電子カルテ情報共有サービスとは?クリニックは今、何を準備すべきか【2026年】
本記事は、厚生労働省が公表した電子カルテ情報共有サービスに関する説明内容をもとに、クリニック経営者向けに整理しています。全国運用開始日や具体的な運用方法、支援内容などは今後変更・追加される可能性があります。実際に対応する際は、最新の厚生労働省資料や、利用中の電子カルテ・レセコンのベンダーからの案内をご確認ください。
電子カルテ情報共有サービスについて、2026年度冬ごろの全国運用開始を目指して準備が進められています。
「新しいサービスが始まるなら、電子カルテを買い替えた方がよいのか」
「今から何か準備しなければならないのか」
と考える院長先生もいるかもしれません。
先に結論をお伝えすると、現時点で、電子カルテ情報共有サービスへの対応だけを理由に、慌てて電子カルテを入れ替える必要はないと考えます。
一方で、現在利用している電子カルテやレセコンが今後どのように対応する予定なのか、患者情報の登録方法に問題がないか、院内独自のマスターがどの程度あるのかなど、今から確認できることもあります。
本記事では、電子カルテ情報共有サービスの概要と、全国運用開始を見据えてクリニック経営者が今確認しておきたいこと、まだ待ってよいことを整理します。
目次
1.電子カルテ情報共有サービスとは
電子カルテ情報共有サービスは、電子カルテに登録された診療情報を、全国の医療機関等や患者本人と共有するための仕組みです。
これまで、患者さんが別の医療機関を受診した際、診療情報提供書や患者さんからの聞き取りなどを通じて情報を確認する場面がありました。
電子カルテ情報共有サービスが利用できるようになると、一定の診療情報について、医療機関同士で電子的に共有できるようになります。
また患者さん自身も、共有対象となる情報の一部をマイナポータルで確認できるようになることが予定されています。
期待されていること
- 紹介先へ診療情報を電子的に送る
- 他の医療機関で登録された臨床情報を確認する
- 患者さん自身が診療情報などを確認する
- 医療機関間の情報共有をより迅速に行う
単に電子カルテ同士をつなぐというだけでなく、今後の医療DXを支える全国的な情報共有基盤の一つとして整備が進められています。
2.どのような情報が共有されるのか
電子カルテ情報共有サービスでは、大きく分けて文書情報と臨床情報の共有が想定されています。
文書情報
- 診療情報提供書
- 退院時サマリー
- 健康診断結果報告書など
診療情報提供書などについては、患者さんへ相手先医療機関に情報を送る旨を説明したうえで、電子カルテから作成し、相手先へ電子的に送信できるようになります。
臨床情報
- 傷病名
- 感染症情報
- 検査情報
- 薬剤アレルギー
- その他のアレルギー情報など
これらについては、日常診療の中で電子カルテに登録している情報が共有される仕組みとなるため、基本的には情報共有のためだけに毎回特別な操作を行うものではないとされています。
患者さんへの説明が必要になる情報もあります
傷病名や感染症情報など、一部の情報については、患者さんへの説明や、マイナポータルで閲覧できるようにするための共有設定などが必要になります。
そのため、システムが対応すれば終わりではなく、実際の運用開始までには、診療時の説明方法や院内での取り扱いについても確認する必要があります。
3.全国運用開始=すぐにすべてのクリニックで使えるわけではない
電子カルテ情報共有サービスについて、「全国運用が始まれば、その日から自院でも使える」と考えてしまうかもしれません。
しかし、厚生労働省の説明における「運用開始」は、まず電子カルテ情報共有サービスの中央基盤が利用できる状態になることを意味しています。
その後、電子カルテベンダーによる対応や、各医療機関への導入、設定・テストなどが必要になります。
中央基盤の運用開始
↓
電子カルテベンダーによる対応
↓
医療機関への導入・設定
↓
運用テスト・連携テスト
↓
発生したエラーへの対応
↓
各医療機関での運用開始
つまり、全国運用開始後も、実際に利用できる時期は医療機関や使用している電子カルテによって異なる可能性があります。
今後、現在利用している電子カルテメーカーやレセコンベンダーから、対応時期や必要な手続きについて案内が出てくることが考えられます。
4.モデル事業ではエラーも発生している
電子カルテ情報共有サービスでは、全国のモデル地域で検証が進められてきました。
厚生労働省の説明では、モデル事業開始当初、臨床情報を登録する際のエラー率が80%を超えていたとされています。
その後、システムや運用方法の見直しなどによってエラーは大きく減少しましたが、その後も一定のエラーが発生しています。
ここでクリニック経営者として押さえておきたいのは、すべてのエラーがシステムベンダー側だけの問題ではないという点です。
