあります。
同じように、判断が重くなっていることはありませんか
スタッフの欠員対応、採用、業務分担、システム導入、業者提案など、クリニック経営では「決めなければいけないけれど、すぐには決めきれない」場面があります。
まえやまだ純商店では、答えを急ぐ前に、まず現状や論点を整理し、次の行動に移りやすい状態をつくることを大切にしています。
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