電子的診療情報連携体制整備加算|加算3・2・1の違いと、自院でどこまで対応するか
本記事は、2026年5月21日時点の告示・通知・疑義解釈をもとに整理しています。実際の算定や届出では、最新情報および管轄する地方厚生局の案内をご確認ください。
2026年度診療報酬改定では、これまでの医療DX推進体制整備加算や医療情報取得加算が見直され、医療DX関連の評価が電子的診療情報連携体制整備加算として再整理されました。
クリニックとしては、単に名称が変わったと捉えるだけでなく、「自院ではどこまで対応するか」を整理しておきたい局面になっています。
特に実務上は、加算3・加算2・加算1のどれを目指すかだけでなく、マイナ保険証利用率30%以上を満たしているか、再届出を漏らさないか、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等への対応をどこまで進めるかが判断ポイントになります。
この記事では、電子的診療情報連携体制整備加算について、共通要件を確認したうえで、加算3 → 加算2 → 加算1の順に、自院の現在地と判断ポイントを整理します。
制度上の要件を確認するだけでなく、既存システム、スタッフ体制、窓口運用、今後の診療方針を踏まえて、自院ではどこまで対応するのが現実的かを考えるための補助線としてお読みください。
2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称での届出を改めて行う必要があります。
目次
1.まず整理しておきたい全体像
今回の見直しでは、医療DXに関する体制を段階的に評価する考え方がより明確になりました。実務上は、いきなり最上位を目指すかどうかを決めるより、まず自院がどの段階にいるかを確認する方が整理しやすくなります。
| 区分 | 初診時 | 位置づけ | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| 加算3 | 4点 | 基本対応 | まず土台となる体制を満たせるか |
| 加算2 | 9点 | 追加対応 | 電子処方箋等を含めて一段上を目指せるか |
| 加算1 | 15点 | 高度対応 | 複数の高度な要件を全て満たせるか |
※加算1・2・3の区分があるのは初診時です。再診時は区分にかかわらず、全区分共通で月1回2点の算定となります。
医療DXだけでなく、制度対応全体で優先順位を整理する
2026年改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料や生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。
ベースアップ評価料の届出判断については、以下の記事でも整理しています。
ベースアップ評価料は届出すべきか|期限と実務スケジュールを院長向けに整理
2.全区分に共通する基本要件
加算3・2・1の違いを見る前に、まず全区分に共通する基本要件を確認しておく必要があります。
オンライン請求、オンライン資格確認、明細書の無償交付、院内掲示・ホームページ掲載などは、基本となる対応です。
また、健康相談体制については、単なる一般的な相談体制ではなく、マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制として整理しておく必要があります。
さらに、オンライン資格確認等システムにより取得した診療情報等を活用して診療を実施していることについて、院内掲示やウェブサイト掲載で適切に示すことも確認しておきたい点です。
マイナ保険証利用率30%以上は、加算1だけの要件ではありません。加算3・加算2・加算1に共通する重要な前提です。
※マイナ保険証利用率30%以上の判定は、原則として算定月の3か月前のレセプト件数ベースで行われます。6月算定開始を目指す場合は原則3月実績が基準ですが、直近の4月または5月の実績を用いることも認められています。直近で利用率が伸びているクリニックでは、4月または5月の実績を確認することで基準を満たせる可能性があります。
3.まず現在地を確認しやすい「加算3」
まだ大きなシステム更新を予定していないクリニックや、まず制度対応の土台を整えたいクリニックでは、加算3から現在地を確認する流れが考えやすいかもしれません。
加算3から確認しやすいクリニックの例
- まずは届出漏れなく基本対応を整えたい
- 紙カルテまたは現行システムを当面維持する予定である
- 電子処方箋や大きなシステム更新は、まだ今すぐではない
- まず算定できる区分を安定して押さえたい
自院の現在地チェック(加算3)
□ オンライン請求を実施している
□ オンライン資格確認を導入している
□ マイナ保険証利用率30%以上を確認している
□ 明細書の無償交付を行っている
□ マイナポータルの医療情報等を活用した健康相談体制を整理している
□ オンライン資格確認等システムで取得した診療情報等を活用して診療を実施している旨を掲示・掲載できる
□ 院内掲示とホームページ掲載に対応できる
なお、これまで一部の診療所で認められていた「明細書無料発行の義務の免除規定」について、今回の改定で直ちに廃止されるわけではありません。