医療機関側に登録されている患者情報と、オンライン資格確認で確認される情報が一致していないことによって発生するエラーもあります。
エラーの原因として挙げられている例
- オンライン資格確認導入以前の古い患者情報が残っている
- 資格情報を手入力した際に正しく登録されていない
- 一時的に登録した仮の患者情報が残っている
- 資格情報の一部が正しく登録されていない
電子カルテ情報共有サービスの導入を考える前に、現在の患者情報がどのように登録・更新されているのかを確認しておくことも、準備の一つになります。
5.今から確認しておきたい患者資格情報
厚生労働省からは、オンライン資格確認で返却された枝番を含む資格情報をレセコンへ正しく登録することや、入力漏れを防ぐ運用を整えることが示されています。
これは電子カルテ情報共有サービスのためだけに、新たな大規模作業を始めるという意味ではありません。
まずは、
- オンライン資格確認で得た情報をどのようにレセコンへ反映しているのか
- 手入力する場面があるのか
- 古い情報や仮登録した情報が残ることはないか
- 情報を更新する際の院内ルールが決まっているか
といった、現在の受付・医事業務の流れを確認しておくとよいでしょう。
システム導入後に大量のエラーが見つかってから修正するよりも、普段の運用の中で正しい情報が登録される仕組みになっているかを確認する方が、今後の対応を進めやすくなります。
6.マスターマッピングとは
電子カルテ情報共有サービスへの対応では、マスターマッピングという作業も必要になります。
医療機関では、検査項目やアレルギー情報などについて、院内独自の名称やコードを使用している場合があります。
全国の医療機関で情報を共有するためには、それぞれの医療機関で使用しているコードを、全国共通の標準マスターコードと紐付ける必要があります。
この紐付け作業がマスターマッピングです。
マッピングの対象として確認したい例
- 院内独自の検査項目
- アレルギー物質の登録
- その他、院内独自のコードや名称を使用している情報
マスターマッピングは、医療機関の登録状況によっては時間がかかる作業になる可能性があります。
そのため、厚生労働省から今後公表されるマニュアルや、電子カルテベンダーからの案内を確認しながら、必要に応じて事前準備を進めることになります。
ただし、院長自身がすべてのマスターを確認して作業するというよりも、まずは自院ではどのような対応が必要になるのかをベンダーへ確認することから始めてよいでしょう。
7.電子カルテを今すぐ買い替える必要はあるのか
電子カルテ情報共有サービスへの対応が進むと、
「現在の電子カルテでは対応できないかもしれないので、今のうちに買い替えた方がよいのではないか」
と考えることもあるかもしれません。
しかし、現時点で、電子カルテ情報共有サービスへの対応だけを理由に買い替えを決める必要はないと考えます。
まず、現在利用している電子カルテやレセコンのベンダーに、次のような内容を確認する方が先です。
ベンダーへ確認したいこと
- 現在利用している電子カルテは電子カルテ情報共有サービスに対応する予定か
- いつ頃対応する予定か
- 現在の契約のまま利用できるのか
- 追加契約や追加費用が必要か
- システムの更新や機器追加が必要か
- 院内側でどのような準備が必要か
- マスターマッピングはどのように進めるのか
- 受付や診療時の運用はどのように変わるのか
確認した結果、現在のシステムで対応できるのであれば、買い替える必要はないかもしれません。
逆に、現在の電子カルテでは対応が難しく、ちょうど更新時期が近づいているのであれば、その時点で次のシステムを検討するという考え方もあります。
「制度が始まるから買い替える」ではなく、現在の契約・更新時期・費用・院内運用を確認してから判断することが重要です。
8.電子カルテ更新時に確認したいこと
一方、これから開業するクリニックや、近いうちに電子カルテの更新を予定しているクリニックでは、電子カルテ情報共有サービスへの対応状況を選定項目の一つに加えてよいでしょう。
これからの電子カルテ選定では、
- 操作しやすいか
- 費用はいくらか
- サポート体制はどうか
だけでなく、
- 電子カルテ情報共有サービスに対応する予定か
- 電子処方箋など、他の医療DXにも対応できるか
- 今後の制度変更にどのように対応する方針か
- 追加対応にどの程度の費用がかかるのか
といった点も確認したいところです。
「対応している」だけで決めない
医療DXへの対応機能が多いことだけで電子カルテを決める必要はありません。実際の診療フローとの相性、スタッフの使いやすさ、費用、サポート、既存システムとの連携なども含めて比較することが大切です。
