気がつくと院長に判断が集まる──クリニック経営の役割整理という視点
日々の診療や運営のなかで、ふと気づくことがあります。
診療の判断、スタッフの相談、患者対応、制度の確認、クレームやトラブル対応…。
気がつくと、ほとんどの判断が院長に集まっている。
もちろん、院長が中心になるのは自然なことです。
ただ、「中心であること」と「判断が集まり続けること」は、少し違います。
判断が集まるのは、能力の問題ではなく「構造」の問題
「自分が抱えすぎているのかもしれない」
そう感じたとき、つい“自分の気合い”や“性格”の話に寄せてしまいがちです。
でも実際には、判断が集まるのは能力の問題というより、構造の問題であることが多いです。 医療は責任の重い仕事で、最終判断は院長が引き受ける場面が増えやすい。
だからこそ、自然に「院長に寄る」形になります。
開業当初の形が、そのまま残る
開業当初は、人も少なく、仕組みもまだ整っていない。
その時期に「院長が判断して回す」形で走り出すと、忙しさの中でその形が固定されやすいです。
- 判断基準が共有されていない
- 役割が曖昧なまま増員している
- 「ここまでは任せていい」が言語化されていない
こうした条件が重なると、スタッフが悪いわけでも、院長が悪いわけでもなく、
判断が“院長に集まる設計”になっていきます。
問題は、すぐに表面化しない
この構造は、短期的には回ります。
むしろ「院長が全部把握している」ことが安心につながる時期もあります。
ただ、時間が経つにつれて、少しずつ影響が出てきます。
- 判断が遅くなる(院長の処理量が先に限界に近づく)
- スタッフが主体的に動きにくくなる(確認が前提になる)
- 改善が後回しになる(緊急の判断に時間を奪われる)
そして何より、院長が「考える時間」を取りにくくなる。
経営は、忙しさの中ではなく、立ち止まって整理できた時間で動くことが多いからこそ、ここは見過ごしにくいポイントです。
役割整理という視点
ここで大切なのは、「院長が楽をする」ことではありません。
大切なのは、クリニックが“続けられる形”になることです。
そのために、一度だけでも整理しておきたいのが、役割です。
- 院長が担うこと(最終判断として残す領域)
- スタッフが担うこと(判断基準を共有して任せる領域)
- 外部と連携すること(院内に持たない選択)
ただし、ここには「唯一の正解」はありません。
診療スタイル、患者層、スタッフ構成、地域の役割。
クリニックごとに前提が違うからです。
だからこそ、「一般論の正しさ」よりも、先生のクリニックにとっての納得感を軸に整理していく方が、結果として続きやすくなります。
相談先が少ない、という前提
もう一つ、よく聞く話があります。
「経営をどこに相談したらいいか分からない」という感覚です。
税理士は数字。社労士は労務。医療機器会社は設備。
それぞれ大事ですが、「クリニック経営そのもの」を整理する相談先は、意外と多くありません。
相談先がないと、判断は院長の頭の中に溜まりやすい。
その結果として「気がつくと判断が集まる」状態が続いてしまうことがあります。
地域の中で“役割”をどう引き受けるか
「抱えない」ことは、投げることではなく、役割を分け直すことでもあります。
地域の中でクリニックがどこまでを引き受けるか、という視点は、こちらの記事でも整理しています。
すべてを抱え込まない医療へ ― 地域包括ケアと“続けられる”クリニック経営
開業準備・経営整理セッションについて
忙しさの中で判断が増え続けると、
「何から整理すべきか」自体が見えにくくなることがあります。
まえやまだ純商店では、正解を押しつけるのではなく、
先生の考えを聞きながら、論点・役割・判断基準を一緒に整理していきます。