クリニック開業の準備期間はどれくらい?|半年スケジュール型と長期準備型のリアル
「クリニック開業の準備期間はどれくらい必要か」「半年でも間に合うのか」——この問いは、開業準備に入った先生ほど現実味を帯びてきます。
実際の現場では、融資決定から半年ほどで一気に立ち上げる先生もいれば、1〜2年以上かけてじっくり準備される先生もいます。
この記事では、準備期間を「半年スケジュール型」と「1〜2年の長期準備型」に分けて、やること/起こりやすいリスク/成果の出やすさを整理します。
そのうえで、先生ご自身の状況に合わせて「どちらが現実的か」を判断するための具体的な基準もまとめました。
結論から:準備期間の正解は「長いほど良い」でも「短いほど良い」でもありません。
大事なのは、①外部条件(物件・融資・退職時期)と、②開業後に必要な“運営の型”を見比べて、ムリの出る場所を先に見つけることです。
クリニック開業の準備期間は「半年〜2年」の幅がある理由
一般的に「クリニック開業の準備期間は1年前後」と言われますが、実務の現場では 半年〜2年ほどまで、かなり幅があります。
幅が生まれる主な理由は、次の3つです。
- 物件の決まり方:候補物件がすでにあり、条件と融資の見通しが立っているのか。これから診療圏・エリア選定から始めるのか。
- 診療科や地域性:必要な検査設備、スタッフ像、病診連携の形が変わり、設計と準備の手数が増減する。
- 「どこまで設計したいか」の違い:最低限で走り出すのか、理念・提供価値・運営の型まで整えてから始めるのか。
ポイント:「半年でできるかどうか」だけでなく、「開業後の混乱をどこまで許容できるか」も準備期間を決める重要要素です。
開業後の混乱は、待ち時間・スタッフ負荷・院長の疲弊として跳ね返りやすく、結果として立ち上がり(初期の安定)に影響します。
半年スケジュール型|短期で進める場合の特徴
半年スケジュール型の大まかな流れ
テナント開業を前提に、融資決定から約6か月で開業を目指すイメージです。工程はおおむね次のようになります。
- 物件契約・設計打合せ(レイアウト・導線・給排水・電気容量の確認)
- 内装工事と並行して、医療機器・什器の選定・発注・納品調整
- 電子カルテ・オンライン問診・レセコンなどIT周りのセットアップ
- スタッフ募集・採用・入職前オリエンテーション・初期研修
- ホームページ・看板・内覧会などの広報、各種行政手続き
これらをほぼ同時並行で進めることになるため、「決まっていないことを決めながら次へ進む」場面が増えます。
短期スケジュールで起こりやすい制約・リスク
- 比較検討の時間が取りにくい:
内装・機器・電子カルテ・業者選定が「間に合わせる」優先になりやすく、結果として後からの修正コストが増えることがあります。 - 採用・教育が駆け足になりやすい:
募集開始が遅れると、マッチングよりも「人を確保する」が優先になり、開業後に教えながら走る状態になりがちです。 - 初期運営の混乱が可視化されやすい:
動線・予約枠・説明書式・役割分担が固まらないまま始めると、待ち時間・クレーム・スタッフ疲労として表面化しやすくなります。
半年スケジュール型が向いている先生の条件
- すでに開業候補地やテナントがほぼ絞れている。
- 勤務先との調整や資金計画の目処がついており、外部条件が整っている。
- 制約を受け入れつつ、「まず開業する」ことを優先したい。
半年スケジュール型は、条件が揃っている先生にとって強い選択肢です。
一方で、意思決定の余白が少ないことは前提になります。
だからこそ「何を削ってよくて、何は削れないか(運営の型の最小セット)」を先に決めておくと、短期でも崩れにくくなります。
1〜2年の長期準備型|じっくり準備を進めるメリット
長期準備型で先に整えておきたい3つのコア
1〜2年かけて準備する場合は、融資や物件の前に、次の3点を先に整えられます。
- ① 事業計画の整合性:
「誰に・何を提供するか」を起点に、診療体制/単価設計/人員配置/提供できる価値を一貫して組み立てやすくなります。 - ② 人材計画の具体性:
必要なスタッフ像・人数・役割を明確にし、募集要件/面接観点/教育計画まで言語化しやすくなります。 - ③ 運営の“型”:
予約枠・院内導線・説明書式・レセプトチェックなど、日々のオペレーションの型を描いたうえで、内装や機器を選べます。
時間をかけることで得られるもの
- 比較検討の余白:複数の会社・複数案の比較ができ、「自院に合う」選択をしやすくなります。
- 修正の余地:途中で方針が変わっても、開業前なら軌道修正しやすいのが強みです。
- 開業後の安定度:事前設計に沿って始められるため、開業初期から運営が安定しやすい傾向があります。
長期準備型が向いているケース
- 「自院らしさ」を大切にし、理念や診療方針を形にしてから開業したい。
- 競合が多いエリアで、差別化(提供価値の定義)が欠かせない。
