診療圏調査シリーズ⑥:「役割」を考える ── 2026年改定が変えた前提
本記事は、これから開業を検討している先生に向けて書いています。
これまで本シリーズでは、診療圏調査を
- 需要
- 供給
- 競合
- 協業
- 数字と背景
という視点から整理してきました。
診療圏を読むとは、患者数を読み、地域構造を読み、 その中でどのように成立するかを考える作業です。
この考え方は、今も変わりません。 患者数を読むことは、経営の土台です。 数字を軽視して成り立つ開業はありません。
ただ、2026年度診療報酬改定を踏まえると、 診療圏調査の前提が、静かに一段変わったように感じています。
外来医師過多区域での事前届出制度
2026年度改定では、外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する場合、 6か月前の事前届出が必要になります。
その際、 「地域で不足している医療機能のうち、どの機能を担うのか」 を届け出ることになります。
不足機能を担えない場合には、
- 自治体からの要請
- 協議の場での説明
- 保険医療機関の指定期間の短縮
- 一部加算の対象外
- 将来的なディスインセンティブ議論
といったプロセスが想定されています。
制度の是非をここで論じるつもりはありません。 ただ確かなのは、
開業は自由であっても、「何を担うのか」は制度上も問われる時代に入ったということです。
診療圏調査の視点は十分か
従来の診療圏調査では、
- 人口が足りるか
- 競合は何件か
- 受診率はどうか
- 損益分岐は越えるか
といった視点が中心でした。
これらは今も重要です。 患者数が足りるかどうかは、 現実的な経営判断において欠かせません。
しかし、制度が問い始めているのは、もう一つの視点です。
「この地域で不足している医療機能は何か」
患者数が見込めることと、 地域で求められている役割を担うことは、 必ずしも同じではありません。
重なる部分もあれば、重ならない部分もあります。
だからこそ、
患者数も読む。
そして、役割も考える。
その両方が、これからの診療圏調査には必要なのかもしれません。
「量」の上に重なる「役割」という視点
「量」から「役割」へ、と単純に言い切れる話ではありません。
むしろ、量を読むことの上に、 役割を考える視点が重なる。
患者数が足りるかどうかを確認することは、 これからも重要です。
ただ、その先に
「この地域で何を引き受けるのか」
という問いが加わった。 それが今回の改定が示している変化だと私は感じています。
例えば、
- 在宅医療を担うのか
- 地域連携のハブになるのか
- 時間外対応を引き受けるのか
- データ提出体制を整えるのか
正解は一つではありません。
ですが、 「患者が来るから開業する」 という設計だけでは、 これからは少し心もとないのかもしれません。
開業前に考えておきたいこと
外来医師過多区域で開業すること自体が問題なのではありません。
ただ、
「この地域で何を担うのか」
という問いから目を背けることは、 制度上も、経営上も、難しくなっていくでしょう。
診療圏を読むということは、
患者数を読むことでもあり、
地域での役割を読むことでもある。
開業を決める前に、 この二つを同時に考える時間を持てるかどうか。
それが、これからの診療圏調査の質を左右するのではないでしょうか。
※すでに開業している先生にとっても、 地域での立ち位置を見直す機会になるかもしれません。 ただ本記事は、あくまで「これから設計する段階」にある先生に向けて記しました。
急いで正解を出す必要はありません。
しかし、開業を考える今だからこそ、
「患者数」と「役割」
この両方をどう設計するかを考えてみる価値はあるはずです。
開業前に、数字と役割を整理する時間を
診療圏の数字は読める。けれど、 「この地域で何を担うのか」は一人では整理しづらいテーマです。
開業・経営整理セッションでは、 制度の正解を提示することではなく、 先生ご自身の前提や迷いを言葉にする時間をつくっています。
開業を急がせることも、無理な営業を行うこともありません。 設計段階で立ち止まりたいときに、一度ご活用ください。
※本セッションは、結論を押しつける場ではなく、判断の前提を整えるための時間です。