院長はなぜ経営で孤独を感じるのか? クリニック経営で相談が難しい理由
A:クリニック経営では多くの専門家が関わりますが、経営の判断は最終的に院長が引き受けることになります。
そのため、「誰に相談すればよいのか分からない」と感じる院長は少なくありません。
開業準備や経営の相談を受けていると、院長からこんな言葉を聞くことがあります。
「相談する相手はいるはずなのに、どこか相談しきれない感じがある」
なぜこのような状況が起きるのでしょうか。ここではノウハウではなく、構造として整理してみます。
① クリニック経営には多くの専門家が関わる
クリニックの開業や経営には、さまざまな専門家が関わります。例えば、
- 税理士
- 金融機関
- 医療機器会社
- ホームページ制作会社
- コンサルタント
それぞれの専門家は、それぞれの分野で重要な役割を担っています。
税務のことは税理士が。
融資の審査は金融機関が。
設備や機器のことは医療機器会社が。
ホームページのことはホームページ制作会社が。
このように相談先が複数あるのは、悪いことではありません。むしろ、必要なことです。
それでも「相談しづらさ」が残るのは、別の理由があるからです。
② それでも相談しにくい理由(立場・利害・役割)
相談しにくさの背景には、立場・利害・役割の違いがあります。
院長が抱えている悩みは、必ずしも一つの専門領域に収まらないことが多いです。
人・お金・診療方針・地域との関係・スタッフとの関係——複数の要素が絡み合います。
そして、相手によって「話せる範囲」が変わります。
- 取引先には、遠慮が生まれやすい
- スタッフには、経営の不安をそのまま話しにくい
- 家族には、仕事の細かな事情を説明しにくい
結果として、院長の中に「どこまで話していいのか分からない」という感覚が残りやすくなります。
③ 院長が孤独を感じやすい構造(最終判断)
もう一つの理由は、経営の構造そのものにあります。
最終的な経営判断は、院長が引き受けることになります。専門家から助言を受けることはできますが、
- この場所で開業するのか
- どの規模で始めるのか
- どんな診療を行うのか
- どんなスタッフ体制にするのか
こうした判断は、最後は院長が決めることになります。そして、その結果も院長が引き受けることになります。
(補足)勤務医との立場の違い
開業して初めて実感しやすいのが、勤務医のときとの立場の違いです。
勤務医のときは、基本的には診療に集中する役割です。もちろん忙しさはありますが、経営そのものを背負う立場ではありません。
一方で開業すると、診療をしながら、スタッフ・資金・設備・地域との関係なども同時に扱う必要が出てきます。
医療に加えて、事業を引き受ける立場になるからです。
開業とは、「事業を引き受ける」ということ——この視点に立つと、経営の孤独は“能力不足”ではなく、構造として起きやすいものだと見えてきます。
④ 孤独=悪いことではない(経営の特性)
孤独という言葉には、少しネガティブな響きがあります。ですが、経営という視点で見ると、孤独そのものが悪いわけではありません。
自分で考え、自分で判断し、自分で引き受ける。
その姿勢は、事業を続けていく上でとても重要な要素でもあります。
もちろん、すべてを一人で抱え込む必要はありません。
ただ、「最終判断は自分が引き受ける」という構造は、多くの院長に共通している現実です。
⑤ 経営の孤独は「整理」で軽くなることがある
経営の孤独は、完全になくなるものではないかもしれません。
ただ、少し軽くなることはあります。
それは、自分の考えを整理することです。
- 何に迷っているのか
- どこに違和感があるのか
- 自分は何を大切にしたいのか
こうしたことを言葉にしていくと、頭の中で絡まっていたものが少しずつ見えてくることがあります。
誰かに答えを出してもらうというよりも、自分の判断が「引き受けられる形」になるまで、順番を整えていく。
その時間が、院長にとって大切な時間になることがあります。
判断が重くなっているときは、いったん「整理」から始めることもできます
結論を急がず、いま絡み合っている論点をほどいて、優先順位と判断軸の土台を整えます。
必要がある場合のみ、次の選択肢をご案内します。