一方で、令和10年以降の標準型レセプトコンピュータ提供が実施される時期を目途に、免除規定自体を廃止する方針が示されています。自院のシステム対応が将来的にどう必要になるかを見据えておく必要があります。
4.一段上の対応として考える「加算2」
加算2は、加算3の基本対応を整えたうえで、さらに一段上の対応を検討する区分です。
加算2では、共通要件に加えて、電子処方箋の発行体制、指定要件を満たす電子カルテの導入、電子カルテ情報共有サービス等の活用体制のうち、いずれかを満たす必要があります。
ここで注意したいのは、加算2は「すべてを満たす」区分ではなく、追加要件のうちいずれかを満たすことで検討できる区分だという点です。電子処方箋だけでなく、電子カルテや電子カルテ情報共有サービス等の対応状況も含めて確認します。
加算2を検討する際に見ておきたいこと
- 電子処方箋の導入を現実的に進められるか
- 電子カルテが安全管理ガイドライン等に準拠した要件を満たしているか
- 電子カルテ情報共有サービス等への対応予定を確認しているか
- 地域医療情報ネットワークの活用可能性があるか
- 加算3で止めるより、一段上を目指す意味があるか
※マイナ保険証利用率30%以上は、加算2だけの追加要件ではなく、加算1・2・3すべてに共通する必須要件です。
電子処方箋については、運用開始日の登録や、厚生労働省ウェブサイト上で電子処方箋対応施設として公表されている状態が求められます。
電子カルテ情報共有サービス等については、電子カルテ情報共有サービスそのものだけでなく、地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有または閲覧できる地域医療情報ネットワークの活用も選択肢になります。
すでに地域医療情報ネットワークに参加している場合や、地域で一定の運用実績があるネットワークを活用できる場合は、電子処方箋だけに限らず、加算2を検討できる可能性があります。
電子カルテ情報共有サービス等に関する経過措置
電子カルテ情報共有サービスに係る要件については、当面の間、経過措置として基準を満たしているものとみなされます。
具体的には、施設基準のうち「電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有していること」という要件について、当面の間に限り、要件を満たしているものとみなす経過措置が設けられています。
ただし、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を開始した場合には、速やかに導入するよう努めることが求められます。現時点で未対応だから対象外と切り離すのではなく、自院の電子カルテメーカーやレセコンベンダーの対応予定を確認しておくことが重要です。
迷いやすいのは、要件確認よりも「どこまで進めるか」です。
加算3でまず整えるのか、加算2まで進めるのか、加算1を視野に入れるのかは、点数だけでは決めにくい判断です。自院の人員、窓口運用、ベンダー対応、他の届出との優先順位まで含めて整理する必要があります。
5.加算1は「全て満たせるか」で考える
加算1は最上位の評価です。ただし、クリニックにとっては「最上位だから目指す」というより、点数差だけでなく、自院の今後の方向性に合っているかで考えたい区分です。
特に注意したいのは、加算2では追加要件のうち「いずれか」を満たす整理であるのに対し、加算1では高度な要件を全て満たす必要がある点です。
加算1で確認したい主な要件
- 電子処方箋を発行する体制、または調剤結果情報を登録できる体制がある
- 安全管理ガイドライン等に準拠した電子カルテ、または厚生労働省が認証する電子カルテ製品の導入を確認している
- 電子カルテ情報共有サービス等を活用できる体制がある
- マイナ保険証利用率30%以上を満たしている
つまり、加算1は、加算2のように追加要件のうちどれか一つを満たせばよいという整理ではありません。電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等、マイナ保険証利用率を含めて、院内のDX対応を総合的に確認する区分です。
電子カルテに関する要件については、安全管理ガイドライン等への準拠だけでなく、厚生労働省が認証する電子カルテ製品であることも選択肢として整理されています。認証制度や標準型電子カルテの動向は今後の確認が必要ですが、中長期的なシステム更新を考える際には見ておきたい論点です。
なお、電子カルテ情報共有サービス等については経過措置がありますが、将来的には国等の全国運用やベンダー対応に合わせて、速やかな導入を検討する必要があります。
そのため、まず加算3で基本対応を確認し、次に電子処方箋導入等を踏まえた加算2を検討し、その後のシステム対応や診療方針を見ながら加算1への移行可能性を考える、という順番で整理すると判断しやすくなります。
6.見落としやすい実務上の注意点
制度の読み方として見落としやすいのが、院内掲示だけでなく、ホームページ掲載も含めて対応が必要になる点です。
ただし、自ら管理するホームページ等を有していないクリニックについては、ウェブサイトへの掲載要件は免除されます。すでに自院ホームページを運用している場合は、掲載内容の見直しも含めて確認しておきたいところです。
