開業後、「患者が来ない」と感じた院長と整理したこと【相談事例】
開業して数ヶ月経っても、「患者が来ない」「新患が思ったより増えない」と感じる院長は少なくありません。
広告を出すべきか。ホームページを見直すべきか。診療時間を変えるべきか。それとも、もう少し経過を見るべきか。
患者数への不安が強くなるほど、複数の対応を同時に考え、一人では優先順位を決めにくくなることがあります。
患者が来ないと感じたときは、すぐに施策を増やすのではなく、まず患者数の内訳や患者層、開業後の経過、地域からの見え方を分けて確認することが大切です。
この相談では、院長が何に不安を感じているのか、今、本当に何を判断する必要があるのかを一緒に整理しました。
この記事の結論
患者が来ないと感じたときは、患者数を一つの数字で見ず、新患・再診、曜日・時間帯、患者層などに分けて確認します。
そのうえで、開業後の経過、地域での見え方、院内で無理なく続けられるかを確認し、今判断することと、もう少し経過を見てから判断することを分けます。
この相談事例で整理したこと
- 院長が「患者が来ない」と感じていた背景
- 新患・再診や曜日・時間帯ごとの患者数の見え方
- 想定していた患者層と実際の患者層の違い
- 院長が描いていたクリニック像と地域からの見え方
- 今確認することと、あとで判断すること
- 自院として次に何を考えるか
この記事が参考になる方
- 開業して数ヶ月が経過した院長
- 患者が思ったより来ないと感じている方
- 新患が増えず、何か対策を急ぐべきか迷っている方
- 広告やホームページなど、複数の提案を比較している方
- 患者数の問題をどこから確認すればよいか整理したい方
目次
相談内容|このままで経営は大丈夫なのか
相談のきっかけは、院長の次のような言葉でした。
「開業して数ヶ月経ちましたが、思ったより患者さんが来ません。」
「新患が増えていない気がします。」
「このままで経営は大丈夫でしょうか。」
開業前に診療圏調査や事業計画を作成していても、実際の立ち上がりが想定どおりに進むとは限りません。
開業して間もない時期は、地域に認知されるまで時間がかかることもあります。一方で、想定していたより患者数が少ない状態が続けば、何かを見直す必要がある可能性もあります。
患者数だけを見れば対策を急ぎたくなりますが、追加費用をかけてよいのか、診療時間やスタッフの勤務体制まで変える必要があるのか、院長一人では判断しにくくなることがあります。
この相談でも、最初は「患者数をどう増やすか」という話から始まりました。
ただ、お話を伺っていくと、院長が気にされていたのは、患者数という数字だけではありませんでした。
最初に患者数を分けて確認しました
最初に確認したのは、「患者が来ない」という感覚が、どの数字から生まれているのかということでした。
患者数を一つの数字として見るだけでは、どこに課題があるのか分かりにくいことがあります。
新患と再診を分ける
新患が少ないのか、受診後に再診へつながっていないのかでは、確認する内容が変わります。
新患が少ない場合は、地域での認知や受診前の分かりやすさなどを確認する必要があります。
一方、初診患者は来ているものの再診につながっていない場合は、診療内容、患者さんへの説明、次回受診の案内など、別の要因が関係している可能性があります。
曜日や時間帯を分ける
患者数が少ないと感じていても、すべての曜日や時間帯で同じとは限りません。
- 特定の曜日だけ少ない
- 午前と午後で差がある
- 週の前半と後半で差がある
- 特定の診療内容だけ患者数が少ない
このように分けて見ると、「患者が来ない」という大きな不安を、確認できる事実に置き換えやすくなります。
当初の想定との違いを確認する
事業計画で想定していた患者数と実際の患者数に差がある場合も、数字だけで判断しないことが大切です。
- 開業後、どの程度の期間が経過しているのか
- 開業前に想定していた条件と現在の状況に違いはないか
- 診療圏内の医療機関や地域環境に変化はないか
- 当初想定していた患者層が実際に来院しているか
この相談では、まず確認する数字と期間を分け、すぐに結論を出すのではなく、現在の状況を見直すことから始めました。
患者が来ない理由は、認知だけとは限りません
患者が来ないと感じると、広告、ホームページ、SNSなど、患者さんへの認知を広げる取り組みを増やしたくなることがあります。
もちろん、地域でまだ十分に知られていない場合には、認知を広げる取り組みが必要なこともあります。
ただ、患者数が伸びない理由は、認知だけとは限りません。
- 何を相談できるクリニックなのか伝わっていない
- 初診で受診する方法が分かりにくい
- 診療対象や特徴が患者さんに伝わっていない
- 来てほしい患者層と実際の来院層がずれている
- 再診につながる診療や説明の流れが整っていない
- 診療時間や予約方法が地域の患者さんに合っていない
- 開業後、認知が広がる途中にある
そのため、患者数を増やすための方法を先に決めるのではなく、まずどこに違いがあるのかを分けて確認する必要があります。
こうして状況を分けることで、見直す候補を一度に抱え込まず、自院として何を優先して考えるべきかを判断しやすくなります。
想定していた患者層との違いを確認しました
次に確認したのは、院長が来てほしいと考えていた患者層と、実際に来院している患者層の違いでした。
例えば、院長としては継続的な通院が必要な患者さんを診ていきたいと考えていても、実際には一時的な受診が中心になっていることがあります。
また、特定の診療領域を地域で担いたいと考えていても、患者さんからは「近くにある一般的なクリニック」として見られていることもあります。
