正解を急がず、 判断が詰まった論点を、静かにほどくために。 患者の視点も踏まえて、 クリニック開業・経営の「考える前提」を整える時間。

クリニック開業・経営コラム

クリニックの患者数が少ないとき|増やす前に院長が整理したい5つのこと

患者数が想定より伸びない。

そう感じたとき、多くの院長は
「何か対策を打たなければ」と考えます。

ホームページを変えるべきか。
広告を出すべきか。
診療内容を広げるべきか。

その発想は自然です。
しかし――

増やす前に、一度だけ確認したいことがあります。
いまの設計は、本当に相手に伝わっているでしょうか。

① それは本当に「少ない」のか(時間軸)

まず確認したいのは、
その「少ない」という感覚が、本当に異常なのかどうかです。

開業から3か月。
想定していた1日30人に届かず、20人前後で推移している。

改定後、外来は続いているのに、売上が想定より伸びない。
あるいは、提供する診療の負担が増え、スタッフの工数も増えている。

こうした状況に直面すると、
「何か判断を誤ったのではないか」と感じるのは自然です。

ただし――

その想定値は、どこから来たものでしょうか。

診療圏調査の最大値でしょうか。
周囲の成功例でしょうか。
それとも、開業前に描いた理想のカーブでしょうか。

開業初期は、口コミが回り始めるまでに時間がかかります。
改定直後は、患者さんが様子を見る期間が生まれることもあります。

もし時間の過程を無視して「少ない」と判断しているなら、
それは集患の問題ではなく、時間の読み違いかもしれません。

② 数字の奥にある「評価」の感覚

患者数や売上が想定より伸びない。
その事実そのものよりも、
実はその数字をどう解釈しているかの方が、経営に影響を与えます。

数字が伸びないとき、
私たちはそれを「結果」としてではなく、
「評価」として受け取ってしまいがちです。

患者数が少ない
= 求められていないのではないか

売上が伸びない
= 判断が間違っていたのではないか

負担が増えた
= 経営がうまくいっていないのではないか

こうした解釈が積み重なると、
数字は“情報”ではなく、自己評価に変わっていきます。

そしてその評価は、孤独と結びつきます。
だからこそ、焦って何かを変えたくなる。

しかし、数字はあくまで結果です。
その解釈まで自分一人で抱え込むと、判断は静かに歪んでいきます。

※これは医療に限った話ではありません。数字を扱う仕事であれば、誰にでも起こり得ることです。

③ 自分軸だけで設計していないか

数字が伸びないとき、
私たちは「何を増やすか」を考えます。

しかし、その前に確認すべきことがあります。
いまの設計は、本当に相手に伝わっているでしょうか。

たとえばホームページ。

診療内容が丁寧に書かれている。
専門性も十分に示されている。

けれど、その言葉は患者さんの悩みの言葉になっていますか。
医療用語が並び、正確ではあるけれど、
「自分のことだ」と感じられる文章になっていないことはないでしょうか。

あるいは求人。

条件は整えている。
給与も相場を意識している。

しかしその文章は、“応募数を増やす”ための書き方になっていないでしょうか。
本当に一緒に働きたい人に向けた言葉になっているでしょうか。

設計はしている。努力もしている。
それでも伝わっていないとしたら、
問題は「集患」ではなく、自分の意図が翻訳されていないことかもしれません。

患者数が少ないことよりも、
設計を説明できないまま動くことの方が、
実はリスクが大きいのかもしれません。

④ 伝わっているかをどう確認するか

では、「伝わっているか」はどう確認すればよいのでしょうか。

大きな施策を打つ前に、いくつかの視点で立ち止まることができます。

  • ホームページを第三者に読んでもらい、
    「どんな人に向けたクリニックに見えるか」を率直に聞いてみる
  • 求人票を「応募したくなるか」ではなく、
    「どんな人が応募しそうか」という視点で読み直してみる
  • 診療方針を医療者目線ではなく、
    患者さんの立場で説明し直してみる

どれも特別なことではありません。
ただ、自分一人では見えにくいのも事実です。

設計はできていても、
それが“伝わる形”になっているかどうかは、
外からの視点がなければ分かりにくいものです。

⑤ 本当に増やすべきものは何か(判断軸)

患者数が少ないと感じたとき、
私たちは「何を増やすか」を考えます。

しかし、判断の順番は逆かもしれません。
増やす前に、何を基準に判断するのかを整理する必要があります。

  • 患者数が増えれば良いのか
  • 単価が安定すれば良いのか
  • 紹介が増えれば良いのか
  • スタッフが疲弊せず回ることが優先か
  • 自分が納得して診療できているか

どれを「良い状態」と定義するのかによって、
打つべき一手はまったく変わります。

基準が曖昧なまま増やそうとすると、
施策は増えますが、設計は曖昧になります。

逆に、判断軸が言葉になっていれば、
いま動くべきかどうかも見えてきます。

結び

患者数を増やす前に、
まずは設計を言葉にする。

その整理から始めたい院長と、私は仕事をしています。

もし今、
何を増やすべきかではなく、
何を基準に判断すべきかを整理したいと感じているのであれば、
思考の整理から始めるという選択肢もあります。

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