また、マイナ保険証利用率30%以上などは、地方厚生局へ個別に証明書類を提出する必要はありません。一方で、実績に基づいて判定されるため、窓口での案内や院内での確認を継続しておく必要があります。
なお、本加算を算定する場合、明細書発行体制等加算は併算定できません。これまで明細書発行体制等加算を算定していた医療機関では、加算3を算定した場合、初診時は実質+3点、再診時は実質+1点の増点として捉える方が、収益インパクトを確認しやすい場面があります。
まず確認したい相手
- レセコン/電子カルテベンダー:電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等、明細書発行体制への対応状況
- 地域医療情報ネットワークの運営主体:参加状況、共有できる情報、施設基準上の扱い
- 院内スタッフ:マイナ保険証案内、掲示、患者説明の運用負荷
- 地方厚生局の案内:届出様式、提出期限、電子申請の受付開始日
7.特に注意したいのは「再届出」
今回、実務上とても大事なのは、2026年6月以降も継続して算定するためには、既に医療DX推進体制整備加算等を届け出ている医療機関であっても、新しい名称で改めて届出を行う必要がある点です。
再届出の対象として確認したい医療機関
- 2026年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を届け出ている
- 2026年5月31日時点で診療録管理体制加算を届け出ている
- 2026年6月1日以降に電子的診療情報連携体制整備加算を算定したい
6月1日から算定を開始するための届出期間は、5月7日から6月1日必着とされています。
また、可能な限り5月18日までの届出に努めることが示されています。5月下旬は窓口混雑が予想されるため、早めに準備しておきたいところです。
一方で、電子申請の受付は5月25日から開始されます。電子申請システムでは、過去に届け出た情報の一部自動表示など、事務負担を軽減する機能も活用できるため、窓口混雑を避ける意味でも選択肢になります。
ただし、受付開始から6月1日までの期間は短いため、電子申請を使う場合も、事前に必要書類や院内確認を済ませておくことが重要です。
再届出で迷いやすいのは、「書類」よりも「自院ではどこまで対応するか」です。
加算3でまず整えるのか、加算2まで目指すのか、加算1を視野に入れるのかは、クリニックごとに判断が分かれます。
制度対応や院内運用で判断が止まりやすい相談事例は、以下のページで整理しています。
制度対応・院内運用の相談事例を見る
制度対応を個別テーマごとに整理したい場合
2026年診療報酬改定では、医療DX関連の再届出だけでなく、ベースアップ評価料、生活習慣病管理料、CPAP管理など、複数の論点が同時期に重なります。
院長の経営判断として整理したいテーマについては、以下の一覧にもまとめています。
院長の経営相談Q&A|記事一覧
8.まとめ
今回の医療DX関連の見直しは、「最上位を目指すかどうか」から考えるより、まず自院の現在地を確認するところから始める方が整理しやすくなります。
- 加算3は、基本対応を整える出発点です。
- 加算2は、追加要件のいずれかを満たして一段上を目指す区分です。
- 加算1は、電子処方箋、電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス等を含め、高度な要件を全て満たせるかを確認する区分です。
また、電子カルテ情報共有サービス等には経過措置が設けられています。現時点でシステム対応が未完了であっても、制度上どのように扱われるのかを確認しながら、ベンダー対応や今後の導入時期を整理しておくことが大切です。
地域医療情報ネットワークや、今後の認証電子カルテ・標準型電子カルテの動向も含めると、判断は単なる点数比較だけでは終わりません。
ここまで整理しても、実際には「加算3で止めるか」「加算2まで進めるか」「加算1を視野に入れるか」「ベンダーに何を確認すべきか」で判断が止まることがあります。
制度の正解を探すだけでなく、自院の現状、スタッフ体制、患者対応、システム更新の予定を重ねて考えることで、判断の前提が見えやすくなります。
制度の違いは分かった。では、自院ではどこまで対応するか。
電子的診療情報連携体制整備加算は、加算3・加算2・加算1の違いを確認するだけで判断が終わるとは限りません。
加算3でまず整えるのか。
加算2まで進めるのか。
加算1を視野に入れるのか。
電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等への対応をいつ確認するのか。
他の届出や院内運用との優先順位をどう考えるのか。
制度の要件を確認すれば自動的に答えが決まるテーマではなく、自院の現状を重ねて考える必要があります。
記事では、制度の要点と一般的な判断材料を整理しました。
一方で、自院の患者層、スタッフ体制、既存システム、今後の診療方針を前提にした整理は、個別に状況が変わります。
自院の状況を前提に整理したい場合は、まず近い相談事例をご確認ください。
判断整理(初回)の進め方や料金を確認したい方は、以下のページをご覧ください。
関連する制度対応も確認したい方へ