- 開業後すぐに診療を止めづらく、初期から安定運営を重視したい。
長期準備型は、初期費用の一部が先行しやすい一方で、「開業後の大きなやり直し」を減らせる点で、結果的にリスクを抑える選択にもなります。
半年型と長期型の違いを「6つの軸」で整理する
半年スケジュール型と長期準備型のちがいは、おおまかに次の6つの軸で整理できます。 (表ではなく文章でまとめます)
1. 準備工程と時間の使い方
半年型は、設計・機器・IT・採用・広報・行政手続きを短期間で並行。
長期型は、方針と設計を固めてから順番に積み上げるため、工程の詰まりが起きにくいのが特徴です。
2. 優先順位のつけ方
半年型は「目の前の実務」が優先になりやすい一方、長期型はビジョン・診療方針・診療圏・需要の整理から入れます。
その結果、後工程(内装・機器・採用)が迷いにくくなります。
3. 意思決定の質
半年型は、時間制約が大きく選択肢の幅が狭まりやすい前提があります。
長期型は、比較と対話の時間を取りやすく、納得感のある決定に繋がりやすいのが特徴です。
4. 採用・教育の進め方
半年型は「間に合わせる採用」になりやすく、教育は開業後に持ち越しがちです。
長期型は「どう働いてほしいか」を言語化して募集できるため、ミスマッチを減らしやすい傾向があります。
5. リスクの出方
半年型は、工程遅延や初期運営の混乱が開業直後に集中しやすい。
長期型は、準備コストは先行しやすいものの、試算・シミュレーションを重ねられるため、リスクが分散しやすいと言えます。
6. 向いている状況・価値観
半年型は、外部条件が整い「まず開業する」優先の先生。
長期型は、地域性や専門性を活かし、自院らしさを設計してから始めたい先生に向いています。
どちらが正解かではなく、先生の状況と価値観にとっての“納得解”を見つけることが大切です。
開業スケジュールを決めるための5つの判断基準
半年型と長期型のどちらを選ぶべきか。実務では、次の観点を一緒に整理することが多いです。
- ① 外部条件:勤務先との調整、物件候補の有無、資金計画の進み具合。
- ② 自院らしさをどこまで設計したいか:「最低限」で良いのか、「らしさ」を形にしたいのか。
- ③ 診療圏・需要の見通し:地域の患者像や競合状況をどこまで把握できているか。
- ④ 事業計画の練度:想定患者数・単価・人件費など、数字の前提がどれだけ整理されているか。
- ⑤ 採用難易度:想定するスタッフ像・人数に対して、採用にどの程度時間がかかりそうか。
判断のコツ:「半年で全部やれるか」よりも、“開業後に安定運営できる最小セット”が準備できるかで考えると、現実的なスケジュールが見えやすくなります。
今日からできる60分の整理ステップ
いきなり完璧に決める必要はありません。まずは60分だけ、次の3つを試してみることをおすすめします。
- ビジョン1行(15分):
「誰に・何を・どう届けるクリニックにしたいか」を1行で書く。 - 運営の骨子(25分):
診療日・診療時間・予約枠・スタッフ人数と役割を、思いつく範囲で箇条書きにする。 - 数値テンプレ(20分):
月次の「患者数・単価・人件費・外注費」を記録する簡単な表を1つ作る。
完璧を目指すより、仮置きでも“見える形”にすることが、スケジュール判断の近道になります。
よくあるご質問Q&A
Q1. 半年での開業が難しい診療科はありますか?
A. 診療科によって必要な設備や人員、地域との連携の仕方が変わるため、一概には言えません。
ただ、検査機器が多い/専任スタッフが必要/病診連携の設計が重いケースほど、半年はタイトになりがちです。
「自分の診療科ではどうか」を考える際は、事業計画と診療圏の整理から入るのがおすすめです。
Q2. 長期準備のデメリットは何でしょうか?
A. 一番のデメリットは、時間がある分だけ迷いやすいことです。
情報が増えるほど選択肢も増え、「どこまで決めたら良いか」が見えにくくなることがあります。
そのため長期準備では、途中で見直すタイミング(節目)を先に決めておくことが大切です。
Q3. テナント開業はどのくらい前から動くべきですか?
A. 物件の情報収集は、1〜2年前から始める先生も多い印象です。
一方で、契約は「良い物件が出たから」だけで急がず、事業計画や診療圏の見通しがついてからでも遅くありません。
Q4. 開業スケジュールで失敗する先生の共通点はありますか?
A. 共通して多いのは、「決める順番」が逆になっていることです。
先に物件や内装が決まり、その後に診療方針や人材計画を考えると、現場にムリが出やすい傾向があります。
可能であれば、①診療方針・診療圏 → ②事業計画 → ③人材・運営 → ④物件・設備の順で考えることをおすすめします。
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