長く利用するシステムだからこそ、今必要な機能と、今後必要になる可能性がある機能の両方を見ながら選ぶ必要があります。
9.今確認することと、まだ待ってよいこと
電子カルテ情報共有サービスについては、新しい制度だからといって、すべてを今すぐ決める必要はありません。
今確認できることと、今後の正式な情報を待ってから判断することを分けて考えると整理しやすくなります。
今から確認しておきたいこと
- 現在利用している電子カルテ・レセコンの対応予定
- 電子カルテ・レセコンの契約内容と更新時期
- オンライン資格確認情報をどのように登録しているか
- 古い患者情報や仮登録情報が残る可能性がないか
- 院内独自の検査マスターなどがどの程度あるか
- 今後、ベンダーからどのような案内が出る予定か
今後の情報を待ってから判断してよいこと
- 電子カルテの買い替え
- 新しいシステムの契約
- 電子カルテ情報共有サービスだけを目的とした大きな設備投資
- 院内業務フローの大幅な変更
今後、正式な全国運用開始日や、電子カルテベンダーごとの対応内容が明らかになれば、自院で必要になる対応も具体的になってきます。
現段階では、「何かを導入する」よりも、現在の自院のシステムや運用がどうなっているのかを把握しておくことを優先してよいでしょう。
10.導入するかだけでなく、自院でどう使うかを考える
医療DXについては、新しい制度やシステムが出るたびに、
「導入するか、しないか」
という話になりがちです。
しかし、クリニック経営では、導入の有無だけで判断するのではなく、導入した後に院内でどのように運用するのかまで考える必要があります。
新しいシステムによって受付や診療の流れが変われば、スタッフへの説明が必要になります。
患者さんへの説明方法を決める必要が出てくる場合もあります。
追加費用が発生するのであれば、その費用に対してどの程度のメリットがあるのかも確認したいところです。
導入前に考えたいこと
- 現在のシステムで対応できないのか
- 院内の業務はどのように変わるのか
- スタッフの負担は増えるのか、減るのか
- 患者さんへの説明はどうするのか
- 追加費用はいくらか
- 今、本当に対応する必要があるのか
- 次回のシステム更新と合わせた方がよいのか
制度への対応だけを見るのではなく、現在のシステム、スタッフ体制、費用、更新時期などを踏まえて、「自院ではどうするのか」を考えることが大切です。
11.まとめ
電子カルテ情報共有サービスは、2026年度冬ごろの全国運用開始を目指して準備が進められています。
ただし、中央基盤の運用が始まったからといって、すべてのクリニックがその日から一斉に利用を開始するわけではありません。
電子カルテベンダーによる対応や、医療機関側での設定・テスト、発生したエラーへの対応などを経て、各医療機関が順次利用を開始することになります。
現時点での考え方
- 電子カルテ情報共有サービスのためだけに、慌てて電子カルテを買い替えない
- まず現在の電子カルテ・レセコンの対応予定を確認する
- 患者資格情報が正しく登録される院内運用になっているか確認する
- 院内独自のマスターがある場合は、今後の対応方法を確認する
- 電子カルテの更新時期が近い場合は、次回選定時の確認項目に加える
- 正式なスケジュールやベンダー対応が明らかになってから決めることは、今すぐ決めない
新しい制度が示されると、「何を導入すればよいか」に目が向きやすくなります。
しかし、まず確認したいのは、自院の現在のシステムや院内運用がどうなっているのかです。
そのうえで、費用や更新時期、スタッフへの影響なども確認しながら、自院としていつ、どこまで対応するのかを考えていくことが重要です。
制度への対応を、自院ではどう考えるか整理したいときに
電子カルテ情報共有サービスへの対応は、現在利用している電子カルテやレセコン、契約内容、更新時期、院内の業務フローなどによって異なります。
新しいシステムを導入することを前提にするのではなく、まず現在の状況やベンダーからの提案を整理し、自院としてどこまで対応するのかを考えることもできます。
まえやまだ純商店では、クリニック経営で判断に迷ったときに、現在の状況や選択肢、確認したいことを整理し、院長が「自院ではどうするのか」を考えやすい状態づくりを支援しています。
無料相談は原則1回です。契約を前提としたものではありません。
参考
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」医療機関向け説明動画
https://www.youtube.com/watch?v=M9QhnXhXmm8
※本記事は、公開されている説明内容をクリニック経営者向けに整理したものです。実際の導入・運用にあたっては、最新の厚生労働省資料および利用中のシステムベンダーからの案内をご確認ください。
