2026年診療報酬改定で院長がまず整理すべきポイント|クリニック経営は点数ではなく「続け方」を見直す局面に来ている
投稿日:2026年6月8日
2026年2月13日、2026年度診療報酬改定の答申が公表されました。
今回の改定では、再診料の引き上げや外来・在宅物価対応料の新設、ベースアップ評価料の見直しなどが示されています。
一方で、今回の改定は単に「何点上がるか」「どの加算を算定するか」だけでは整理しきれません。物価高や人材確保の難しさ、受診行動の変化が続く中で、クリニックとして何を担い、どう続けていくのかという視点も問われています。
本記事では、2026年診療報酬改定の主なポイントを整理したうえで、院長が施行前に考えておきたい「役割」「人件費」「慢性期外来」の3つの視点について解説します。
制度改定の方向性そのものを俯瞰して整理したい場合は、こちらの記事から読むと理解しやすくなります。
2026年診療報酬改定でクリニック経営はどう変わる?院長が点数の前に整理すべき3つの前提
2026年診療報酬改定のポイント(診療所)
2026年度診療報酬改定では、賃上げ対応や物価高対策が大きなテーマとされました。診療所に関係する主なポイントを整理すると、次のようになります。
- 医科の初診料は据え置き
- 再診料は1点引き上げ
- 外来・在宅物価対応料の新設(初再診それぞれ評価)
- 一般名処方加算は2点減
- ベースアップ評価料の見直し
数字だけを見ると大きな変化には見えないかもしれません。しかし今回の改定は、点数以上に医療提供の前提を問いかけているようにも感じます。
全体像:数字と実感のあいだ
報道では「全体での引き上げ」が強調されました。しかし、診療所の本体部分を見ると、
- 医科の初診料は据え置き
- 再診料は1点引き上げ
- 一部加算は増減が入り混じる
外来・在宅物価対応料は新設されましたが、一般名処方加算は2点減。全体として大きく変わったという実感は持ちにくい構造です。
物価上昇が続く環境を踏まえると、本体部分の引き上げが十分と言い切れる内容ではない、という見方もできるかもしれません。
6月の施行に向けて、点数の可否だけでなく、自院としてどう位置づけるかを先に整理しておく必要があります。
(参考:中医協 答申資料PDF)
厚労省PDFを開く
静かに変わっていること:受診行動
OTC化の進行により、花粉症や皮膚症状、軽い胃腸症状などは「まずは薬局で」という選択が広がっています。これは一過性の流れではないように感じます。
受診行動そのものが変わると、外来の中身も変わります。軽症が減るというより、説明や判断に時間を要するケースが相対的に増える。その変化は、数字以上に日々の体感として効いてきます。
外来機能の整理という観点から改定の方向性を俯瞰した記事はこちらです。
外来機能分化から読み解くクリニックの役割整理はこちら
ベースアップ評価料という問い
ベースアップ評価料は見直されました。ただしこれは「増収策」であって「増益策」ではありません。制度上、収入は対象職員の基本給や毎月支払われる手当の引き上げ、それに伴う賞与や法定福利費の増加分として還元される前提で設計されています。
また今回の評価料は令和8年度と令和9年度の段階的評価として設計されています。だからこそ、その場しのぎで点数だけを見るのではなく、2年先も見据えてどう続けていくかを整理する必要があります。
取るのが正解、取らないのが正解、と単純に言えるものでもありません。自院の人員構成、採用状況、地域性によって答えは変わります。
点数以上に問われているのは院内でどう合意をつくるかというプロセスかもしれません。
制度の整理については、こちらの記事でも触れています。
▶︎ ベースアップ評価料とは?制度の背景とクリニック経営への影響を整理
ベースアップ評価料に関する記事をまとめて読みたい方はこちら。
▶︎ ベースアップ評価料の記事一覧を見る
問われているのは「取り方」より「続け方」
今回の改定を通して感じるのは、収益の取り方を工夫するというより、どういう形で続けていくのかを見直す局面に来ているのではないか、ということです。
攻めるか守るかという二択ではなく、まずは土台を整える。その順番が、以前より重要になっているように感じます。
物価高の影響を含めた整理についてはこちら。
▶ クリニック経営で増え続けるコストにどう備えるか
院長が整理しておきたい3つの視点
今回の改定は、点数の増減だけでは判断しにくい内容だからこそ、自院としてどこに重心を置くのかを整理する機会でもあります。
① 役割は明確になっているか
院長が抱え込みすぎていないか。受付、事務、診療補助、それぞれの役割は言語化されているか。今回の改定では「地域で何を引き受けるクリニックか」という役割整理も、以前より重要になっています。
② 人件費の位置づけは共有されているか
ベースアップをどう位置づけるのか。持続可能な範囲はどこか。共通理解をつくる方が長続きします。今回の評価料は段階的設計になっているため、単年度ではなく2年先まで含めた整理が重要になります。
③ 自院は何を診るクリニックか明確か
OTC化が進む中で、軽症は薬局へ流れます。だからこそ自院の役割整理が重要になります。慢性期外来の継続設計をどう位置づけるかも、今回の改定では判断の軸になります。
結びに
今回の改定は、大きな衝撃というより、静かに方向性を示しているように感じます。
迷いがあるときほど、すぐに結論を出すのではなく、6月施行までに一度、前提と順番を整える。
その時間が、後から効いてくるのだと思います。
制度対応の前に、考えを整理したい院長へ
診療報酬改定への対応は、「何を算定するか」より「何を判断するか」が難しいことがあります
ベースアップ評価料、人件費、外来の役割、慢性期患者への対応。 制度上の答えはあっても、自院としてどう考えるかは別の問題です。
実際のご相談でも、「何が正解か」より、「どこから整理すればよいのか」がテーマになることが少なくありません。
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