この違いがあると、患者数そのものだけでなく、院長の中に「開業前に思い描いていた形と違う」という感覚が残ります。
一緒に確認した問い
- どのような患者さんに来てほしいと考えていたのか
- 実際には、どのような患者さんが来院しているのか
- その違いは、いつ頃から感じているのか
- 来てほしい患者さんへ、必要な情報が伝わっているか
- 現在の診療体制で、その患者層を無理なく受け入れられるか
患者数だけでなく、患者層との違いを確認することで、「何人増やしたいのか」だけではなく、「地域でどのような患者さんを支えたいのか」という視点に戻ることができました。
地域からどのように見えているかを考えました
さらに話を整理していく中で、院長の中にあるクリニック像と、地域からの見え方に差がある可能性が見えてきました。
院長の中では、どのような診療を行いたいのか、どのような患者さんを支えたいのかが少しずつ見えていました。
ただし、その考えが患者さんや地域へ同じように伝わっているとは限りません。
- どのような症状や悩みを相談できるのか分かるか
- 初めての患者さんが受診方法を理解できるか
- 予約や問い合わせの流れが分かりやすいか
- 診療内容や対象患者が具体的に伝わっているか
- 地域の中で、どのような役割のクリニックとして見えているか
ここを確認すると、「もっと患者さんを増やす」という問題だけではなく、「自院がどのような医療を提供し、地域でどのような役割を担うのかを、どの程度伝えられているか」という論点が見えてきました。
施策を決める前に、まず自院の考えと、患者さんから見える情報との間に違いがないかを確認する必要がありました。
院長が本当に判断する必要があったこと
相談の始まりは、「患者数が少ない」という話でした。
ただ、話を分けていくと、院長が本当に不安に感じていたのは、数字そのものだけではありませんでした。
「自院の方向性が、地域にどのように伝わっているのか分からない」
患者数が少ないことに加え、何を変えるべきか判断できない状態が、院長の負担になっていました。
何か対策を急いだとしても、判断基準が曖昧なままでは、別の提案が出るたびに比較や迷いが繰り返されます。
そこで、この相談では、具体的な施策を先に決めるのではなく、次の点を整理しました。
- 今、事実として確認できていること
- まだ確認できていないこと
- 患者数が少ないと感じている背景
- 院長が本当に判断する必要がある課題
- 判断する際に大切にしたい基準
- スタッフや院内運用への影響
- 今決めることと、あとで決めること
こうして論点を分けることで、院長は「何かをしなければならない」という状態から、「まず何を確認し、何を基準に判断するか」を考えられる状態へ変わっていきました。
また、なぜ今その確認が必要なのかを言葉にしておくことで、スタッフや関係者へも説明しやすくなります。
今決めることと、経過を見ることを分けました
患者数への不安があると、すべてを早く決めなければならないように感じることがあります。
しかし、実際には、今すぐ決める必要があることと、一定期間の数字を確認してから判断した方がよいことがあります。
この相談で分けたこと
- 今すぐ確認する数字
- 今後、継続して記録する数字
- 院長の考えを言葉にしておくこと
- 患者さんから見た情報を確認すること
- 一定期間、経過を見てから判断すること
- 必要に応じて関係者へ確認すること
この段階では、何らかの施策を急いで決めるよりも、まず確認する内容と期間を決めることを優先しました。
次に行うことが小さく具体的になると、複数の選択肢を比較し続ける時間が減り、診療やスタッフ対応へ意識を戻しやすくなります。
また、今すぐ決めないことを明確にすることも、経営判断の一つです。
自院で最初に確認したい7つの項目
患者が来ないと感じたときは、次の順番で確認すると状況を分けやすくなります。
- 新患と再診を分ける
新患が少ないのか、再診につながっていないのかを確認します。 - 曜日・時間帯の偏りを見る
患者数が少ない時間帯や診療日が限られていないかを確認します。 - 月ごとの変化を見る
一時的な変動なのか、継続している傾向なのかを確認します。 - 想定していた患者層との違いを見る
来てほしい患者層と実際の患者層に差がないかを確認します。 - 地域からの見え方を確認する
何を相談できるクリニックなのか、受診方法が分かるかを患者さんの立場で見直します。 - 院内運用への影響を確認する
診療時間、予約方法、スタッフ体制などを変えた場合に、無理なく続けられるかを考えます。 - 今決めることと、経過を見ることを分ける
すぐに判断する課題と、数字を確認してから判断する課題を分けます。
すべてを一度に変える必要はありません。
まず事実を分け、院長が何を大切にしたいのかを確認し、自院として判断する課題を絞ることが大切です。
まとめ
開業後、患者数が思ったより伸びないと感じると、不安になるのは自然なことです。
ただ、その不安をすぐに施策へ変える前に、まず状況を分けて確認する必要があります。
- 新患と再診
- 曜日や時間帯
- 想定していた患者層との違い
- 地域からの見え方
- 開業後の経過
- 院内運用への影響
- 今決めることと、あとで決めること
状況を分けることで、本当に判断する必要がある課題が見えやすくなります。
また、判断基準や判断理由を言葉にできると、比較や迷いに使う時間が減り、スタッフや関係者へも説明しやすくなります。
その結果、院長が診療や院内運用へ意識を戻しながら、自院として次の一歩を決めやすくなります。
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