投稿日:2026年2月20日
2026年2月13日、2026年度診療報酬改定の答申が公表されました。事前には「賃上げ」「物価高対策」が強調されていましたが、実際の内容を見ていると、クリニック経営にとっては“別の問い”が浮かび上がってきます。
制度改定の方向性そのものを俯瞰して整理したい場合は、こちらの記事から読むと理解しやすくなります。
2026年診療報酬改定でクリニック経営はどう変わる?院長が点数の前に整理すべき3つの前提
2026年診療報酬改定のポイント(診療所)
2026年度診療報酬改定では、賃上げ対応や物価高対策が大きなテーマとされました。診療所に関係する主なポイントを整理すると、次のようになります。
- 医科の初診料は据え置き
- 再診料は1点引き上げ
- 外来・在宅物価対応料の新設(初再診それぞれ評価)
- 一般名処方加算は2点減
- ベースアップ評価料の見直し
数字だけを見ると大きな変化には見えないかもしれません。しかし今回の改定は、点数以上に 医療提供の前提 を問いかけているようにも感じます。
全体像:数字と実感のあいだ
報道では「全体での引き上げ」が強調されました。しかし、診療所の本体部分を見ると、
- 医科の初診料は据え置き
- 再診料は1点引き上げ
- 一部加算は増減が入り混じる
外来・在宅物価対応料は新設されましたが、一般名処方加算は2点減。全体として大きく変わったという実感は持ちにくい構造です。
物価上昇が続く環境を踏まえると、本体部分の引き上げが十分と言い切れる内容ではない、という見方もできるかもしれません。
6月の施行に向けて、点数の可否だけでなく、自院としてどう位置づけるか を先に整理しておく必要があります。
(参考:中医協 答申資料PDF)
厚労省PDFを開く
静かに変わっていること:受診行動
OTC化の進行により、花粉症や軽い胃腸症状などは「まずは薬局で」という選択が広がっています。これは一過性の流れではないように感じます。
受診行動そのものが変わると、外来の中身も変わります。軽症が減るというより、説明や判断に時間を要するケースが相対的に増える。その変化は、数字以上に日々の体感として効いてきます。
外来機能の整理という観点から改定の方向性を俯瞰した記事はこちらです。
外来機能分化から読み解くクリニックの役割整理はこちら
ベースアップ評価料という問い
ベースアップ評価料は見直されました。ただしこれは 「増収策」であって「増益策」ではありません。制度上、収入は対象職員の基本給や毎月支払われる手当の引き上げ、それに伴う賞与や法定福利費の増加分として還元される前提で設計されています。
また今回の評価料は令和8年度と令和9年度の段階的評価として設計されています。だからこそ、その場しのぎで点数だけを見るのではなく、2年先も見据えてどう続けていくかを整理する必要があります。
取るのが正解、取らないのが正解、と単純に言えるものでもありません。自院の人員構成、採用状況、地域性によって答えは変わります。
点数以上に問われているのは 院内でどう合意をつくるか というプロセスかもしれません。
制度の整理については、こちらの記事でも触れています。
▶︎ ベースアップ評価料とは?制度の背景とクリニック経営への影響を整理
ベースアップ評価料に関する記事をまとめて読みたい方はこちら。
▶︎ ベースアップ評価料の記事一覧を見る
問われているのは「取り方」より「続け方」
今回の改定を通して感じるのは、収益の取り方を工夫するというより、どういう形で続けていくのか を見直す局面に来ているのではないか、ということです。
攻めるか守るかという二択ではなく、まずは土台を整える。その順番が、以前より重要になっているように感じます。
物価高の影響を含めた整理についてはこちら。
▶ クリニック経営で増え続けるコストにどう備えるか
院長が整理しておきたい3つの視点
今回の改定は、点数の増減だけでは判断しにくい内容だからこそ、自院としてどこに重心を置くのかを整理する機会でもあります。
① 役割は明確になっているか
院長が抱え込みすぎていないか。受付、事務、診療補助、それぞれの役割は言語化されているか。今回の改定では「地域で何を引き受けるクリニックか」という役割整理も、以前より重要になっています。
② 人件費の位置づけは共有されているか
ベースアップをどう位置づけるのか。持続可能な範囲はどこか。共通理解をつくる方が長続きします。今回の評価料は段階的設計になっているため、単年度ではなく2年先まで含めた整理が重要になります。
③ 自院は何を診るクリニックか明確か
OTC化が進む中で、軽症は薬局へ流れます。だからこそ自院の役割整理が重要になります。慢性期外来の継続設計をどう位置づけるかも、今回の改定では判断の軸になります。
結びに
今回の改定は、大きな衝撃というより、静かに方向性を示しているように感じます。
迷いがあるときほど、すぐに結論を出すのではなく、6月施行までに一度、前提と順番を整える。
その時間が、後から効いてくるのだと思います。
改定の方向性そのものを俯瞰して整理したい場合は、こちらの記事も参考になります。
2026年診療報酬改定でクリニック経営はどう変わる?院長が点数の前に整理すべき3つの前提
2026年診療報酬改定を前に、考えることが増えてきた院長へ
点数の確認だけでは決めきれないとき、判断の前提を整理する時間があります
今回の改定は、単に「何点上がるか」「何を算定するか」だけでなく、これからのクリニックをどう続けていくかを考える局面でもあります。
実際には、判断が重くなり始めた段階でご相談いただくことが多くあります。
制度対応、人件費、役割分担、今後の方向性。
それぞれは別の話に見えても、院内では同時に重なっていることが少なくありません。
まえやまだ純商店では、正解を提示するのではなく、論点と優先順位を整理し、院長が自院として判断しやすい状態をつくる支援を行っています。
相談内容が整理できていない段階でも問題ありません。
むしろ、何から考えるべきかを整理するところから始まることが多くあります。
臨床と同じように、経営判断も「症状が出てから」ではなく、「違和感の段階」で整理することに意味があります。
改定対応を急ぐ前に、一度前提と順番を整えたいと感じたときは、こちらをご覧ください。
※実務代行ではなく、判断の前提を整理するための支援です。
※御用聞き型の対応は行っていません。